前回読んだ「スマホを落としただけなのに」は、2016年の「このミス大賞」の受賞を逃した作品でした。 このとき大賞を受賞したのが本作です。 「スマホを~」よりもさらに面白いだろうと期待を持って読んだのですが・・・・・

 

呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける。 夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。

 

同様の保険金支払いが続けて起きており、今回で四例目。不審に感じた夏目は同僚の羽島と調査を始める。 連続する奇妙ながん消失の謎。がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。 (文庫裏紹介文)

 

ガンで余命宣告を受け、生命保険の生前給付を受けた患者のガンが消滅した? そんな事例が連続して起こります。 その背後に何者かの意図が?

 

また、転移が起こりにくい初期のガンなのに、患者が政治家や社長など有力者だと、転移が起こり、その転移を治療する病院が存在。 いったいどうやって?

 

この魅力的な謎を追って行く医療ミステリです。 作者の岩木一麻さんは、国立がん研究センターでがん研究に従事している専門家。 本作で示される回答は、現代の医療技術に照らして実行可能とのことで、リアリティも担保されています。

 

しかしながら、せっかくの画期的な謎解きを、ミステリ小説に上手く生かせていませんでしたねー。

 

まず、犯人の動機に納得感がありません。 ラストで犯人が犯行に至る経緯を色々と説明するのですが、どうにも共感できないというか、「なんでこうなるの?」という感じです。

 

また、探偵役のキャラクターや謎解きの過程も中途半端でスッキリしません。 魅力的な謎解きだけでは、魅力的なミステリ小説にはならないということなのでしょう。