写真家、篠山紀信さん(71)の個展「篠山紀信展 写真力」が東京・西新宿の東京オペラシティアートギャラリーで開かれている。半世紀以上、写真界の最前線を走り続けているが、発表は雑誌や写真集などの印刷媒体が主体だった。「美術館なんて作品の死体置き場」とまで言っていた巨匠が、なぜ翻意したのか。「これはもう、見てもらわなきゃわかんないんだけどさ…」。キーワードは「写真力と空間力の対決」だという。(篠原知存)
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まず、タイトルの「写真力」について。「ぼくの仕事の中から、写真のチカラがみなぎる作品ばかりを集めた」。脳裏に強く焼き付いてしまうインパクトを持った作品のことだという。そういう「力」の源泉は何なのか、を考えつつ観賞するのがおすすめ。
非日常の場所で
【写真力その1】会場に入ると、まず写真の大きさに目を奪われるはずだ。3メートルとか5メートルとか、常識外れなサイズの作品が並ぶ。肖像写真が等身大を超えている。「写真集と同じ(サイズ)じゃ意味がない。それなら家で見るほうがいい。非日常の空間だからさ。大きくすることで写真に包まれるとか、写真の中に入っていけるような感じになった」