呟㊷「不必要な『を』の濫用」 | 獏井獏山のブログ

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・2~3日前のテレビで気象予報士が「〇〇地域では低気圧が発達しています。」と云ったのを聞いて俺はウンザリした。「を」の使い方が文法的には正確ではない。上記の場合、正しくは「…低気圧が発達しています。」だろう。「を」を付ける必要はない。

・しかし、よく考えると予報士だけを責めることは出来ないようだ。偉そうに身を反らせている政府高官もチョクチョクそんな使い方をしているのを思い出した。例えば「エネルギーサイクルの一環として原発再稼働を推進したい云々…」とか「…次の選挙でも勝って一強体制を維持したい…」など。この他でも不要な「付き言葉」を吐くのを何度も聞いた。

・「発達」や「推進」や「維持」などは「状況を表す言葉」である。「○○が」とか「○○を」とか「○○に」等の表現の次にくる「状況を表す言葉」の後に「」を付ける必要はない。例示すると「低気圧が発達している」「再稼働を推進する」「体制を維持する」「期間を延長する」「授業を短縮する」「台風が通過する」「元気を回復する」等々も同じだ。まだまだ挙げれば幾らでもある。

・この「付言葉」を流行らせるきっかけになったのは二昔も前の首相、竹下昇さんだったように記憶する。同氏が何度も使った当時、俺は「余計な「」を付けるなぁ」と思い、耳障りな話し方が気に食わなかったが、同氏が政界を去ってのち暫くは「付言葉」が聞こえなくなったので、これは彼独特の言い回しに過ぎなかったと理解し、まさか真似する者が出てくるとは思わなかった。年を経てのち真似し始めたのは誰だったかはよく分からないが、いつの間にか複数の政府高官が使う場面に遭遇して唖然とした。何せ当時の首相と云えば今と違って「品格を備えた偉い人」というイメージがあったから今になって真似をする者が増えたのではないかと思う。何か、このような「」の使い方をすれば少しは人の目に偉いと映ずる、品位が上がったように見える、と錯覚しているのではないか。…兎に角、テレビで記者会見、定例記者発表をする政府高官が頻繁に使うのを最近よく見かける。矢張り耳障りだ。

・では、「」を付けるべき言葉にはどんなものがあるかというと、例えば人が起こす「行動を表す」場合だ。幾らでもあるが,卑近な用例をあげると「○○と対局をする」「公衆の前で演説をする」「皆と一緒に体操をする」「奴と喧嘩をした」「誰彼と握手をした」などがある。(敢えて付け加えると、このような「を」を付けて然るべき場合でも「を」を付けない云い方が近頃よく見られる。「…喧嘩した」「握手した」のように。厳密にはこれは間違い。ただ、話し言葉としてはあり得るかも…