チャイコフスキーはクラシック界でも稀代のメロディメーカーなんですが、、その本領が最も発揮されている曲は、この「白鳥の湖」だと思います。 全曲約150分の中に魅力的なメロディ、珠玉のメロディが次々と登場し、まさにメロディの宝庫です。

    

この素晴らしい音楽もあって、今日ではバレエの代名詞のように扱われている「白鳥の湖」は、実は、初演当時大変に不評で、チャイコフスキーに二度とバレエ音楽は作曲すまいと決心させたほどでした。

   

これほどの傑作が、なぜ批評家や観客に受け入れられなかったかというと、当時のバレエはプリマンドンナの優雅なポーズや踊りが中心で、音楽はそれを伴奏するためだけの単純なものだったんですが、これに対してチャイコフスキーの音楽があまりにも絶対音楽的で難解なものとして受け取られたこと。

    

さらに、初演の際の衣装や装置が貧弱で、振付師、指揮者、バレリーナなども一流ではなかったことから大失敗をまねいたと考えられています。 しかし、生来自己不信的だったチャイコフスキーは、あくまでも原因は自分の音楽の未熟さであると思い、次作の「眠りの森の美女」まで、10年間バレエ音楽を作曲することはありませんでした。

   

「白鳥の湖」は全4幕で構成されており、物語は以下のようなものです。

   

プロローグ:

美しい王女オデットは悪魔ロットバルトに魔法をかけられ、白鳥に姿を変えられてしまいます。

  

第1幕:

今日は王子ジークフリードの誕生日。城では祝宴が開かれ、友人たちが招かれています。 そこへ母の王妃が入って来て、明日の舞踏会で招いた姫君たちの中から花嫁を選ぶようにと告げます。 しかし、王子はなぜか気が晴れず、なにかに誘われるように白鳥が住む湖に狩りに向かうのでした。

    

第2幕:

湖の白鳥たちは月の光が出ると、たちまち娘たちの姿に変わっていきました。 その中でひときわ美しいオデット姫に王子は惹きつけられます。 彼女は夜だけ人間の姿に戻ることができ、この呪いを解くただ一つの方法は、男性に永遠の愛を約束してもらうことです。 それを知った王子はオデット姫に愛を誓い、彼女と結婚するため明日の舞踏会に来るよう言います。

   

第3幕:

舞踏会で世界各国の踊りが繰り広げられているところへ、オデット姫になりすました悪魔の娘オディールが現われます。 王子は彼女を花嫁として選び、その様子を見ていたオデット姫は湖へ走り去ります。 悪魔に騙されたことに気づいた王子は嘆き、急いでオデットのもとへ向かいます。

    

第4幕:

破られた愛の誓いを嘆くオデットに王子は真摯に許しを請い、2人は抱きあいます。 そこへ現われた悪魔ロットバルトは、湖に嵐を起こし2人は大波に飲み込まれてしまいます。 しかし、2人の死を超えた愛の力が悪魔を打ち破り、湖に平穏が戻ります。 オデット姫と王子の魂は白鳥たちに見守られながら、来世で永遠に結ばれるのです。

(結末については様々な版があります。 上記はデュトワ盤の解説を参考にしたものですが、呪いが解けないのに絶望して2人で身を投げるものや、悪魔を打ち破って呪いが解け幸せに暮らすものなど)

   

   

「のだめ」では映画「最終楽章前編」で、マルレ・オケの練習中にバレエ練習の子供たちがなだれこんでくるときのBGMに使われていたのと、もう一箇所意外な所で使われていました。

   

ドラマ第6話で、海外に行けないことに焦る千秋が夕食のおかずに缶詰を大量買いするのを見たのだめは、千秋に豪華な夕食をご馳走することにします。

   

しかし財布の中に3千円しか入っていないのだめが選んだのは・・・・・、ここで「白鳥の湖」の中で最も有名な白鳥のテーマが劇的に演奏されます。

   

のだめ「さあどうぞ。 今日は奮発してお寿司ですよ」 回転寿司でした(ガクッ)

   

しかし回転寿司というものを見たことのない千秋は不思議そうにしています。

    

千秋「くそっ、何で寿司が回ってるんだ」   そしてウニを取る千秋。

    

のだめ「ムキャー! ウニ! いきなりウニ。 先輩それ金皿ですよ400円。 学生は100円の白皿って相場が決まってるんですよ」

   

千秋「まあ、まあ、だな。 ほら、やる。 これもやる」  次々と刺身だけ食べて残りをのだめに。

   

のだめ「なんでご飯を残すんですか? のだめも刺身部分が食べたいです」

   

千秋「ほれ、ガリ寿司」

    

のだめ「ムキャー!!!!」

  

とっても笑える場面でしたね。(音楽は途中でコミカルなアメリカンパトロールに変わっていました) 

   
    

チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」全曲/モントリオール交響楽団 デュトワ(シャルル)

¥2,400
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シャルル・デュトワ指揮/モントリオール交響楽団
この曲がメロディの宝庫であることを、私に教えてくれた全曲盤です。 モントリオール響の艶やかな色彩感と洗練されたアンサンブルは言うに及ばず、劇音楽としてのスケールの大きさを感じさせるデュトワの指揮によって、まるで絢爛豪華な交響詩のような音楽になっています。 奥行きのある録音も優秀。
    
チャイコフスキー:白鳥の湖(全曲)/ロンドン交響楽団 プレヴィン(アンドレ)
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アンドレ・プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団
この盤も昔から名盤と言われて来たもので、各曲の性格付けや描き分けはさすがプレヴィンと思わせます。 デュトワ盤がスケールの大きな絶対音楽を感じさせるのに対し、こちらはもう少し肩の力を抜いた音楽になっています。
    
チャイコフスキー:白鳥の湖(抜粋)/フィラデルフィア管弦楽団 オーマンディ(ユージン)
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ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団
この盤は主要曲を抜粋したもので演奏時間55分。 全曲盤150分はちょっと辛いという人には、良いでしょう。 絢爛豪華なフィラデルフィアサウンドをベースにメリハリの利いた演奏を聴かせてくれます。