呉勝浩さんの小説を読むのは、直木賞候補作「スワン」に続いて2作目になります。

 

本作「爆弾」も直木賞候補作であり、2022年の”このミス”1位にもなりました。

 

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。 たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。 直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。

 

「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。 警察は爆発を止めることができるのか。 爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。 (BOOKデータベースより)
 

「スワン」も読み応えたっぷりのミステリ小説でしたが、「爆弾」は物語のパワーや吸引力がアップしていて、物語の中に引きずり込まれ、ページをめくる手が止まらなくなりました。

 

その吸引力の源になっているのがスズキタゴサクと名乗る爆弾魔です。 既に警察に確保されているにもかかわらず、取調室の中で刑事たちを翻弄。 クイズを使って爆弾の場所をほのめかし、人間の本性について語ります。

 

スズキの悪意によって、刑事たちが次々と屈していく。 その存在感はまるでハンニバル・レクターのようです。

 

スズキが連行された野方署には、かつて”はずかしい不祥事”を起こした敏腕刑事・長谷部有孔が在籍していましたが、スズキと長谷部刑事のかかわりは何なのか?

 

次々と刑事が屈する中、最後の砦と言うべき類家刑事とスズキの対決の行方は?

 

そして、爆弾はあといくつあり、どこで爆発するのか?

 

様々な謎をはらんで物語は一瞬も弛緩することなくラストまで突っ走ります。

 

ノンストップ・ミステリーという言葉がまさにピッタリの小説でした。 お勧め。