「宝箱協会」についての覚え書きⅢ | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで



いくらなんでも誰も何もしないのに、

道端に宝箱が転がっているという状況は発生しない。


宝箱があるということはそこに宝があり、宝を容れた人間が

人為が存在するということである。


宝箱が「プレゼント・ボックス」で持ち去る第三者の視線が

意識されたものである以上、そこには入れた人間の意志が

隠れている。


持ち去る人間がそれに気づいているかどうかはともかく

宝箱にカギが入っていれば持ち去る人間はそのカギに合う

カギ穴を探し始める。宝を容れた人間によってコントロール

されるのである。


僕はのんびりとした思索の末にこのことに思い当たって

愕然とした。


もしかして他にもこのことに気がついた人間がいるんじゃ

ないだろうか?


恐らくはじまった当初の宝箱協会はやはり純粋なものだった

のだろう。しかしそこに明確な悪意を持った何者かが手を

加えたに違いない。


そもそも宝箱というシステムは繊細で微妙なもろい薄氷のような

存在である。彼らのような乱暴な人間が土足でドカドカ走り回ったら

簡単に崩れてしまいかねないのだ。



僕は焦った。

問題が発覚した新聞記事から逆算すると、もうほとんど時間が

残されていないと思われる。


傾きかけた宝箱協会と、そこに悪意を持って何かを組み込んだ

人間がいる。カギのありかが記された地図どころかカギ穴の場所さえ

まだわからない。





今、僕の目の前に一台の宝箱があった。

どうやら僕がこいつを開けることが期待されているらしい。