すいません、まとまってません。
Togetter - 「法学者の視点から見た京大カンニング事件について」
きにくわねー!!
というわけで反論を練ろう。
一般に反論をつくるにあたってはあなたが一番受け入れがたい相手の認識から取り組むのがいい。
互いの立場がどう違うのかが明らかになるからである。
「今回のは「カンニングを刑事事件にした」のではなく、「業務妨害の犯人を捕まえたら動機がカンニングだった」のです。間違っちゃいけない。」
「よくある間違った意見の見本。「カンニングを処罰した」のではなく、業務妨害の犯人を捕まえたらカンニングが動機だったというだけ。」
「よくある間違った意見」という価値判断ってぼくがいちばんきらいなもののひとつだ。
「市井の一隅に生き死にする無名の人間が到達する知的境位が知識人が一生をただ知の探求にかけて得られるそれと同じ遠さにあるということの恐ろしさ」を知らん人間が口にする言葉だからだ。
若いな、おっさん。
…筆がすべった。
戻ろう。
ぼくは、ことは業務妨害の犯人を捕まえたら結果的に動機がカンニングだったのではなく、やはりカンニングを刑事事件にしたのだという「よくある間違った意見の見本」を支持したいとおもう。
肝心なのはこれが業務妨害にあたるか、ということだ。
上のリンクからもたどれるけどこちらを参照。
Togetter - 「「業務妨害というが、試験官の業務はカンニングをチェックすることも含まれているのでは?」」
都合いいところしか引用しないから一応原文にあたってから読んでくれ。
あ、さっきのもね。
「入学試験の受験生というのは、「この大学で勉強したい」と考えているはずの人ですから、不正な行為で得点を図るということは、想定されていません。」
「ついふらふらと出来心で参考書に手を伸ばし、見てしまうかもしれない。もちろんやってはいけないことだが、そういう誘惑は誰にもある」
「いまの試験監督は、そうした要請に応えるためのもので、計画的あるいは組織的な不正行為を防止することはできません」
(今回の事件は)
「計画的、かつ常習的な犯行です。このような、ハイテクを駆使し、確乎たる意思をもって計画的に行われる不正行為をすべて防止しようとすれば、そのコストは膨大です。多数の監視カメラを設置するとか、妨害電波を発出する装置を設備するとかが必要になるでしょう。」
「今回の不正行為は、通常の「業務」として防止できる範囲をはるかに超えていると考えられます。」
まずつっこんでおくと常習性は通報とぜんぜん関係がない。
この人は先に
「それ(業務妨害として認められるべきものかどうか)は、法廷で弁護人が議論すべきことです。世論で決めるべきことではない。」
あるいは
「刑事法というのは最も国民感情で左右されてはならない分野なので、法律学の中でも隔離された領域です。」
と指摘している。
これは納得できる。
だが、するとその論理の経済として、常習性というそのつどの犯罪的行為の外側に位置づけられる価値、罪に対する処罰の程度を決する際にはじめて問題となるにすぎない価値を通報の当否についての議論に判断されるべき要素として誤導入するような素人詭弁は批判されなければならないことを帰結してしまうのではないかしらん?
まあどうでもいい。
ぼくがとくに気になったのは、「計画的、かつ常習的な犯行です。このような、ハイテクを駆使し、確乎たる意思をもって計画的に行われる不正行為をすべて防止しようとすれば、そのコストは膨大です。多数の監視カメラを設置するとか、妨害電波を発出する装置を設備するとかが必要になるでしょう。」
ここ。
それ以前に、目立つケータイをいじっている受験生すら発見できない試験官にはカンニングペーパーを持ち込む古きよき不正行為は到底発見できないのではないか。
ぼくは「ハイテクを駆使した高度なカンニング」が「試験官の業務」に余るのではないかという意見には与する。
しかし、「ローテクに依存した低度のカンニング」すら見抜けない試験官は現在容疑をかけられている「偽計業務妨害」罪における妨害されるべき「通常の業務」を行っていなかったのではないか?
それとも「この大学で勉強したい」良心溢れる無垢な存在として想定されている受験者がつい出来心で/ふと魔がさして/ある種の誘惑に負けて電子機器類を用いたカンニングをするようなことは到底予見できなかったのだろうか。
ぼくには「こんなひどいことが起こるなんて想像もしたことがありませんでした」式嘆きのふるまいに理があるとは思えない。
無知を誇るなよ。
ぼくは通報されるべき業務妨害は一度も発生していないという立場を採る。
…と、玉井さんの後半の議論につられてヘンなところに出てしまった。
はじめの方のリンクから。
「いやだって、カンニングかどうかなんてわからないわけですよ、初発の段階では。印刷所や関係者から漏れたのなら大問題ですから、捜査機関に通報するのは当然です。」
玉井さん自身が指摘してる。
これはたしかにすごく説得力をおぼえるんだよ。
でもそのあとの
「仮に印刷段階で問題を入手した人が試験開始数分後にネットに投稿したとしても、まったく問題は同じです。カンニングではないが業務妨害。」
これがわからない。
問題は犯人の犯罪の意思の有無ではなく実際に為したことが引き起こされるであろう予見される効果だ、ということはわかる。
たとえば人の顔をなぐった。
なぐったけど鼻血がでるとはおもわなかった。
だから鼻血でよごれたTシャツの弁償はしたくない。
これはダメだ。
殴ったら鼻血がでるであろうことは客観的にいって十分に予見できる。
印刷業者が試験問題を流出させることと受験者が試験問題を流出させることのあいだには違いがある。
たしかに、初発の段階では誰がやったのかわからないのだからそもそも違いがわからない。
でも誰がやったかわかったら違いがでてくる。
それは受験者が試験官の監視のもとで流出させていることだ。
受験者が流出できるということは業務が成立していないでしょう。
印刷業者が流出させても、印刷業者を見張っている試験官はいないのであって、たしかにこれはわからない。
ただし「意図は不要で、故意があれば足ります。露見すれば業務が混乱することは誰にも予測が可能。だから故意はある。」
「カンニングは試験をスポイルするか」という問いがある。
しない。
カンニングした人間がいても、試験全体が無効にはならない。
では「試験問題の流出は試験をスポイルするか」。
試験がはじまる前の段階で流出し、多くの人間がアクセスできるときはスポイルする。
試験がはじまる前の段階で流出し、少数の人間がアクセスできたことがわかったときはスポイルされない。
多数・少数はどこで線引きされるか。
数人の場合。
これはセーフ?
100人の場合。
これはアウトのような。
試験がはじまったあとの段階(今回のように試験中)で流出し多くの人間がアクセスできるとき。
スポイルされない。
なぜか。
すでに試験官の監視下にあるのであって、その問題について高得点がとれるように準備することはできないからだ。
今回の事件はやっぱりどうしても偽計業務妨害罪にはあたらないと思う。
問われるべきは業務妨害ではなくてカンニングの罪の重さだとおもう。
最後に、初動時に通報した大学はただしいのか。
ただのこどものカンニングなのか、印刷業者による流出なのかわからないという。
でも本当にそうか?
印刷業者が流出させたら真っ先に疑われるに決まってるじゃないか。
あるいは他の関係者の場合だって、大学は試験問題の取り扱いについては大変厳重にやってるだろう。
その網の目をかいくぐる大泥棒が現れたと考えるよりもひっきりなしに起こるカンニングのひとつではないかと考える方がはるかに合理的であるような気がする。
それから、もうひとつ。
大学の自治文化というのはときに法からの自立的自治さえ含意しうるとぼくは思う。
周知の通り、法というのもまた共同幻想に他ならない。
法の法たるゆえんを実証的に基礎付けることができないことを指摘したのはルソーである。
大学入学試験を受ける人間は大学の先駆的生徒ではないか。
ぼくが大学にいきたいとおもったのはただそこが「開かれていなければならない」場所だったからだ。
やはり京大はaicezukiをさえ守るべきだったとぼくはおもう。
「敵、味方きらいなき」ってね。