ハダカイワシ科キララハダカ属の1種の仔魚 | ウッカリカサゴのブログ

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ススキハダカ亜科 Myctophinae キララハダカ属の1種 9.1 mm NL

東京大学海洋研究所 淡青丸 KT-80-02航海 相模湾 St.S3  1980-02-21

 

日本近海に分布するキララハダカ属はキララハダカ Loweina terminata のみが知られている。

 

キララハダカ[キララハダカ属]Loweina terminata の鰭条数

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 D 11~13; A 15~17; P1 9~12   検索三版 (2013)
 D 11~13; A 15~17; P1 15~16    Evseenko et al.(1998)

 D 8 ;        A 11 ;     P1 17       本標本

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この仔魚は,Evseenko et al. (1998) が Loweina ?terminata として記載した仔魚と,背鰭基底始部に1個の黒色素胞が見られない点を除いて,形態的特徴がほぼ一致する。

 

すなわち(佐々・小澤, 2014: 稚魚図鑑第二版より),

 ・頭部は大きく,やや幅広の楕円眼を持つ。
 ・眼下にコロイド組織を欠く。
 ・消化管は長く,直腸は外腸となる。
 ・胸鰭は下位で,扇状に大きく開き,最下位の鰭条は大きく伸長する。
 ・背鰭と臀鰭の位置はかなり後位。
 ・前脳部と中脳部の境界に帯状の色素胞が認められ,両眼窩付近まで伸びる。
 ・胸鰭基底(1個),肛門上,脂鰭形成位置(1個)および臀鰭基底後端(1個)に中型色素胞が出現する。

 

しかしながら,Evseenko et al. (1998) の記載と胸鰭条数はとほぼ一致するものの,背鰭軟条数および臀鰭軟条数が一致しない。背・臀鰭の鰭条が分化途中である可能性が考えられるが,基底の形状からそれはなさそうな感じがする。

 

ところで,検索三版 (2013) で記載されているキララハダカの胸鰭条数がかなり少ない。「分類学的付記と文献」 (p.1860) では次のように説明されている。

 

川口(1986)によって和名を提唱されたが,日本近海からのはっきりとした記録は確認されていなかった。 本書の図ならびに記述は,駿河湾産のものと,銚子沖から得られたものとの2個体に基づいている。』 川口弘一(1986).日本産ハダカイワシ目魚類の検索. UO, 36: 15-45.


以上の点から,相模湾で採集された本仔魚はキララハダカ属の1種であることは間違いないが,キララハダカそのものであるかについては,すっきりしない。

 

●参照

Evseenko, S.A., John, H.-C., Klenz, B., and Zelck, C. (1998), Variability in larvae of genus Loweina, with descriptions of larval Loweina interrupta (Tåning, 1928) and Loweina ?terminata Bekker, 1964 (Teleostei, Myctophidae), Mitt. Hamb. Zool. Mus. Inst., no. 95, pp. 179–196.

 

ResearchGateからPDFをダウンロードできる。

https://www.researchgate.net/publication/270280948

 

↑Evseenko et al. (1998) の図10から Loweina ?terminata のより若い個体の2図を抜粋

 

Moser H. G. and E. H. Ahlstrom (1970) Development of lanternfishes (family Myctophidae) in the California current. pt. 1. Species with narrow-eyed larvae. 
Bulletin of the Los Angeles County Museum of Natural History: science, no. 7. 145 pp.