―――2014年1月11日投稿―――2024年1月21日更新――――

 

「白鳥の湖」 の失敗によって、チャイコフスキーは二度とバレエ音楽は書くまいと決心していました。 踊りの伴奏としての単純な音楽しか歓迎されない、バレエ音楽というものに愛想が尽きていたのです。

 

そんなチャイコフスキーを10年ぶりにバレエ音楽に向かわせたのは、マリンスキー劇場の監督官だったフセヴォロシスキーからの依頼でした。

 

フセヴォロシスキーはペローの童話を元に自ら台本を書き下ろし、振り付け師には当代随一のマリウス・プティパを起用して、満を持してチャイコフスキーに作曲を頼んだのでした。

     

これに心を動かされたチャイコフスキーは作曲を承諾し、「3大バレエ」の2作目が作られることになったのです。 

 

「3大バレエ」の中でも、最も長大で、絢爛豪華な雰囲気を持つ「眠りの森の美女」は、チャイコフスキー自身も「この作品は私の生涯で最も優れた作品の一つになると思います」と述べています。

      

しかし初演の評判は、「白鳥の湖」ほどの失敗ではなかったものの、新聞は「チャイコフスキーの音楽は、演奏会用作品でまじめすぎ、重厚すぎた」と述べていて、大成功とはいかなかったようです。

      

結局、「白鳥の湖」にしても、「眠りの森の美女」にしても、世界中で大ヒットし不朽の地位を射止めるのは、チャイコフスキーの死後、長い年月が流れてからのことになったのでした。

     

「眠りの森の美女」は、全3幕で構成されており、物語は次のようなものです。

     

プロローグ

オーロラ姫の誕生を祝って、盛大な式典が行われています。 邪悪な妖精カラボスは、式典に招待されなかった恨みから、「オーロラ姫は、20回目の誕生日に、自らの指を刺して死ぬでしょう」という呪いをかけます。 しかしリラの精が、「死ぬのではなく、100年間眠るだけ」と魔法をかけます。

     

第1幕

16年後、オーロラ姫に4人の王子が求婚します。 しかし、その後、オーロラ姫は、針が指にささり、深い眠りにつきます。 リラの精は、城にいた全員に眠りの魔法をかけ、オーロラ姫が目覚めるその時に、目を覚ますようにしておきます。

↓有名なワルツ

 

第2幕

100年後、狩りに行った若き王子は、リラの精にオーロラ姫の幻を見せられ、その美しさの虜となります。 王子はリラの精に導かれ、今は荒れ果てた城にたどり着きます。 城の中で眠れるオーロラ姫を発見した王子は、キスをして、眠りから目覚めさせます。

↓美しいパノラマ

 

第3幕

王子とオーロラ姫の結婚式の場面。 なぜか、赤ずきんと狼、長靴をはいた猫、シンデレラ姫などがでてきます。 もちろん、リラの精などの妖精も。 そして、最後は、豪華絢爛たる音楽とバレエで、幕が降ろされます。

↓ポロネーズ(御伽噺の登場人物たちの入場)

 

 

のだめでは、ヨーロッパ編後編にワルツが登場します。 ミルヒーの代役でルイとの協演(ラフマ3番)を成功させた千秋。 ホテルのロビーで、ルイとその母親に別れを告げる場面で流れていました。

 

ルイの母親: 「千秋、シュトレーゼマンの代役に、あなたのようなペーペーが振るのを快く許してやったんだから。この貸しはいつか返してもらうわよ」

 

ルイ: 「ママ!大暴れしたくせに。快く許したのはあたしよ」

 

ルイの母親: 「ふん。まあ、いい演奏だったわよ。早く出世しなさい!」

 

協演を成功させた満足感、ソン・ルイの持つ豪華な雰囲気、などがこの曲に良くマッチしていました。 でも、母親役の片桐はいりの存在感が上回っていたかな(笑)

 

 

アンドレ・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団
なんせ長い曲なので、このCD2枚組みの盤でも、2、3曲のカットがあり、完全版とはなっていないようです。 しかし、この曲を聴き通すにはプレヴィンの巧みな曲の性格付けが助けになることでしょう。

 

シャルル・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団 

「眠りの森の美女」第3幕を中心に、他の主要曲も取り込んで1幕ものとしたのが、縮小改訂版「オーロラ姫の結婚」です。 デュトワ/モントリオール響の透明な響きは美しく、全曲はあまりにも長いという人には良いかも知れません。 「くるみ割り人形」全曲版とのカップリングもうれしいですね。

 

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

こちらは組曲版で、「プロローグ」「バラのアダージョ」「長靴をはいた猫」「パノラマ」「ワルツ」の5曲が収録されています。 シンフォニックで絢爛豪華な曲調はカラヤンの得意とするところで、「バラのアダージョ」のスケール感、「ワルツ」の華麗な演奏は見事です。