時論公論 「閉塞感強める世界経済」 |   心のサプリ (絵のある生活) 

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日本で、IMF・国際通貨基金と、世界銀行の総会など、様々な国際会議。
最大の懸案は、閉塞感を強めている世界経済をどう活性化するかです。
そこで、今日は、世界経済の現状と課題を考えます。


(異例の開催)
IMFと世界銀行の総会が日本で開かれるのは、今回が2回目です。
この総会は、普通は3年毎に途上国で開催され、当初はエジプトの予定でしたが、政情不安から、日本が、肩代わりする形となりました。















IMFは世界経済を運営する要で、手持ちの資金で、行き詰まった国を支援します。
一方、世界銀行は、途上国に、低い金利でお金を貸す、援助機関です。
日本も、東海道新幹線や東名高速道路を作った時に、世界銀行からお金を借りました。
前回の総会は1964年、50年ほど前の事で、この年には東京オリンピックが開かれ、東海道新幹線も開通して、若くて元気の良い日本を世界に印象づけました。
その後、日本は一時は世界第2位の経済大国として君臨しましたが、今や勢いを失ってしまいました。
今回の総会のスローガンは「世界経済の安定と希望ある再出発」で、私達も、こうした機会をきっかけに、何とか日本社会や日本経済の再生・復活の糸口を掴みたいところです。
 
(閉塞感を強める世界経済)
そこで、私達を取り巻く経済状況です。















こちらのグラフは、世界経済の実質GDPです。
2004年から5%前後の高い成長で繁栄を謳歌しましたが、この過程でバブルとなり、バブルが崩壊してリーマンショックの後、2009年にはマイナス成長となりました。
その後どん底から立ち上がり、そのまま成長軌道に戻ると期待したのに、実際にはじりじり減速しており、IMFは今年の経済見通しを、下方修正することにしています。
 
(閉塞感の原因)
単に勢いが衰えただけなら、景気の循環でやがて元気になることが期待されますが、
問題は、世界経済という自動車を動かしてきた主な部品が、軒並み具合が悪くなっている事です。
リーマンショックの後、各国の政府は積極的に財政を出動し、思い切った金融緩和を進め、そして、中国に象徴される新興国が牽引車となって、世界経済を立て直しました。
ところが、今、この3つが軒並み効かなくなっている為、先行きの展望が開けません。しかも、アメリカや中国などで、選挙や指導者の交代により政治的な空白が生まれて、有効な手を打つことが出来ないことも重なって、閉塞感が強まっています。
 
(財政の限界)
まず、財政の問題です。
私達が膨大な借金に悩み、ヨーロッパでは、ギリシャやスペインの財政問題が金融問題に広がって、世界経済の火薬庫のような状態です。
更に、懸念されるのがアメリカの、「財政の崖」と呼ばれる問題です。
アメリカの経済も低調で、崖際に追い詰められているような状況です。
こうした中で、かつて行われた大がかりな「ブッシュ減税」の一部が年末で打ち切られ、更に来年から、財政再建のために法律で強制的に予算が削減される事になっています。
併せて5200億ドルGDPの3%にもなり、これだけきつく財政を引き締めたら経済は持たず、崖から突き落とされる恐れがあるという訳です
減税について、共和党は延長する様主張しているのに対し、オバマ大統領は、「金持ち優遇だ」と予定通り打ち切る構えで、大統領選が進む中で、双方の対立は深まるばかりです。
赤字を抱える中で、景気対策として更に財政支出を増やすと、国債の金利が上がって経済の首を絞める恐れがあるだけに、上手い解決方法が無いのが現実です。
 
(金融緩和の限界)
次に、金融政策です。
リーマンショックの後、各国とも積極的な金融緩和を進め日米欧とも、ほとんど金利ゼロ、つまりタダ同然でお金を借りる事が出来る状況です。
こうした中で、アメリカの中央銀行FRBは、先月、通称QE3、つまり金融市場に資金を潤沢に提供する政策の、第3弾を打ち出しました。
バーナンキ議長はこれまでの金融緩和でGDPを3%押し上げたと自画自賛しています。
しかし、FRBの対策で、アメリカの景気が回復したと見る人は多くないでしょう。
問題は、幾らただで借りる事が出来ると言っても、現実には借り手が出てこない事です。
今回、新たに、「雇用情勢が改善するまで金融緩和を強化する」という、なりふり構わぬ方針が打ち出され、失業率が5.5%になるまで緩和するという発言も出ています。
これを評価する向きもありますが、失業問題は社会や経済構造の変化に対応しきれない事も原因で、これで雇用問題が解決できるとは思えません。



















(弊害)
一方、金融緩和には副作用もあります。
金融市場でジャブジャブに溢れているお金を、原油等に投資した結果、一次産品が値上がりし、インフレの種をあちこちに撒いています。
リーマンショックの後、食料品の値上げに悲鳴を上げて、世界各地の途上国で暴動が起きたのは記憶に新しいところです。
今回も、途上国から、こうした懸念が示される事でしょう
財政を出動する余力が無い中で、各国の政府が、中央銀行に頼りたくなるのは判りますが、金融政策で出来ることは限られており、過大な期待、負担は禁物です。
 
(中国の存在)
3つめの問題は、新興国、特に中国経済の行方です。
リーマンショックの後、4兆元・60兆円という膨大な財政支出を投じて経済を再建し旺盛な消費から輸入を進めて、世界経済を牽引しました。
しかし、その中国経済も陰りを見せ、2010年初めに、GDPが年率12%と高い成長を示した後、じりじりと減速しています。
今年の第2四半期は年率7.6%まで下がり、政府の目標の7.5%が達成できるかどうか、微妙な情勢です。
ヨーロッパなど世界の景気が悪化したことに加え、国内で不動産バブルを招いて地価が急騰した為、引き締め政策をとったからです。
 
(構造問題)
こうした中で、中国政府も景気対策に乗り出しています。
まず、金融政策を、引き締めから緩和に転じました。
しかし、不動産バブルを作り出した反省から、緩和のペースはゆっくりと、慎重です。
財政面でも、出動する構えを見せてはいますが、今のところ大がかりな支出をする動きはありません。
地方の政府等は財政が苦しいからで、政府も財政政策については、新しい指導者に委ねようとしているのでしょう。
関係者が一番気にしているのは、中国がリーマンショックの後、膨大な投資で需要を超えた過剰な生産設備を抱えてしまったことです。
例えば、鉄鋼は膨大な在庫をさばくために、安値で積極的に輸出を進めているため、競合する日本など、外国のメーカーが苦しんでいます。
要するに、中国経済は外需依存の為、世界経済の低迷に足をすくわれ、内需依存に転換しようとしたものの、まだまだ国民の購買力が弱くて転換が進まないという形です。
こうしたことから、中国が短期間に、元のような元気を取り戻す事は期待出来そうにありません。
 
(保護主義)
ここまで見てきたように、世界経済が今の状況から抜け出すのは容易ではありません。
昔の様に、経済大国のどこかが頑張って世界を引っ張るという事は期待出来ません。
財政政策や金融政策がままならない以上、それぞれの国が、バブル崩壊で失った経済の基礎体力を回復する為、構造改革を進めるしかありません。
こうした中で、私が、密かに期待をしているのがアメリカです。
国民が浪費生活を改めて借金をこつこつ返した結果、借金はかなり減りました。
住宅の価格も、ようやく底打ちしています。
株価も堅調で、いわゆる資産効果から、自動車が売れています。
また、輸出も頑張って、内需依存から外需依存への転換もゆっくりですが着実に進み始めています。
先程の「財政の崖」の問題を上手く解決したら、自律的に経済が立ち直る可能性も見えてきます。
楽観は許しませんが、こうした展開になれば、私達にも励ましになるでしょう。
 
(まとめ)
最後に、一連の国際会議に戻ります。
IMFや世界銀行は、戦後の繁栄を支えてきましたが、先進国が作った組織だけに、新興国や途上国の声を反映し切れていません。
今や、新興国の存在を抜きに、世界経済は語れません。
途上国から経済大国になった日本は、この経験を生かし、世界経済再生の対策を纏めるに当たって、双方の仲立ち、橋渡しをして、存在感を示して貰いたいものです。
 
(山田伸二 解説委員)