先日読んだ「高瀬庄左衛門御留書」がとっても良かったので、同じ作者の本作を読んでみることにしました。

 

どちらも架空の藩・神山藩を舞台にしており、登場人物やストーリーに関連性はないのですが、「神山藩シリーズ」と呼ばれていて、最近第3作「霜月記」も刊行されています。

 

道は違えど、思いはひとつ。 政争の嵐の中、三兄弟の絆が試される。
『高瀬庄左衛門御留書』の泰然たる感動から一転、今度は17歳の武士が主人公。

 

神山藩で代々筆頭家老の黛家。 三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしている。 しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始めていた。 そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。 その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。 (BOOKデータベースより)
 

「高瀬庄左衛門御留書」の主人公は、妻子に先立たれ諦観を持って生きている初老の武士だったのですが、本作では黛家の三男で17歳の新三郎が主人公。

 

前半は清涼な青春物語の趣きもあります。 しかし、次席家老・漆畑内記の企みによって黛家三兄弟に悲劇が襲い掛かり、権力に抗おうとした新三郎も屈服させられるのです。

 

後半は、それから十三年後。 新三郎は黒沢織部正と名乗り、大目付として確固たる地位を築く一方、筆頭家老となった漆原内記に仕え、”漆原の走狗”などと呼ばれる存在になっていました。

 

権力を得るためには漆原に屈服するしかないのか? 織部正(新三郎)の真意は?

 

というような物語でした。

 

上記以降、終盤の逆転に次ぐ逆転は緊迫感満点! 伏線回収も数多く、「高瀬庄左衛門御留書」よりもミステリ/エンタメ寄りの小説になっていて面白かったです。

 

起伏の激しい物語になっても、砂原さんの文章は端正であり、決して下品にならないところが良いですね。 お勧めです。