The Lamella-Scapes of games
producing the Moral
scape01:幸福(非)ゲーム
ルール…「君は幸福にならなくてはならない。」
フィクション…「もし君が幸福になりたいのならば、幸福に
ならなければならない。」
scape02:道徳ごっこ(ゲーム)
違反できない(?)ルール…「善くあれ。」
フィクション…「どうしてそれが善いことなのか?そもそも、
どうして善く生きなければならないのか?善さ(道徳)は常に
そのような問いを斥ける作用を付随し、その根底的な無根拠さを
隠蔽することなくしては成立しない。」
scape03:友達ゲーム
ルール…「君は我々に所属する。我々は敵を討たねばならない。」
フィクション…「共同体の歴史的正統性、共同体への、僕の
コミットメント」
scape04:生命ゲーム
ルール…「これは現実である。君は生きなくてはならない。」
フィクション…「ほらほらリアルでしょ?死ぬの怖いっしょ?」
Why be moral?
現在、道徳ごっこの外部に出ることは非常に難しいと言わなければ
ならないだろう。
僕らが信じた「善さ」は、本来的には、発泡スチロールのシヴァ神、
特殊状況的な「とあるひとつの価値体系」に過ぎず、いわば、
人それぞれの趣味の問題に過ぎないものであったはずだ。
いつかそれが止め処なく触手を伸ばし、青くて丸い(!)地球を覆ったとき、
終に、僕たちにはそれがまるで僕たちの言うところの本当の「善さ」、
彼岸の「善さ」であり、かつてからそうであったし、これからもそうである
だろうとしか、考えられなくなった。
「<つるつるとした当たり前のディストピア>は無限の重力を持つ。」
僕は、思った。
「……苛々する。」
冗談じゃない。僕は僕の信ずる自由を、僕自身が得たい。
何が道徳だ!その「善さ」なるものが一体どれだけ多くの無辜の人間を
殺してきたんだろう。
とにもかくにも、この「善さ」なる亡霊を考え、語り、できることなら外に
出たい。息が詰まる。酸っぱい味が咽喉を上ってくる。
僕は誰の為でもなく、僕自身の自由の為、「道徳」がいかに成立している
か、どうしてそんなものが作られなくてはならなかったのか、ということを
考えていきたいと思う。
* * *
そうは言ったものの…。
どこから手をつけたらいいのか、そんなことさえすでにもう、よくわから
ない。とりあえず、「善さ」を巡るスケイプ(風景)が層状になってるんじゃ
ないかと思って、積み重ねてみた。それが上の表だ。
ルールとは勝利条件、フィクションとは「どうしてそのゲームに参加しなくて
はいけないのか」というこじつけのことだ。
幸福ゲームが一番基層に当たる。
…というのは、僕たちのあらゆる行為(選択)は、「それが幸せになる為に
為される」という目的から外部に出られないからだ。
この立場を「利己的幸福主義」と呼びたい。幸福主義というのは、フロイトの
「快楽原則(キモチイイコトをしたいし、する)」と、「反復強迫(嫌なのに同じ
構造を繰り返さないではいられない)」を同一の場で考えたいが為である。
幸福ゲームのフィクションは構造が同語反復になっているが、これは、
欲望(いわば幸福原則に極めて忠実に基づく)それそのものが命じられる
ということだ。カントの定言命法をここに位置づけるのは、カント倫理学から
「善さ」のイデアを排する為だ。
道徳ゲームはパス。よくわからん。
友達ゲームは全然大事じゃなさそうだけど、実は大事。
幸福ゲームは、正確には「僕の」幸福ゲームだ。では「僕」なるものは
どこから来るか。それは僕以外の人々(他者)とのコミュニケーション(言語
の交換)の中から立ち現れてくる。僕という意味をもたらす作用が既に
外部にある。だから、これらのスケイプは循環構造を描いているのだ。
自由に関しての議論では、例えば、「自己決定の困難」が挙げられる。
乳児や老人は一人では生きていけないし、いかに生きるべきか、死ぬべき
か、という問いの前に立たされる場合があるのに、自分の行く末を自分で
決めることが難しい(できない)。
先天的に障害をもって生まれてきた乳児や、回復の見込みがなく激痛だけ
が続く終末患者をどう処遇するか。それは現実の問題としてある。
これらの厳然たる現実がもたらす「圧倒的な負債感」が友達ゲームを
起動する。共同体の維持と再分配問題は全ての物理的身体を持つ個が、
避けることができない。ここではその公共感はモラルとは呼ばないけどね。
生命ゲームは、一番表層に置いてある。僕はまだまだ甘ちゃんだから、
生命が尊いとか思っちゃってるけど、そんなのは全く浅薄な問題だ。
死刑はそんなに重くないし、信仰の為なら命なんて安いものだ。
これらのゲームが、互いに絡み合っているから困難な状況が発生して
いる。解きほぐして考えたらわかりやすい気がするけど、どうなんだろう。