「藤沢周平さんばりの正当な時代小説」というブロ友さんの言葉に誘われ、読んでみることにしました。 藤沢周平ファンなら読み逃せませんね。

 

作者の砂原浩太朗さんは、1969年神戸市生まれ。 早稲田大学文学部卒業後、出版社勤務、フリーライター、編集・校正者を経て2016年「いのちがけ」が決戦!小説大賞を受賞して作家デビューしました。 本作が2作目になります。

 

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。 50歳を前にして妻に先立たれ、俊才の誉れ高く、郡方本役に就いた息子を事故で失ってしまう。


残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。 しかし藩の政争の嵐が、倹(つま)しく老いてゆく庄左衛門を襲う。 文学各賞を受賞した珠玉の時代小説。 (文庫裏紹介文)

 

簡潔で端正な文章、四季こもごもの自然描写、主人公と嫁の志穂の間の抑えられた情感、などなど、確かに色んなところに藤沢作品らしさが見受けられました。

 

また、老年に差し掛かった主人公という部分で、「三屋清左衛門残日録」を思い起こさせました。

 

作者自身、中学生の頃から藤沢作品を読み、大きな影響を受けたと語っています。

 

妻と息子に先立たれ、人生に諦観を持って生きている主人公・高瀬庄左衛門。 前半はそんな庄左衛門が日々を淡々と過ごす姿が描かれます。

 

しかし、中盤からはストーリーが大きく動き、庄左衛門は藩の政争に巻き込まれていくのです。 終盤、思いもよらない黒幕の存在が明らかになり、最後には緊迫感溢れる剣戟シーンまで用意されていました。

 

端正な文章、ストーリーの面白さに加えて、個性豊かな脇役、庄左衛門の丁寧な内面描写など、文句なしに素晴らしい時代小説でした。 お勧めです!