軍事情勢にも詳しい経済評論家、長谷川慶太郎氏の注目作である。
中国は現在、シャドーバンキングのデフォルト懸念によりバブル崩壊の危機にあるという。中国の正規銀行は政府系企業にしか融資しないため、民間企業はシャドーバンキングから高利融資を受けている。在庫調整などの考えがない現地企業は大量在庫を抱え倒産の危機にある。人民銀行は金詰まりのためフォローしきれず、シャドーバンキングの正規銀行への転換を一部で認め、他は切り捨てる選択がなされたようだ。
文民統制を失った人民解放軍はシャドーバンキングと繋がりが強く、習近平はその処理によって再び主導権を掌握したようだ。特に北朝鮮とつながりの強い瀋陽郡区の人民解放軍では特にその傾向が強く、瀋陽郡区とのパイプ役だった北朝鮮の張成沢が粛清されたのはそのことと関係があるという。
もはや危機的な経済の中国は北朝鮮を抱えていくことはできなくなり、早晩手放すことになる。北朝鮮は崩壊し韓国との統合しかない。経済成長が見込めない中国ではバブル崩壊により国内が大混乱となり、改革開放路線に抵抗する解放軍が勢力を伸ばし、中国本土は分裂。内戦に突入すると見られる。長谷川氏は地域経済との結び付きが強い人民解放軍の七大軍区に七つの共和国が独立すると見、その後連邦制を目指すと予測している。
内乱状態になると職と家を奪われ悲惨な状況に置かれる庶民。政府による救済は一切なく暴徒化すれば日本人を含む現地外国人の安全を守ることは難しい。アメリカは既にそのような事態を想定し、現地滞在者を1万人に抑えるとともに(日本人は10万人)中国へ無補給で往復できるオスプレイを沖縄に配備し、いつでも救助に迎えるように準備している。
混乱から内戦、やがて独立とさまざまな過程を取る中で、中国は日本に資本提供を求めてきても、泥沼化する懸念があるため日本は一切関わってはならないと著者は言っています。
著者の見識の深さ、高さには感服します。