「機龍警察シリーズ」は、月村了衛さんが2010年から10年以上に渡って書き続けている人気シリーズ。
本作「白骨街道」は2021年に刊行された最新刊で、 「機龍警察」、「自爆条項」、「暗黒市場」、「未亡旅団」、「火宅」、「狼眼殺手」続く第7作(長編としては第6作)になります。
私が2013年に第1作、第2作を読んだときには、自身ここまで嵌まるとは思わなかったんですが、10年ぶりくらいに読んだ第3作「暗黒市場」が劇的に面白くて、すっかりその世界観に取り込まれてしまいました(^-^)
パワードスーツ型ロボットが活躍するSF的要素と、警察小説、リアリティ溢れる世界情勢が混然一体となった小説は他にないでしょう。
その根底には、警察官の矜持とセクショナリズムという、明暗の側面を赤裸々に描写する警察小説があることが大きいのだと思います。
前作「狼眼殺手」では、パワードスーツでのバトルシーンがまったくなかったんですが、それでも緊迫感たっぷりの警察小説として読み応え十分でした。
本作では、前作で描かれなかったバトルシーンがたっぷり織り込まれた冒険小説パートと、内閣官房まで及ぶ陰謀を描いた警察小説パートが見事に融合! 面白かった!
国際指名手配犯の君島がミャンマー奥地で逮捕された。 日本初となる国産機甲兵装開発計画の鍵を握る彼の身柄引取役として官邸は警視庁特捜部突入班の三人を指名した。 やむなくミャンマー入りした三人を襲う数々の罠。
沖津特捜部長は事案の背後に妖気とも称すべき何かを察知するが、それは特捜部を崩壊へと導くものだった・・・傷つき血を流しながら今この時代と切り結ぶ大河警察小説、因果と怨念の第6弾。 (BOOKデータベースより)
ミャンマーが舞台の冒険小説パートと、日本が舞台の警察小説パート。 この2つが章ごとに切り替わりながら物語が展開していきます。
そのどちらにもミステリ的どんでん返しがあり、クライマックスに向けて切り替えのテンポも速くなっていくという、否が応でも興奮しました!
警察小説パートでは、「未亡旅団」で兄を亡くした城木が、本作では親族全員敵側であることを知る・・・。 憔悴する城木が可哀そうでしたねー。
そして、ミャンマーから帰国した突入班のユーリが、夏川と由起谷に『まっすぐ生きろ』という言葉を城木に伝えるよう託し、託された夏川と由起谷がユーリが去ったドアに向かって自然に頭を下げていた。
このシーンは、「暗黒市場」でユーリの壮絶な過去を知っているだけに心に沁みました。 機龍警察の物語世界は、読めば読むほど深くなって行きますね。
なお、ミャンマーは2021年に軍のクーデターが起こって、最高指導者のアウンサンスーチーが拘束・自宅軟禁されました。
このとき本作は雑誌連載の途中だったのですが、月村さんは上手くこの事実を本作に取り込んでいます。 現実の世界情勢とのリンクもこのシリーズの魅力です。
シリーズ屈指の傑作でした。 このシリーズは本当にお勧めです!