どろにまみれたレンガの道を走ってゆく
草いきれと雨と土と桜の幹の・・・
夏の臭いがする
石るいだけを残した幻の城さいが
土煙の中に浮ぶ
草がぼうぼうととびだした石造りの斜面
自転車をふりすててかけ上がる
後ろから気配が近づく
ずどんと地面がゆれる
はりつめた緊張がぴりぴりと音を立てる
石ころをけとばして走りつづける
もしかしたら城の崩れたカケラかもしれない
ごりごりしたおおきくて複雑な木の根が
僕の行く手をはばむ
のりこえ くぐり まわりこみ ふみつけながら
僕はすすむ
気配は止まらない
バリバリと木の根をくだきながら まっすぐ
近づいてくる
音はちかづく
少しずつ
少しずつ
僕の足音をからめとって
ついに僕の影が飲みこまれる
ぐっと背中がひっぱられる
僕は次の木の根に足をとられ盛大に転んだ
頭と右腕に強烈な衝撃
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
頭のヒューズが一瞬飛ぶ
体の底に力が入らない しびれてしまって声も出ない
痛みというより圧迫感
僕は気配がすぐそこにあることに気づく
気配の足?がふりあがって
僕は最後の力をふりしぼって斜面に身をのり出した
間一髪 体のすぐそばにふりおろされる
そしてそのまま押し出されるように僕の体は
坂を転がっていった・・・