悪を採る以外に倫理的であることはできない | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで

今日の政治的に不活性な学生たちというものをぼくは信用しない

彼らは、イデオロギーの只中を泳いでいるのにそれを知らないからだ

能力的に、認識的な誤りを認めることが出来ないから


政治的に不活性であるというのはどういうことか

政治とはなんだ?

政治とは出会うことだ

主体と主体とが出会い、承認をかけて言説を闘わせ、打ち勝って育っていく弁証的な過程を言っている

それは人間形成の条件である

自由と平等とは、政治的自由と政治的平等のことである


政治抜きの自由というものが自由だと思われているが誤りである

冷戦構造が解体し、右翼と左翼が(つまり政治的な主体たちが)舞台から退場した

最後に残ったのは「自由民主主義」、市場原理主義と文化的保守主義をあわせた新保守主義だった

資本主義は意味を奪う

意味とはなにか

意味とは何かを指しているのはわかるのだが理解できないもののことをいう

あなたは意味であり、謎である

あなたが私の生に意味を与える


ネオリベは68年革命を踏まえている

彼らは「マイノリティへの配慮」要求に対するアリバイをもっている

それが「ポリティカリーコレクトネス」である

私たちはあなたにハラスメントを与えさせない

人間が人間と出会うところに摩擦が発生する

ならば出会わなければよい

安心・安全とは可傷性一般を「リスク」として規定し、予め取り除くことだ

政治的言説は男性的・エリート的・抑圧的である

だから声による説得というハイコストな手段を避けて、最適化されたコードの作用によって無意識的に物理身体を運用すればよい

電流の流れる柵でできた通路を、羊は触れることなく歩くことができるようになる

ファーストフード店のBGMは「自然に」退店したくなる程度に大音量であり、座席は「自然に」退店したくなる程度に硬い

誰も侵犯されない社会

誰も傷つけられることのない社会

安全で平和だ

自己の領域性はつねに絶対不可侵であり、干渉・侵犯は許されない


イデオロギーは死んだ

人々はただ、資本主義による「享楽せよ」という命令に従っている

楽しむことだけが正しい

無限に楽しい日常が続けばよい

そこには政治がなくても、気持ちがいい

誰も傷つかない美しい世界

美容と健康


それは嘘である

秋葉原連続殺傷事件があった

無差別殺人、自殺

孤独が暴力に転化する

差別がある貧困がある環境破壊がある

人間は老いて病んで死んでいく

世界は終る

考えないゾンビであるよりも考える人間でありたい


非政治性、政治以前の空間を維持する政治プログラムが存在するはずである

そこに欺瞞がある

闘争的歴史は終っていない

派遣労働による自殺者が、いじめによる学級崩壊が、貧困者の餓死が、歴然と存在する

超-歴史的であること、歴史-外的であることは現在的であることを意味しない

現在ではなく、不在である


ぼくは諸君に市民であることを要求する

制度としての人間を続けるべきである

代表制民主主義国家を支持する

大学なら、自治会政治を支持する


つまり、アナーキズムを捨てて(抑圧を制限することを志向するとはいえ)教育=規律訓練の機会としての「党派」を採るということである

明白に、転向である

悪を採る以外に倫理的であることはできない

誤りを犯さないものは何もしないものだけである

ノンセクトは、結局、セクハラを防げないし、セクハラが起きたところで責任もとれないからである

行動するノンセクトとは形容矛盾である

行動するのは主体であるが、主体化とはその条件としての規律訓練=服従、すなわち党派を肯定することであるからだ

ノンセクトが行動しているならそれは密かに裏口から党派性を再入室させているのである

多文化主義がひそかな原理主義であるのと同型である

つまり、行動する際には党派性を、行動の結果に対する責任を果たさなければならない場面ではノンセクト性を前面化しているのだ



ハラスメントに配慮しない新左翼への回帰もしたくない

ハラスメントに配慮するものの、一切の行動を選択できない実績を積み上げるばかりの研究者になりたいとも思わない


01私的性質、性格、トラウマなどの寄せ集め特定の個人に還元できない象徴的な主体として人が機能する場がない

つまり、政治的空間が存在しない

ネオリベ化する公共圏


02また、鶏卵だが、政治の担い手たる人間がいない

主体=代表=市民を創出する教育が困難である

成熟と喪失

母の膝元への帰還を選ばないこと

抵抗の自立的拠点は悪である


03「統治」(監視管理社会化)はグローバルな競争に勝ち残るための当然の戦略であると考えられている

だが、私企業が勝っても、個人にとっては、クビにされたらそれまでではないか

あるいは、企業が国家に納税するから正しいとする「トリクルダウン」というオコボレを狙うのは?

彼らは平気で国家を踏み越えていく

土から離れているからだ


04読書メモ


思想としての全共闘世代、小坂修平

高田里惠子『グロテスクな教養』ちくま新書2005
大澤真幸『不可能性の時代』岩波新書2008
佐々木敦『ニッポンの思想』講談社現代新書2009

敗戦後論

「彼女たち」の連合赤軍

ポスト学生運動史―法大黒ヘル編 1985~1994、中川文人、外山恒一

貧乏人の逆襲

新左翼とはなんだったのか

ポストモダンとはなんだったのか

「市民」とは誰か、佐伯啓志

経済成長という病

日本の難点

「おたく」の精神史、大塚英志

動物化するポストモダン

ゲーム的リアリズムの誕生

ゼロ年代の想像力

生と権力の哲学

変貌する民主主義

プレカリアート

排除の空気に唾を吐け

世界共和国へ、柄谷行人
人権と国家、ジジェク

藤本夕衣『古典を失った大学』NTT出版2012

豊田義博『就活エリートの迷走』ちくま新書2010
速水健朗『自分探しが止まらない』ソフトバンク新書2008
常見陽平『「意識高い系」という病』ベスト新書2012
若者はなぜ殺すのか、芹沢俊介


読む

ネオリベラリズムの精神分析

青いムーブメント

ネオリベ化する公共圏

新左翼とロスジェネ

限界の思考

トランスクリティーク

ポスト消費社会のゆくえ

信じるということ


時間があれば読みたい

人間の条件

啓蒙の弁証法