第6章 創作・随筆(第5節…創作「病院(仮題)」連載⑨) | 獏井獏山のブログ

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(六)

毎朝のイイヒのオバサンの来訪は三村さんを陶酔境に至らしめるのだ。オバサンは609号で実に愛想よく、常にイヒヒと云って笑いを撒き散らして行くのだ。これには三村さんの存在が大きく寄与していることは今更ここに述べるまでもない。…小母さんは1人大体1~5分で片付けて行くが、三村さんの所では15分位留まっているのが相場になっていた。三村さんが一言何か言うとオバサンがイヒヒヒと喜ぶ。オバサンが云うと今度は三村さんが、あのデカイ身体をベッド上に揺すりながら喜ぶ。また三村さんが云うとオバサンが喜ぶ。次にオバサンが……書いていては限がない。要するにこの2人の仲の良さというものがこれを以て察しが付く。因みに三村さんのベッドを見よ、毎日暴れるものだからペッコリと凹んでしまっているではないか。

 三村さんのベッドの凹みは、彼が非常な重量の持ち主であることに由来している。73キロという身体は、この病院ではそうザラに居ない。まして6階に限れば森川という高校生が75キロあるのみで、70キロ台はこの2人だけである。しかし、数か月前であれば大上慎吾もこの仲間に入れるべき筈だった。

 

(七)

現在、大上慎吾は63キロまで減っている。どうしてそんなに減量したか、 (続く)