大学とはなんだろうか
01あなたは何のために大学に来ましたか?
大学に行かないと…
中卒だと社会に受け入れてもらえない
⇒「皆が行くから」「大学卒というパスポート」
就活の圧迫
「あなたは大学で何を学びましたか?」
リーダーシップ、コミュニケーション、英語力、コンピュータースキル?
実学的素養への期待がいよいよ高まっている
そして「自己分析」!!
「本当に」自分のやりたいこと、なりたい姿
現代日本は「自分探し」を執拗に迫る…
02大学概論
大学は「教育・研究機関」である
近代的大学制度の基本は中世ヨーロッパにて成立
学生は特権階級だった
研究:真理の探究
⇒卒業研究、論文執筆
教育:「発見」された知の伝達
⇒研究へのガイダンス
勉強≠研究
無数の先行研究によって築かれた人類史的知の更新
問いを出発点に「さらに」学ぶ
立体的な学び
←「自立的意識」の形成が要求される
人文科学、社会科学、自然科学
実学:社会科学、自然科学
教養:人文科学
教養課程:専攻にとらわれず、広く深く学術の基礎を学び人間性を涵養する課程
専門課程:大学で特定の専門分野を学ぶ課程
実学とは、実際に役に立つ専門的知識(discipline)
では教養は?
a)ビルドゥング(Bildung)の訳語
bilden(動詞)「作り上げる」
人格陶冶、人格形成(他者の承認)
b)「無知の知」(不完全であることを知る)
⇒完全無謬への憧れ(エロティシズム)
「somethingについてeverythingを知っていると同時に、everythingについてsomethingを知っている」
浅く広く知ることは関係性を類推する能力をもたらす
折口信夫「類化性能(比喩の能力)」
c)情報リテラシー、マッピング、キュレーション
知識(information)と知恵(intelligence)
世の中に溢れるinformationは無意味
意味を持つようになるのは?
intelligenceの力がinformationを有機的に関連付けたとき!
「真偽、取捨選択、位置づけ」
03近現代日本における実学と教養
江戸から明治へ
「明治の精神」
啓蒙思想「自分で自分を作り上げる」
福沢諭吉『学問のすゝめ』
「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らず」
サミュエル・スマイルズ『西国立志編(自助論)』
「天は自ら助くる者を助く」
「みずから助くる人民多ければ、その邦国、必ず元気充実し、精神強盛なることなり」
江戸時代(前近代)
士農工商(身分制、封建制)
近代化=文明開化、西洋化
個人主義(身分制、封建制の廃止)
自由主義(人格、所有、契約の自由)
⇒自由な生き方、豊かさの追求など自己実現の欲望を解放した
四民平等→立身出世主義
メリトクラシー(実績・能力原理)
富国強兵(官僚制度、工業化=分業制)
『坂の上の雲』
途上国日本「欧米列強に追いつけ追い越せ」
『こゝろ』のK曰く、「精神的に向上心のない者は馬鹿だ」
「国民」形成のために
国語教育、歴史教育によって「ネーションステート」の成立
「皆教育」文部省の設置(1871、明四)
「国家須要の人士育成」を目的とした
実学中心主義
日本のアカデミアにはその出発時から「教養」が欠けていた
しかし…
個人主義「内面」の発見=反省的意識
理想と現実との乖離
行き過ぎた利己主義(個人主義×功利主義)に対する反省
⇒大正教養主義「人格の完成、ノーブレス・オブリージュ」
受験エリート(官僚)、秀才、優等生、ガリ勉に対する批判
アカデミアに欠けていた「教養」をジャーナリズム(出版業界)が担った
旧制高校の読書文化
多少嫌味ったらしいエリーティズム
公教育の外部にて脈々と生き続ける
04『君たちはどう生きるか』
<自分>探しという病
a)消費による自己実現(~バブル崩壊)
個性的な商品によって身を固める
b)こころ系(失われた20年~)
モノ離れ(エコロジー・ボランティア・貧困問題)
自費出版、アジア貧乏旅行、路上詩人、就農、雑貨屋、シェアスペース、ロハス、スピリチュアル、自己啓発、成功哲学、ポジシン、ライフハックなどなど
自己責任と自己選択
自由に自分自身を作り上げることのなんと苦しいことか!
「キャリアデザイン」には「目標となる像」が必要
乱読のススメ
「自分自身を作ること」
リスク社会
自己選択・自己責任の社会
リスクとデインジャー
天災はリスクではない
選択や決定に伴って生じる不確定な損害
「自由であること、好きなことをすること、快楽を追求することを強制命令規範化される社会」
「規範からの自由」から「自由という規範」へ
・「師」を見つけること
・未来予測力を身につけること
・生きる力
そのために「教養」を!
古典の読書をオススメしたい!!
教育基本法
我々日本国民は,たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとと
もに,世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
我々は,この理想を実現するため,個人の尊厳を重んじ,真理と正義を希求し,公共の精神を尊
び,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに,伝統を継承し,新しい文化の創
造を目指す教育を推進する。
高等学校学習指導要領
第一章教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を
備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条教育は,その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,次に掲げる目標を達成する
よう行われるものとする。
一幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うととも
に,健やかな身体を養うこと。