旧司平成9年度民法第1問(ランクB+、難易度B+) | 予備校派のための司法試験・予備試験塾 KLOライセンス

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1 小問1について
(1)Eは競落した乙建物の所有権に基づき、Cに対し、妨害排除請求としての建物収去土地明渡請求をすることができる。
   なぜなら、Cの賃借権は、Bの抵当権設定登記後に取得したものであるから、387条1項により、Aの承諾とその旨の登記がなければ競落人たるEに対抗することはできないからである。
(2)カーポートについて
   カーポートがC所有であればEはCに対し、カーポートの収去請求をしたいと考えられる。では、カーポートの所有権はEとCのいずれに帰属するか。カーポートは甲土地に「付合」(242条)し、E所有となるのではないか。
   この点、「付合」とは、動産が不動産に結合して分離復旧が社会通念上不可能であるか、または、分離できても社会経済的にみて著しく不利益となる場合をいう。
   本問カーポートは、屋根と支柱だけからなるものの、コンクリートで土地に固定されており、これを土地から分離するには工事が必要となる。また、カーポートは経済的価値があるものであるから、そのまま存置させることは甲土地の所有者Eにとっても利益があるといえる。
   とすれば、カーポートを甲土地から分離することは社会経済上著しく不利益といえる。
   よって、カーポートは甲土地に「付合」しているといえ、所有権はEにある。
   以上から、Eはカーポートの収去請求をすることはできない一方で、カーポートを自己の物として使用することができる。
2 小問2について
(1)乙建物について
   Aは乙建物の競落人Fに対して、甲土地所有権に基づく妨害排除請求権としての建物収去土地明渡請求をすることはできるか。ここで、Fに土地賃借権があり、それをAに対抗できる場合にはかかる請求は認められないことになる。
ア では、Fに甲土地賃借権はあるといえるか。Dの抵当権の効力がCの土地賃借権にも及んでいるかが問題となる。
   この点、抵当権の効力は「付加して一体となっている物」(370条)にも及ぶところ、抵当権の価値権としての性質に鑑み、「付加して一体となっている物」とは経済的価値的一体物をいうと解する。
   そして、経済的価値的に一体となっている権利にも同条の類推適用により抵当権の効力が及ぶと解する。
   本問土地賃借権は、乙建物の所有権の従たる権利であり、継続的に主たる権利の利用に役立つものであつから乙建物の所有権と価値的に一体となっているといえ、同条の類推適用により、土地賃借権に抵当権の効力が及ぶ。
 よって、Fは甲土地賃借権を取得する。
 イ としても、FはAの承諾が無い限り、当該賃借権をAに対抗することはできない(612条1項)。
   もっとも、上記承諾に代わる裁判所の許可を得れば、Aに賃借権を対抗することができる。
 ウ よって、Fが承諾に代わる裁判所の許可を得ない限り、AはFに対し、建物収去土地明渡請求をすることができる。
(2)カーポートについて
   Fは、甲建物に設置されているカーポートを使用することはできるか。抵当権の効力がカーポートにも及ぶか。
   この点、小問1で述べたとおり、カーポートは土地に付合しているので「付加して一体となっている物」にあたる。
   よって、抵当権の効力はカーポートにも及ぶ。
   以上から、Fはカーポートを使用することができる。
                          以上