先月、お気に入り作家のベスト3(井上夢人)という記事を書きましたが、まだ記事にしていなかった井上夢人作品のうちの1作です。 再読しました。

 

『風が吹いたら桶屋がもうかる』というタイトルは、何の関係もなさそうな物事がつながるたとえ(ことわざ)で、論理の飛躍やこじつけを指す場合もあります。

 

7編の連作短編集で、個々の短編のタイトルは下記のようなもの。

 

「風が吹いたらほこりがまって」、「目の見えぬ人ばかりふえたなら」、「あんま志願が数千人」、「品切れ三味線増産体制」、「哀れな猫の大量虐殺」、「ふえたネズミは風呂桶かじり」、「とどのつまりは桶屋がもうかる」

 

『風が吹いたら桶屋がもうかる』のロジックになっていて、洒落てますね。

 

 

牛丼屋でアルバイトをする大学生のシュンペイは、開発途上の超能力者ヨーノスケ、ミステリ小説好きで理論派のイッカクと同居していた。 

 

ヨーノスケの超能力を目当てにした美女の依頼人たちが、つぎつぎとシュンペイのアルバイト先に現れる。 果たして彼らは事件を解決できるのか? ユーモアあふれる謎解き短編集! (内容紹介より)

 

各編で美女が依頼する内容は、行方不明のボーイフレンドの行方とか、死ぬ前に叔父が言い残した言葉の意味とか、家に憑いた霊を追い出してくれとか、多岐に渡るのですが、その後の展開は、見事な(笑)ワンパターンでした。

 

ヨーノスケが超能力を使って解決しようと悪戦苦闘しているところに、イッカクが割り込んで独自の推理を展開します。 この推理は論理の積み上げで、一見それらしいのですが、後日真相はまるで異なることが判明するのです。

 

論理の積み上げを行った結果、推理はとんでもない方向に転がって行くという、まさに「風が吹いたら桶屋がもうかる」というタイトルにふさわしい話でした。

 

各編の謎解きというか、推理と真相の対比は面白いのですが、井上夢人さんならラストでひと捻り欲しかったですね。 ワンパターンのまま終わったのでちょっとガッカリ。

 

でも軽ーく読めて楽しめました。