「ec ep.7」

結婚は、恋愛の延長にはないものだ。
或いは極稀に、恋愛の延長線上にある結婚も存在するけど、
それはきっと、目隠しでタイトロープを渡るようなものだ。

そして、目隠しでタイトロープを渡るには、
才能が必要だ。

つまり、タイトロープに一歩足を踏み入れた時点で、
その綱を渡りきれるかについては、
きっと初めから決まっているんだと思う。

平和な時に生まれ、戦争になってしまった人間と、
戦争のさなかに生まれた子供、
そして戦争が終わってから生まれた子供では、
絶対的な差がある。
許せないという想いは確かに存在する。

一度黒く塗られてしまった布を、
洗い流すには、並大抵の努力では叶わない。
洗いたくないと思う気持ちの方が妥当なのだと思う。

人は、愛にせよ、憎しみにせよ、
一方向の感情に身を任せるほうが楽だからだ。


始めは、ただ隣にいたいと願っただけだった。
自分の気持ちを伝え、相手が拒絶しなかった事に、
生まれてはじめての大きな喜びに震えた。

でも、いつしか僕は、
その人と毎日一緒に居たいと願ってしまった。
人生で1度しか使った事のない、
「愛している」を言葉にしてしまった。

恐ろしい事に、愛してるという感情が、
子供も居ない僕には理解できない感情であったのに対し、
憎悪という感情は、実に僕が幼い頃から、
その輪郭をはっきり触ることの出来るものだった。

愛だの、憎しみだのという感情は、
なんにせよ、自分を染め上げるつよい染料だと思う。
それは生きていくという長いスパンの中で、
余りにも一瞬で染まってしまうものだ。

人の不幸の内、もっとも悲惨な事は、
愛情や憎しみで、一夜にして人は塗り変わってしまうことだと思う。
-もっとも長い年月で徐々に塗り固められる事よりは、幾分マシな事だとは思うが-

日本語に良く似た意味合いの言葉を知ってる。
その言葉は「呪い」という。

そうして20代になったばかりの僕は、
いとも容易く燃え上がり、
唯一そこで自分の個性を褒められるのは、10年以上も炎を燃やした事だけだ。

僕の中の激しい気持ちの数々は、
「自然消滅」の時に根こそぎ消え去ったと思っていた。
もう、元の色なんか少しもわからない、
血の色なんだか、焼け跡なんだか判らないぼろぼろになった生地を、
僕は何の感慨もなくその辺に捨て置いた。

ただ、後悔だけは全くなかった。

僕が生まれる前に、神様が目の前にそっと置いたポリタンクに詰まったガソリンを、
僕は十数年かけて、燃やし尽くしたのだと思った。
僕にはもう何も残っていないと思っていた。


でも、そうではなかった。
詰まるところ、人は無責任に、
ガソリンがなければ、ウォッカでも、100円ライターの燃料でも、
ある一定以上の温度があれば、火を灯せるのだ。
意思の力が僅かでも残っていれば、自分自身を火種に、人はどこまでも火を灯す
のだ。

火を灯す理由には、色々なものがあるんだと思う、
寂しさや、打算、自棄など、燃え易い火もある。

でも、4年もの時間を掛けて、
ごく自然に灯っていた、この淡い炎を、僕はなにより愛しいと思った。

僕はあの子にとても淡い気持ちで接しているのだと。

それは、かつて、
赤や黒で埋まってしまった、僕という人間にかろうじて残されていた空白部分が、

とても仄かに薄桃色に染まって居たということだ。

僕が薄汚れた生地の中に、
胸を張って誇れる部分だった。


それは土手で寝転びながら、
心地よい風の向こうに、あと数日で満開になる桜を見上げるような心地だった。

旅行のパンフレットにあるような、
どぎつい夏の原色でもなく、
触れれば怪我をするような冬の冷たさもなく、

長袖の中に、ほんの微かに熱が残るけど、風巻く光が、
些細な不快感を全て洗い流していく感触を思い出す。

それはそんな場所だった。


きっと、僕を構成していた、
赤や黒の醜さが、奇跡的に生み出した景色だったのだと思う。

僕は素直に嬉しかった。

ただ、あの子を好きだと思える自分の感覚が、
なにより嬉しかった。

この奇跡みたいな感覚がずっと続けばいいと思った。


でも、それは叶わない願いだ。

なんにせよ、あの子の結婚は決まっていた。
なんにせよ、あの子が僕を受け入れる可能性は限りなくゼロだった。

昔の不倫相手に言われた事がある、

「永遠という言葉が嫌いだ。」

僕はムキになって抗弁した。

「永遠にしたいと思う気持ちが永遠の始まりだ。
永遠はないかもしれないけど、あっても良いと思う。」

彼女は哀しそうに笑うだけだった。

恐らく、僕よりも遥かに深く、
人という社会の弊害に触れてきたあの人は、
きっと僕よりも、人の業と残酷さに触れてきたのだと思う。

目の前に拳銃を突きつけられる恐怖に打ち勝つより、
長い年月自分に落ち続ける冷たい水滴に抗う方が、遥かに困難だ。

生きている間に戦争が始まった子供に、
敵対国にもいい人はいるよ!と叫んだところで、
お互いの溝を深めるだけだった。

誰かを救うには、
人の一生を掛けるだけの覚悟と根気、そして運が必要だ。

つまるところ、
10年ほど前の僕にはそんなもの、空想する事しかできなかった。
どんなに思い描いても、人は空を飛べない。
10年ほど前の僕は、空を飛べると信じ、そして墜落した。
ごくあっさりと。


僕とその子は、
世間一般の誰彼と同じく、
ある程度の傷を持っていた。
でも、その傷が”他人と比べて”深いか浅いかでなく、
もう傷が自分の一部であると認識している事で一致していた。

またもや前後の脈絡を覚えていないけど、
僕が、

「なんらかの問題を抱えている親の子供は、
なんにせよその問題から逃れられなくて、
正面から向き合うか、逃げるかしかないんだよね。」

そう独り言を言った時、
僕はしまったと思った。
この手の話は人を選ぶ事を忘れて、思わず喋ってしまった後、
浮かぶであろう、困惑の表情か、安易な否定を予想したけれど、

その子は真面目な顔で、

「うん、そうだね。」

そう答えた。
悩んでるわけでも、理解出来なかったわけでもない。

ただ、在るがままを受け入れたその言葉にはある重さがあった。

行く宛てもなく入った居酒屋で、烏龍茶と梨ジュースを飲みながら、

その更に奥に、既にその事実を認めた上で、
ぽっかりと口を開けた、その子の空洞に触れた気がした。

僕はどうにかして、
彼女が埋める事を諦めてしまった、その大きな空洞を埋めたいと思った。


それは、人生の中でも禁忌の行為なのかも知れない。
それは、人生の中でも最もありきたりな感情なのかもしれない。



そして、一羽の鴉が舞い降りる。
三本足の鴉が舞い降りる。

「何時だって始まりは、そうじゃないのかい?」

僕は笑いながら答える。

「或いは、そうかもしれないね。」

そう、この時、僕は笑っていた。

確かに笑っていたのだ。

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(さて、どうしよう…)
「ec ep.6」

ドラマは急展開せずに、
やっぱり僕らの間には、味のしなくなったガムを噛む様な、
間延びした時間が存在する。

そして、その咀嚼が僕を幾分冷静にさせていく。


僕は、以前の僕と、
明らかに変わってきていた。

昔なら、
昔の僕なら、
右と左に分かれた僕らがきっと果てのない討論を繰り返して居たんだと思う。
曰く、なぜ、すぐ行動を起こさなかったのか
曰く、あの子がが幸せになるなら、それでいいじゃないかと

でも、今に至って僕の中の左と右は、
議論を始めなかった。

それは、独裁者と革命家が、同じ部屋の中で、
お互いしかめっ面をしながら、視線を会わせずワインとビールを飲んでるような
光景だった。

僕が嘗て好きになった女性には、彼氏が居た。
僕が、3年の友人という期間を経て、
(もちろんこの間、僕はその人に好きだという意思表示をし続けた)
その人に彼女になってくれと告白する為に、電話を掛けた、”その電話の中”で、
彼女は妊娠を僕に伝え、
その彼氏より早く僕に伝え、
どうしようかなと沈んでいた。

結果的に、もう妊娠できないも知れないからと身体的な理由を述べて、
彼女は結婚式もあげずに、離婚暦のある男と結婚し、子を産んだ。
後年、旦那に強姦されたと二人目を出産した。

誰かを深く深く愛した過去、
その暖かい思い出と共に、
誰かを深く深く憎む事を覚えた。

見たこともないその男に、
多分想像しうる限り最大の殺意を抱いた。
抱き続ける事になった。

その憎悪の締めくくりは、
如何にもチンピラ然とした安っぽい男を、もう一人憎むことで終わる。
激しい愛情を一人分失い、
朝、どこから立ち上ったかも解らない、黒々とした怒りを覚える相手が今も二人。


それが、僕の人生の1/3を締めた、
いわゆる、ありていにいえば、なんてことはない、ただの不倫の始まり。

実に損得勘定だけで見ても、割りに合わない始まりと終わり。


そして僕は、会って1ヶ月で何も起こらないというジンクスは、
この時とうに崩れていた事に気がついた。
結局のところ、僕にしたってルールを後付けで改変していたのだ。


でも僕は、その子の結婚相手になんの感情も持たなかった。

左側の僕も、右側の僕も、目の前のこの子にしか興味がなかったのかもしれない。
左側の僕も、右側の僕も、時計がまき戻らない事実を知っていたのかもしれない。

だから、左側も右側も、主義主張が違っていても、
結論が変わらない事実を、なによりも僕本人が認めていたのかもしれない。

一度だけ、この子のつくったパンを食べた事がある、
随分と輪郭のしっかりしたパンだった。
僕にとって料理に求めることは、この輪郭がある事だった。
およそ手料理と呼べるものの中で、輪郭をもっている料理は稀有な存在と言えた。
大概が、素材と調理法が合わず、ごちゃごちゃとした味付けか、
薄すぎるか、濃すぎるかのどれかだった。

だから、この子の作る料理を毎日食べられる相手は幸せだなと、
そう思った。

なぜかそう思うと少しだけ胸が締め付けられた。


ある日、その子に尋ねられた事がある。
そんなに激しい恋愛がなんで終わったの?と、

僕は様々な経緯をはしょって、

「自然消滅したんだよ」

と、答えた。

「なんかそれって最悪の終わり方だね。」

と、その子は軽く怒っていた。
なにについて怒っているかを僕は尋ねなかった。


いあいあ、どもども
勢いで書いた連載に、意外とコメントとかついて、

感謝感謝でありますの。

んでまあ、近況はともかく続きはどーだって話なんですが、

これ、未完なんですよねwwww

なので、明日会社でちょっと切のいいとこまで書きますんで、
1日お休みくださいませ。


この半年、実はずーっとひたすらに

ネットゲームしてたという、おっさんにあるまじき行為で、
そのゲームも、飽きてきて、

新しくやり始めたことも

ドラクエ10という!

あいもかわらず最低な人間しております。

amebaでも、ネットゲームでも友人ができて、
長らく、独りでいる方が気楽だぜって生き方も、
大分方向性が変わってきた気がします。

底辺底辺と蔑んでいた、
ライトノベルとかも大分面白くなってきたよなあとか。

でも、この3-4年遠回りもしてみたけど、
やっぱり文章書くことと、恋愛が僕の源泉なんだなって思ってみたり。

僕の恋路も、
この不定期連載の恋路も

どこへいっちゃうんですかね(笑
さて、そろそろストックもきれてきましたが…

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「ec ep.5」

ある日、その子からメールがあった。

朝の6時半に。
僕はその事に気がつかず、きっちりと出社する時間まで眠り続けた。

朝一本目の煙草を吸うときに、
いつもより頭にもやが掛かっていたのは、
そのメールの着信音に僕の中の何かが気がついていたからかもしれない。


-なんかあいたいかも-

句読点もないそのメールに、僕の心は躍ったんだと思う。

そして、そのメールに意気揚々と9時に返信した僕は、
きっとその返事が暫く来ないことも知っていた。

それなのに、電話を何度かしてしまう僕にも、
まだ幾分若さが残ってるのかと思うと、少し嬉しくなる。

思えば、初めてその子に出会ってから、
実に4年以上の月日が流れていた。

中学1年生で初恋を覚えたとして、
気がつけばもう高校二年生になろうという時間が過ぎていた。
かなりの確率で、もう初恋の人と違う人を好きだと思っているほどの時間が経っ
ていた。
十代の4年と、三十代の4年の重さの違いを実感する。

4年もあれば、
女の子に手も触れたこともない男の子が、
手を繋ぎたいけど、繋げない男の子が、
女の子に、

「ほんとに真面目だね」なんて笑いながら言われて、
それが、女の子の手管なんてちっとも思わず、
男らしいところを見せなきゃなんて、
少し強引にその子の腰に手を廻せるくらいにはなる。
もちろん、その手首あたりにはびっしりと汗を掻いていて、
あ、まずい、その汗がその子の薄いピンクのスカートにつかないかな、
なんて世界の誰も気にしてない事を気にしたりしながら。

僕は、煙草を吸いながら、
7畳ほどの自分の部屋を振り返り、
一体、その中学生の僕から、今の僕の間に、
何が付加されたのかについて考えてみる。

そこには、部屋の壁に張り付くヤニ程度のものしかない気がする。

少なくとも、僕は今も、男らしさがなんなのかについて、答えを持っていない。


そうして、やっぱり
返事は来なかった。

だから僕は笑った。
ほんの少しも寂しさを浮かべずに、
在るがままのその子が、やっぱりその子である事に、なんだか可笑しくなったのだ。

メールに書かず、
自宅のベランダから煙草を吸いながら思う。

僕は、例えば、こんなに間をおかず、
1週間に2回程度は君と会いたいと、ずっと思ってたよ、と。


メールが来るまでの数日、
僕は、その子について考えてみた。

僕は女の子に触れるのが苦手だ。

例えば満員電車で、
よほどキレイで若い子以外に触られるのが嫌な僕は、
毎日毎日、自分の我慢の限度の淵に溜まる、
液体の表面張力に驚いてばかりいる。

だから、触れて嫌がられるという思いが抜けない限り、
僕は女の子には触れたくない、

たとえ、後でホントは触ってもいいのに、と誰かが思っていたとしても、
僕は、触れることはできない。
自分が納得できるまでは。


僕はそうやってルールを決めていた。

決めていたけども、その子はもしかして、
そんなルールを僕には適用してないんじゃないかと思った。
すごく、当たり前の事なのかもしれないけど。


夏の暑い日、
その子の手が、何度も僕の腕に触れた、

その子も僕の腕に手が当たってることは、判っていたと思う。
少なくとも一度や二度じゃなかったから。

でも、宛てもなくうろうろと歩いてる時、
やっぱり何度も、その子の手は、僕の手と腕に触れた。

僕はその現実を喜んだ。


初めて付き合った女性に言われた事がある。

「なんであの時手を繋いでくれなかったの?」

もう20年も前の僕は、そうかもしれないと思っていたのに、
手を繋ぐ勇気がなかった。

20年後の僕は、
ただ、その子の手が触れるのを喜んでいた。

そうやって、その子から8文字のメールがくる少し前まで、
僕はあるがままを受け入れていた。

そのメールがくる少し前、
その子に誘われて、僕は池袋の展覧会を見に行った。

サンシャインへと繋がる、長い通路を歩きながら、

「私ね、結婚するんだよ」

そう言われた。
その一言は、僕を蝕む毒のように…とは直ぐにはならず、

「そうなんだ」と、笑う余裕が僕にはあった。
でも、おめでとうとは言えなかった。

でも、その言葉がギロチンみたいに、
僕を痛みなく真っ二つに分けたみたいで、
その日僕は、展覧会を見て、お茶をして、煙草を吸って、散歩をして、ショッピ
ングをして、
やっぱりラーメンを食べて、カラオケに行くんだけど、
ずっと、いつもどおりの僕と、
なんだか判らないけど、何かを言いたそうな僕にきっちりと左右に分かれてし
まった。

22時というのは、曖昧な時間だなと思う。
もうちょっと遊ぼうと思えば遊べるし、
そろそろ潮時かなという、夕陽と朝陽の境目位な時間だと思う。

もうちょっと話して行こうよと、僕はその子を誘い、
その子は、いつものようにいいよと応えた。

考えてみたら、
この子は、僕の提案に対して、一度も反対した事もなければ、
僕の前で怒ったこともなかった。

あの冬の、
眼鏡が曇った時と違い、
僕は、新しく滑り込んだ喫茶店の席で、
たっぷり一時間以上、左右に分かれた僕がなんと言いたいのかを探っていた。
そして、その子がトイレに立つ寸前に、僕は左側の僕が言いたい事を理解し、
口に出そうとした時、その子は化粧直しに席を立った。

だから、そこからもう一時間、必死にその言葉をどういえばいいのかを考えて、
その時その子が話していた内容の大半を、聞き逃していた。

その日2件目の喫茶店に入ってから、
僕は時計を見る余裕もなくて、
後になってみれば、終電もなくなった時間まで喋り続け、
何の脈絡もなく、その子に語った。

「ねえ、僕はえりちゃんが好きだったみたいだ」

大きい目を更に大きくして、驚いた表情を浮かべてはいたけど、
多分その子は、その言葉が事実だとは思って居なかったんだろうと思う。

もしくは、冗談であって欲しかったんじゃないかと思う。


結婚を告げたその日に、
別の男に告白されるというのは、どんな気持ちか判らないけど、
ドラマとしては陳腐すぎるなと思う。

ずいぶんと久しぶりに、
誰かに好意を伝えた。

そして僕は、その事、事態に満足していた。

相手がそう言われてどう思うとか、
そんな事もお構い無に、
僕の中に溜まった欠片が、ある形になった事を、嬉しく思っていた。

もしかしたら、
左と右に分けられた僕は、随分と後になって、
その事実に痛みを感じるのかもしれない。


そして、その随分と後というのが、
極々近いところの日付になる事を、
やっぱり僕は知らなかった。


喫茶店で僕は尋ねる。

「ねえ、じゃあさ、
もしあの寒い頃、ラーメン屋の帰りに告白してたら、
1%くらいは可能性があったのかな?」

少しだけ考える顔をして、その子は応える。

「うん、2%くらいあったんじゃないかな。」


やれやれという言葉が、
本当に実感として口の中でつぶやかれる。

僕はこの子と、こういう話をする時に、
どうしようもなくありきたりな言葉しか出てこない自分に辟易とする。

結局のところ、
中学生の僕から、今の僕の間にあるものは、
黄ばんだヤニの膜以下なのかもしれない。

終電もなくなった喫茶店で、僕が最後に投げかけたのは、こんな言葉だ。

「結婚式までの間、僕の彼女になってよ。」


めずらしくその子は、慌てふためきながら答える。

「そんなのだめだよ!」

顔を真っ赤にして答えた内容が、酷く慌てているのにはっきりとしていることが、
なんだか少し可笑しくて、なんだか少し哀しかった。
や~なんか、6か月も記事かいてないのに、
結構アクセスがいっきにあって、
うれしいもんですね(笑

見てくれる方がいるならうれしいですわほんと

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「ec ep.4」

不思議なのは、
僕がまだ、その子と会いだして間もない頃、
なぜ僕に自分からもメールをくれたかについてだ。

僕は気の利いた会話をしていたわけでもないし、
女の子が、狂喜乱舞するようなプレゼントをした訳でもない。
道行く女の子達を振り返らせるような容姿が僕にあったわけでもない。


とにかく僕らは、
ラーメンを食べて、カラオケに行き続けたのだ。

これが、
あてどもなく2人で散歩をした、
季節ごとの草花の前で沢山の話をした。

となるのなら、違う趣になるのだろうけど、

僕らといえば、
カラオケの画面に映る、アイドルや歌手を見て、
整形の可否や、その背景、いきさつについて話あってばかり居た。

目の前に居るその子の顔つきがどうとか、
貴方は本当は何を考えてるの?どんな事を、どう感じるの?といった事なんて全
く話さずに、
それこそアイドルグループの誰が好きで、なぜ好きなのかについて語り合った。

だから、なぜその子が、
不定期に僕から来るメールに、極度の時間差があったにせよ、返事と約束を繰り
返したのか、
僕は今でも判らないし、

僕が、メールを暫くしないで居れば、
忘れる前には、その子はメールを僕にくれたその理由については、
考えても、疑問符が頭の中に幾つか咲くだけだ。

ある日、何か食べに行こうと着たメールに、
僕は、

「今日は君が行く店を紹介してよ」
と返信した。

そうして僕らは数日後に、
焼き物を出す、またも馴染みのない地名にぽつんと存在する居酒屋の席に座って
いた。
そうして僕らは、やっぱりいつもと変わらず、
食べ物が美味しいかどうかについて語り合っていた。

それなのに、
前後の会話を全く覚えていないけれど、

なんかの弾みで、

「でも、彼氏はいるんでしょ?」

という、またもや頭より早く口が動いた質問の言葉を覚えている。

言ってしまった後に、あまりにも陳腐で明け透けな自分の心情に、
心底うんざりしたのを覚えている。

そして、驚いた表情を浮かべて、
大分なんというかを迷ったように、

「彼氏はいないよ」

と言った言葉を覚えている。
その時僕は、僕の中でそのほんの2秒程の躊躇いに、
何かについて気がつくか、そこで彼女に何かを言うべきだったのだ。
もちろん、それは自分のために。

その言葉の真意を確かめるより前に、
その子の携帯が鳴り、急用を理由にその子は帰って行った。

申し訳なさそうなのと、電話の内容を心配していた表情を良く覚えている。


昔のドラマでサブヒロインが言っていた。

男女の友情なんて存在しない、
それは永遠の片思いか、すれ違いだと。

僕もそのサブヒロインに同意する。

多分僕は、永遠の片思いか、すれ違いをして居たんだと思う。




つまるところ僕は、
あの冬に、「かわいい」とつぶやいた言葉以来、
その子に恋していたのだ。

更に言えば、萌芽を自覚する前に、
種としては、もっとずっと前からその子に恋していたのだ。

いじわるそうに、
片目の熊に、

「じゃあいつからなのさ」

そう問われれば、
僕は肩を竦めて答えるはずだ。

「多分、最初にあの子が羊肉を愉快そうに食べているのを見てから。」

にやりと笑う熊を見て知る。


こうして僕はスタート地点に立ったのだ。
立たざるをえなかったのだ。

3年ほど前、あの子に初めて会った時。

僕は僕の手の届かないところにある、ゴールの場所だけを知っていた。

僕はもう、自分が走れない事を知っていた。


でも僕は、3年も経った今になって、
その届かないゴールに向かう競技会に書類申請をして、

少しも似合わない、ジャージの上下を着て、
マネキンみたいな担当者からゼッケンを受け取っていた。

もう誰もいないスタート地点で、
僕は白い生地に黒字で書かれた番号を引っ張ってみる。
やけにツヤツヤとしたインキの質感と、木綿生地の手触りが、
なんだかやっぱり冗談みたいだった。

僕は自問する。

「会って1ヶ月で何もなければ、その2人はずっと何もないんだろ?」

僕は自答する。

「当然そうなるね。」

僕は自問する。

「お前は一体どうしたいのさ?」

僕は自答する。

「きっと現実を引き伸ばしたいのさ、
月と地球が地続きになるくらい薄く長く。」

僕は自問する。

「そこに何の意味があるのさ。」

僕は自答できなかった。




 
あ、一応架空のお話ですのよ?(笑

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「ec ep.3」

池袋の町で、
僕を必ず苛む思い出があった。

地下鉄の丸の内線から、東口に登る階段で、
僕は必ず思い出す事がある。
どんなにその思い出を忘れたいと願っても、
必ず視線でその場所を確かめずには居れない。

またそこで、あの人に会えるかも。
それが叶わない事を知っていて尚。
あの人に会ったところで、あの人も僕も、
もうあの頃には帰れないことを知っていても、尚。

それは祈りに似た行為。

でも本当は、そうじゃない、
僕はあの人ではなく、あの頃の僕をみているのだ。
きっと僕は、あの頃の自分が好きだった。
あの頃自分をとりまく世界が好きだった。

僕は古いアルバムを持っていないが、多分写真嫌いな僕が、
人生で1枚だけパシャリと自分の中でとった唯一の光景がここなのかもしれない。

あの日僕は、恋をした。
恋人と待ち合わせしたその場所で、後姿の見も知らない女性に恋をした。
振り向いたその女性は、僕の恋人だった。

同じ人に二度一目惚れをした。
この場所は、そんな場所だった。



でも、その子との待ち合わせの時、
やっぱり視線がその場所を一度彷徨ったとしても、
僕は、その事の待ち合わせ場所に思いをはせる事ができる。

今この瞬間、僕は今を生きていた。

激しい気持ちが、
幸せだという気持ちでは終わらず、
必ず最後には、哀しさや喪失感に繋がる事しか知らない僕は、

何もかも飲み込んでしまうような、深い想いはもう要らないと想っていた。

僕は目を閉じ、耳を塞ぎ生きていた。
-I thought what I'd do was I'd pretend I was one of those deaf-mutus.-

僕はライ麦畑を知らない。
だから、少年が何処へ向かって、何をしたのかも知らない。

でも僕は少年が発した言葉だけを知っている。
でも僕はなぜ少年がその言葉を発したかは知らない。


別の女性に言われた事がある。

「どうして貴方は哀しみと一緒に生きているの?」

「最後に残るのはいつも哀しさだからだよ。」


こうして僕は、自分が変わりつつ在る事を自覚した。



会うたびに、表情と顔つきが違う女の子だと想った。

好みの日もあれば、好みじゃない日もあって、
でも、いつもその子とあった後は、穏やかな楽しさがあった。

独りで、春の公園を歩くような気楽さと、心地よさがあった。


なのに僕はある日、尋ねた。
ディズニー好きのその子に、

「ねえ?僕もいい年だし、一緒にいく子もいないから、
同じディズニー好きとして、TDLに行かない?」

我ながら酷い誘い方だと想ったけれど、
その子はまた屈託ない笑顔で、いいよと答えた。

「ねえ、僕も男だし、一緒にいく子もいないから、
同じ人間として、ホテルに行かない?」

そう尋ねたら、その子はなんと答え、
表情を曇らせたんだろうか。


そしてやっぱり約束は薄く引き延ばされる。

1ヶ月経ち、3ヶ月が経ち、
対岸の火事を眺めるように、どこか無責任にその現実を飲み込む。
火の粉が僕の靴先を焦がしていた事も知っているけど、
僕は、河原に座り込み、煙草を吹かしながら、
やぱり対岸の火事を見る。

耳元で、白い身体に、黒い尻尾を生やした雌猫が囁く。

「ねえ、燃えているのは貴方自身よ?」

僕は肩を竦めて苦笑いをする。

「痛みも苦しみもない焼身ってのはロマンチックじゃないか?」

何も言わず目を細めて猫は去っていく。


ある時は、耳のない象に責め立てられる。

「君は間違ってるよ、間違ってる。
この道はどこへも繋がっていないよ、君は間違っているんだ。」

「耳のない君に、何を言ったら君は納得してくれるんだい?」


それでも僕も時々約束について、その子に尋ねてみる。

言い訳でもなく、ただいつか行こうと話すその表情に、
僕は嫌なのかという思いも抱かず、遠まわしな拒絶も感じず、

「うん、行こう」

とそう微笑む。

僕は、ただ波に乗り遅れたウミガメみたいに、
波打ち際で海を見る。対岸の火事を見る。

オスの僕は、産みの苦しみを知らない。


あるとき僕は、別の女の子と会っていた。

友達が居ないと泣いていたその子に、
君は十分魅力的だと言葉を掛けた僕は、
口より前に頭が動いていた。

だから、その子はそれきり僕の前から消えた。

一度だけ、深夜に電話が掛かって来た。

「これから貴方のところに行っていい?」と、

慌てる僕の声に、
その子は、
「ご、ゴメン!電話を間違えた!」と行って電話を切った。
酔っ払ったその声から、多分本当に電話を間違えたんだと想う。

それから、その女の子の名前が携帯のディスプレイに浮かぶ事はない。
僕がその子に電話をする事もない。


それでも、多分2ヶ月の間は空かずに、
肉を食べに行った女の子の名前はディスプレイに浮かぶ。

これはきっと僕が望んだ結果なんだと想う。

少なくとも、僕は自分から離したくない手を、
自分からは離した事がないんだと想う。
そして、幸か不幸か、僕は自分で離したくないと想っている間、
その手がどこかに行ってしまったことはない。

じゃあ、手を握っているのに、
その手を引き寄せない結果はどうなるんだろうか。

いつしか、握った手に張り付いた汗が気持ち悪くなって、
どちらともなくその手を離すんだろうか?

2012年の僕はまだ、その答えを知らない。

でも、もしかしたら2013年の僕は、答えを知っているのかもしれない。

(つづくかもれしれない?)
しばらくお昼にあげてきますね~。

-------------------------------
「ec ep.2」

 

僕の中に溜まっていった無色なガラスの欠片に色がついたときの事について、
実は、覚えている。

美味しいものを食べさせるのが命題であったはずなのに、
僕とその子の食事といえば、ラーメンが主体になっていた。

それについて言い訳をすれば、
何を食べたい?と聞くと、ニクかラーメンが返答として返ってくるのだ。
そしてラーメンを食べ終わると、僕らは歌った。
冗談みたいに、僕とその子で綴った歴史書の殆どのページには、
ラーメン、カラオケ、という文字が並んでいく。

別にその事自体が悪いわけじゃない。
ただ、同じ文字がずっと続く事に、諦めと罪悪感があっただけの事だ。
丁度こうして、文章を残していくなかで、
”ラーメン”と書き込んだ時の文字的な違和感が、
そのまま現実の僕の違和感だったという事だ。

僕がかつて良くそうしていたように、
それなりのお店や、それなりの場所に、
それなりの格好で、その子と会っていたら、また未来は、或いは過去は、
違ったものになっていたのかもしれない。

もしあの子のメールの頻度が、
もうちょっと短いか長いかすれば、この現実は違ったものになっていたのかもし
れない。

でも、きっと、僕の中に山というには少し足りない、欠片の数々は、
そんな微かなすれ違いが育てたものなんだと思う。

すべり台から堕ちるのと同じくらい必然に、
僕はもしかしたらの僕にはなりえないのだから。



あの子が、まだ池袋近郊に住んでいた頃、
僕の住んでる場所と、池袋の丁度中間にあるラーメン屋に行く約束をした。

この時も、これまでと同じように約束は何度か繰り延べられ、
(大概はその子の理由に拠る物だけれど)
その事に慣れていた僕が、あまりにも会える会えないの狭間を
行ったり着たりした事に、初めて軽い怒りを覚えていた。

僕は自問する。
どうして僕はあの子と約束を繰り返すのだろう?
どうしてあの子は、僕との約束を了承するのだろう?

冬も深いあの日に、
あまり馴染みのない、都営線の駅に降り立ち、身も知らない景色の中で、
同じく所在なさげなガードレールに腰掛けながら、足元に散らばる煙草の本数だ
けが増えていった。
よく小説ではこんな、寒い冬の場面では、コートの襟を立てた…なんて表現があ
るが、
僕は人生で一度もそんな行為をしたことがなかったので、いつも想像ができない。
そもそも僕の上着には立てるべき襟がやっぱりなかった。

僕が僕の性質として気に入らないのは、
どうでもいい事を考え出すと、どんどんそのどうでもいい考えが繋がって行って、
いつしかそのどうでもいい考えと現実の区別が付かなくなる事だ。

それは、例えば彼女と喧嘩をした夢を見た後、
朝起きた時、隣で寝息を立てる彼女に、無性に腹を立ててしまうような事だ。


例えば、僕が落としたこの吸殻が、明日どうなっているか考える。

ほんの少し横にある下水溝に吸殻が落ちたとして、下水溝の中はどうなっている
んだろう。
よく映画の中で下水を歩くシーンがあるけれども、実際下水とはどれくらい臭い
ものなんだろうか、

なんだかそんな想像をしてると、鼻の奥が嗅いだ事もない下水の臭いでツンと痛
くなる。

僕のすぐ後ろ15cmくらいを冗談みたいな速度で通り過ぎる自転車と、
頭の悪そうな女性の笑い声が2つが、僕を再び現実に引き戻す。

こうやって僕の妄想は、少し現実的な妄想に戻る。


会いたいという気持ちは、うつろいやすいものだ。
誰しも、誰かに会いたいという気持ちと折り合いをつけているんだろうと思う。

きっと1日会いたい気持ちを我慢して、
結果その人に会えるのなら、
空腹が最高の調味料であるように、その我慢は喜びに昇華されるのだと思う。
もちろん、その当日にその相手と喧嘩でもしない限りは。

でも、10日会いたいとか、多分ギリギリ1ヶ月くらいの、会いたいという気持ちは、
まだ”会いたい”で済むのかもしれないけど、

1年会いたい、とか10年会いたいとか、
手で触れることの、頭でどれくらいかを実感できないような長い時間は、
その会いたいという気持ちを変質させる気がする。

そしてその変質の時期は、やっぱり人それぞれで、
僕の変質サイクルは、きっと他の人に比べると短いんじゃないかと思う。
僕は僕で居たいと思っているけど、
僕は明日の僕が、今の僕で居られるかについて、まったく自信がない。
昨日までの僕は、旗を掲げた革命家だったかもしれないけど、
明日は、革命軍を撃ち殺す政府軍の兵士になっているかもしれないし、
セイタカアワダチソウになって風に吹かれているかもしれない。

今の僕は判る、4年前と今の違いを、
この時の僕は全く理解してなかった。
過去の僕は、そこが過渡期の境目だった事を知らない。


でも、その時僕は、その子に対しての気持ちが変質する事を恐れた。

だから僕は、同じ場所に立ち続ける事にした。

息を殺して、この場所に立ち止まる事で、
変質してしまう自分を抑えられる気がした。

昔そんな話を別の女の子に話したら、

「貴方は、自分に自信があるのね、
普通は相手が変質する事を男の人は怖がるんじゃないの?」

そう言われた。

「そうかもしれないね」

僕は、そう答える事しかできなかった。


ガードレールに腰掛け、うらびれた街灯に照らされながら、
帰ろうかなという想いと、なんで10個も歳の差がある子に腹を立てるのかと自嘲
する自分と、
煙草1本吸う毎に入れ替わりながら、
それでも、冬の冷たさの中に僕は居た。

雪の代わりに、眠気が僕の肩だか腰だかに積もり始めた頃、
狭くなっていた視界の真ん中に、その子が居た。

自転車に乗りながら、随分柔らかそうな白い息を夜の闇の中に浮かべていた。

だからまず気がつけば口元が緩んでいる自分は、
なんだか情けないなという気持ちになる。

他愛ない話をしながら、その子を正面から見なかったのは、
きっと僕の最後の抵抗。

これまた随分と美味しくなくなったラーメンを啜りながら、
やっぱり僕は他愛ない話をする。

人生で初めてラーメンににんにくを入れてみて、
一体、ラーメンとにんにくの何処に因果関係があるのか少しも理解できず、
町でよく見かける、キレイな女の子と、薄毛の男性のカップルを思い出す。
この世の果てみたいな体型の女の子と、
燕尾服を着て、そのままテレビの司会でもできそうな男性のカップルを思い出す。
僕には理解できない、世界の真理が其処にはあるのかもしれない。

ラーメンを食べ終えた僕らには、ラーメン屋にそれ以上長居する理由もなく、
女の子と行くには随分汚いそのラーメン屋を後にする。

避けられない現実として、
眼鏡をかけている僕は、外気の洗礼と共に視界が白く染まる。
俯いた僕の視界には、にんにく臭いであろう僕自身の白い息と、
随分くたびれた革靴の片鱗だけが見える。

自転車の音がするから、きっとその子は僕の隣を歩いていたはずだ。

100メートルくらい歩いたら、
眼鏡の曇りも随分晴れて、俯いた顔を前に向けると、その子がまた視界の真ん中
に居た。

「これからどうしようか?」

赤信号を待ちながら振り返る、その瞬間。

今日初めてその子を正面から見て、
あんまり化粧をしてなくて、
たぶん風呂上りにすぐ出かけたんだろうってくらいの髪形で、
でも、なんだかすごく柔らかそうな髪で、
少し癖のあるふわふわした髪の中に、
大きな目と、少し厚い唇があって、
なんだか冗談みたいにかわいく見えた。


「えりちゃん、かわいいね」

頭が動くより、心が動くより前に、
僕の口が動いていた。

言ってしまった後に、頭が動いて、

「ご、ごめん、わけわかんないこと言ったね…」
と恥ずかしくなって。

それから、1年後くらいに心が動いていた事を知った。

やっぱり、あの子はその時も笑っていた。
困ってる風でもなく、慌てるわけでもなく、
ごく自然に、ありがとうと笑っていた。


きっと僕は、
自分で想うほど、女の子というものに慣れていないのかもしれない。
きっと僕は、
この先ずっと、女の子というものに慣れないのかもしれない。



もしかしたら、
この時に僕は、僕の気持ちにちゃんと気がついていれば、
もう少し違った人生を歩いたのかもしれない。

それが幸せなのか不幸せな事なのかは判らないけど、

僕たちがバスに乗っていて、
急にお腹が痛いという君を気遣って、
僕が、運転手さんに無理を言ってバスを止めてもらい、
目的地から随分と離れた山中で、バスが走り去っていく姿を見たとする。

家に帰って、ニュースでそのバスが落石の直撃で乗客に死傷者がでたとして、
君は、僕に
「降りて良かったね」というのだろうか。
それとも
「降りなければ良かった」というのだろうか。


(つづく)
 
あ、どもどもお久しぶりです、
なんかいろいろ書いてたんですが、
一部放出してみたり、
いあ、今更誰もみてないだろうけど(笑

とりあえず、何日か予約記事。
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「ec ep.1」

blogを始めて間もない頃、
blogを始めました!という女の子の記事をみつけて、
僕も始めたばかりなんですよ!と書き込みをしたのを覚えている。

当時の僕が、一体どういう理由でその子とネット上だけでなく、
現実社会でメールを取り交わす関係になって、
当時の僕が、一体どんな言葉をつかって、見も知らない女の子を、
そのネットの世界から現実で会おうというとこまで引っ張り出したのか、
今の僕には想像もつかない。

ただ、何を食べる?という段になって、
「ニク」
と、その子が即答していた事を覚えている。

その何を食べると僕が尋ねた媒体が、
ブログ内のメールだったのか、リアルのメールだったのか、
チャットだったのか、電話だったのか、
それすらも覚えていないのに、

実際に、手持ちの料理屋の中から、
安くて旨い羊肉屋を選んだ事を覚えているし、

実際に会ってから、文字通りたくさんのニクをとても嬉しそうに次々と、
野菜を交えながら食べていた事を覚えている。

少なくとも僕は、
一緒に出かけた女性が、野菜ばかりを注文したり、
ウサギが食べるだけの量を食べて、お腹一杯、とそういわれるよりは、
目の前で気持ちよさそうに肉と野菜を"バランスよく"食べる女性の方が、
遥かに好みであったというだけの話。

髪の短い女性よりは、長い女性が好みだったというよくある話。

事実として残ってるのは、今となってはその店が全然美味しくなくなったという
事だけ。


「気持ちのいい食べっぷりだねえ、今度又美味しい店を探しておくから、
またご飯を食べよう。」

と、ごくありきたりな誘い文句を口にした、その時の僕には、
それほど明確な下心があった訳ではなかった、と思う。

まあ、随分と昔のことだから、多分無かったんじゃないか、と思う。

きっと、その瞬間僕は、目の前にいるこの子に、
なにか美味しいものを食べさせないと!という、
根拠のない使命感に囚われていたんだと思う。


でも、何時しか僕は変わっていた。

すべり台に座ったつもりもないのに、
僕は、よく磨かれたコの字型に折り曲げられた金属の内側に居た。
大人になった僕には、大分狭いその空間で、
ズボンの生地を通して、ほんの少しずつ僕の身体が下に滑っていくのを感じる。

でも、景色はあまり変わらなかった、
恐ろしく長い滑り台に、尻には僅かな動きを感じるのに、
見た目が変わらないのを好いことに、
僕はこの滑り台はどこまでも続いているんだと錯覚していた。

だから、視界の端に、
滑り台の終点が砂場であるのが見えた時、
背中の部分だけ色のはげた、薄桃色の豚のオブジェが目に入ってきて、
なんだか懐かしいと思うより前に、
驚くほどの速度が出ていることに気がついた。

焦った僕が、幾ら手を伸ばしても、足を引っ掛けても、
もう速度は少しも落ちはしなかった。


そうして、やっぱり僕は、すべり台の下にある砂場に落ちる事になる。

幸いなのは、その時僕が穿いていたのが、おろしたばかりの真っ白い綿パンでは
なくて、
穿き古したジーンズだったという事だけ。

靴下が嫌いな僕は、その時砂が入って困るような靴下を履かずにサンダルを履い
ていた事。

重い腰を上げて、
砂場に残る僕のカタチを再確認する。
4年分の重さをもって、砂場に残った痕は、自分が思ったよりも遥かに大きかった。

それは喪ったものと同じだけの大きさだった。
それは立ち止まっていた時間そのものだった。


今現在の僕の疑問といえば、
じゃあ、成層圏から蟻を一匹落っことしたら、
果たしてその蟻は地面に激突して死ぬのかという事。

僕は、空想上の周りに手すりも何もないすべり台のどこに、手足を伸ばしていた
のかという事。


人にはサイクルがあって、
例えば電話番号を聞いたその日の内に電話がなければ、しなければ、
次のステップに行かないと信じる人もいるし、
次の日じゃないとダメな人も居る。

僕は、付き合ってる女性が居れば、殆ど毎日のように電話をしたし、
昔の友人に言われた言葉を今も無意識に信じているのだけど、
出会って1ヶ月以内に、何も起こらない男女関係は最後まで何も起こらない、
という事にしている。

僕はそのジンクスに従い、頃合を見計らってメールでその子と次の約束を取り付
けようとするのだけど、
その子から返事があるのは、決まって僕が諦めてたり、メールをしていた事を忘
れている頃だった。

会社の用事が入って、行けなくなってしまったコンサートがもう一度開催される
みたいで、
今更感と、お得感がない混ぜになった、いつも不思議な気持ちになって、その子
に会っていた気がする。

でもその度に、僕はその子が何かを食べるのを眺めているのがとても好きだとい
う事や、
ああ、歌が上手いんだとか、たまたま触れた指先の感触がとても柔らかい事や、
実はすごく胸が大きい事を、
子供の頃に毎日小額のお小遣いを貰って、駄菓子屋で菓子を買い、
そのささやかな楽しみを家に持ち帰るような感覚で、
その子がどんな子かを僕は僕自身に溜め込んでいった。

もちろん、そんな断片を幾ら持ち帰っても、
その子本人が僕の中で再構築されるわけじゃない。
砕けてしまった断片は、再構成するには熱がいる、
ガラス片はどこまでいってもガラス片でしかない。

ただ、気がつけばもう3年近くもそんな行為を繰り返していくうちに、
意識的にせよ、無意識にせよ、自分の中になんと呼んでいいのか判らない何かが、
時として、どこかの競艇場に時折現れるスナメリみたいに、此方を見てる事には
気がついていた。

あの子とは友達になれたのかなあと、
10も歳の離れている事実を、年数で埋めることができたのかと考える。
大きな目と、大きな胸について考える。

曇り空を見上げて自分の今の心情を推し量れるように、
誰かにメールする時の高揚感で、自分の心情も量れる。


季節はまだ冬だった。

(つづく)
や、どもです、廃奴です。

最近なにしてんのー?って話ですが、
仕事大好きっこになってたりします。

まあ、ワンピースの新刊を京都で買って、
ビジネスホテルで、エロ動画サイトを見ようか、ワンピを見ようか真剣に悩んだまま、
疲れて寝る生活です。

というわけで、
なんか出張ばかり行ってます。

年明けてから、
京都にいる時間の方が長いんじゃないかという気になってきます。

新幹線に乗って、
となりの若い女がうるせー!?とかイライラしながら耳栓して寝るんですけど、

気がつくと、アラブだかどこかだかの十代のその女の子も寝ていて、
厚めの唇を半開きにして、
冬だというのに、
えりぐりの深いシャツがなんとも美味しそうで、
ついつい胸のシャツの隙間に目が行く自分に勝てないっ!さっきまでの怒りはどこへ?!

つか、貧乳マンせー!?


何故か5冊しか買っていないのに、
積み上げたら20cm以上の高さになっちゃうような小説を読んでたり(軽くギネスだそうです)

雪道でこけたり
雪道でこけて出血したり

やっぱ雪とかろくなもんじゃねえとか?!

痩せるしかねえと、
肥大化した胃袋を収縮させるために四苦八苦してみたり。

ワンピース展に行くためにはどうしたらいいんだとか、

ワンピースの置物を買おうかどうか一週間悩んでみたり、

自分で作った模型の色合いにうっとりしてみたり、

女子高生の生足は神様が作った奇跡なんじゃないかと妄想してみたり、
(ただし美少女に限る)

一緒に飯食いにいった若い女の子のセリフに感動してみたり、

同窓会の案内が着てみたり、

10年以上前にけんか別れした友人の名前をググってみたら、
なんか総務省で働いてることが解ってみたり、

親戚みたいなおじさんが末期ガンになってみたり、

愛してやまない2つのうちの1つもガンで亡くなってみたり、

結局、俺は子供だなあとか自覚してみたり、

そうだやっぱり大人になろうとか思ってみたり、

昔、俺は恋をしていたなと回顧してみたり、

でも、今が一番いい時代なんじゃないかとか思ってみたり、

自分は最低な人間かもしれないなあと真剣に考えてみたり、

でも、そんな自分を構ってくれる人もいるんだなあとか、

3年前まで、一生懸命このblog書きつづってたなあとか、


やっぱり誰かが居るから、俺は居るんだなあとか。


今住んでるところ、すぐ傍にこじんまりとした庭園があるんです。
雪が降ったその日、

バカみたいに寒空に散歩行って(コケるわけですが)、
バカみたいに雪が降る東京をよろこんだんですが、

翌日会社休んで、その庭園を見に行こうかと、
3割くらい本気で考えたんですが、

やっぱり会議外せなくて、

雪がなくなった今、

やっぱり休んどきゃよかったなあって、

そんな日常を過ごしてたりします。

変わったことと言えば、
エロビデオをあんまり見なくなりました。
…追記…つか、下書きのつもりが、そのまま記事になってたという…
いや、人間時間経つと駄目ねえ…ま、暇な方は違いでも探してください。
実に投げっぱなし…(コメントついてて、僕と俺併用かよカスってついてないか、ドキドキしてたのは秘密)

誰も読んでないって?しってますぅー!

田舎、下町、大都会、どれが好き? ブログネタ:田舎、下町、大都会、どれが好き? 参加中

私は下町 派!


いあ、しかし、blogネタっつのはいいね、
別れた彼氏彼女がばったり町で出くわした時の、
最近どお?ってくらい、こう自然で絶望的な感じがするわ。

んで、なんかよくわからんネタだけどさ、
大都会ってなんだ?
田舎者がもうそうする、東京に行けばってあれか?

田舎者が想像する東京ってどこだ?
渋谷か?新宿か?

そんなものが少なくとも日本のどこにあるのか教えてほしいわ。



僕は、東京生まれの東京育ちだから、
東京がどこだって聴かれたら、思い浮かべる風景が2つある。

子供のころ、塾通い、
丸ノ内線で、池袋まで週一で通ってた時。

地下鉄に乗っていたはずなのに、
突然周りが明るくなる。

ハッと気がつくと、地下にいるはずの頬に
陽の光を感じる瞬間、
何かを理解するより前に、景色はまた暗いトンネルに戻る。
たった数秒の地下と地上の出会い。

いつしか僕はそんな不思議な空間にも慣れていって、
本を読むのに邪魔だと思うようにもなるのだけど、

もう少し大きくなってからは、
その場所がどこなのかをその数秒に必死になってみる。


社会人になり、

水道橋から、高架沿いにお茶の水方面へと登る坂道。

月に1度か2度の外出で。

夏の暑い盛りに、蝉の声と一緒に、
自分より高いところを走っていた電車は、
いつしか自分の足元を走っている。

どこか惚けたような音を立てながら。

少しずつ自分は登っていき、
下のほうで電車が走る。
自分と電車の間には、まばらな木々があったり、
死体が沈んでても何百年も誰も通らないような川があったり、

終わりには古びたアーチがあって、
情緒ある道のりも、ケタタマシイ秋葉というオタクの街に通じて終わる。
どうして潰れないのか30年近く悩むビリヤード屋で終わる。

陽が沈みかける時のその立体的な風景に僕は東京を感じる。

何故だか解らないけど、
立体差のある風景で、地面の上を電車が走っていて、
どこか掠れた印象の風景に僕は東京を感じる。


そして、月一の外出もしなくなり、
ふと私服で水道橋からお茶の水に歩いて行く時、
小学生の時、電車の中から見上げていた景色と、
今、電車を見下ろしながら歩く風景が、同じだったことに気がつく。

何十年も経った今になって。


下町で生まれた僕は、

人との距離が近い街に愛着を感じる。

でも、東京からは下町も消えつつある。

僕が住んでいた町は、
割烹着を着た板前さんや、
首まで白粉を塗った芸子さんが行き交う街だった。

僕は彼らの名前を知っていたし、
彼らも僕の名前を知っていた。

でも三十数年も経ち、そんな人々も居なくなった。
どこから来たのか解らない人々で町は満たされ、

祭りもマナーを知らない連中が無法をする。


僕は生れた町を離れ、
住んだところは、静かな下町情緒の残る場所だった。

きっと、東京という町は、
田舎から出てきた、大都会を求める人たちの妄想に塗り替えられていくのだと思う。

それは悪いことではないのかもしれない。

考えてみればお互い様なのかも知れない。

僕がスキーや観光で訪れた町や、
なんだか最近住んでるんじゃないかと錯覚するくらい通ってる京都、
愛してやまない日本の北の端と南の端だって、
旅行者として訪れた僕と、そこに住む人の間には温度差があるんだと思う。

人間は、きっとぬくもりの伝わる距離でしか生きていけないんだと思う。
だから、今の世の中どこへ行っても誰もかれもが異邦人なのかもしれない。

だから、僕は自分の生まれた町から離れた今は、
もう、どこへ行っても異邦人なつもりでいる。

そこにあるものをなるべく壊さずに、
少し遠巻きに、でも少し微笑みながら。


でも、僕の肌は誰かが作り出した東京には合わないので、
そっと新参者の気持ちで、老後はフィンランドあたりに住めるよう、

今から少しずつ貯蓄をしていこうと思う。

田舎、下町、大都会、どれが好き?
  • 田舎
  • 下町
  • 大都会

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