「秋」(51~72句)
51開拓の 村 寝静まり 宵の月
52屏風稲架 福井平野の 長き雨
53藁野火の 煙ここだに 夕暮れる
54子の声と 地蔵盆なる 空明り
55地蔵盆 供物のお握り 貰いけり
56岩山の 盛り上がる辺に 散る紅葉
57友の家の 庭に二本 芙蓉咲く
58手に捕られ ジジと二声 秋の蝉
59秋蝉の 鳴き止む窓と なりにけり
60白鳥の 静かに解夏の 池面暮れ
61ライスセンター 脇の大木 一葉散る
62飛行雲 ややに ふやけし 秋うらら
63冷やかや 車窓に 展けゆく 湖畔
64灯火親し 窓に風雨を 聞きつつも
65父母の 恙なくあり 小鳥来る
66一列の 金風の尾根 進むなり
67よく喋る 父の背中に 銀杏散る
68大伽藍 脇の大木 もみじ散る
69脅し銃 鳴るに首上げ 試歩の人
70子が放つ 麦藁帽や 秋立つ日
71蜩や ビル森閑と なりゆけり
72古店や 売らるべくある 秋扇