左脳にたくわえられる日々の記憶。
右脳にたくわえられるという祖先からの過去記憶。
緊張の時間からリラックスした睡眠の時間までの途中の少しの時間、いわばアルファー波の時間帯。
だれにもじゃまされない湯たんぽタイム。
雪かき筋肉痛と雪中散歩でくたくたになった足をぬくぬくと暖める。
うつらうつら。
しずかなクラシックを聞きながら心の井戸のなかに深く沈潜していく。
深くなればなるほど過去記憶は新鮮で明確になってくる。
幼稚園の佐藤先生。やさしくてヘップバーンみたいなスカートをはいていた。よくその中に入ろうとしておこられたものだ。
自宅から幼稚園までの地面の記憶。
晴れた日。たんぽぽが、ずーと続いている。チューリップの赤に、たんぽぽの黄。
木材屋の木の匂い。
かくれんぼにぴったりの隠れ場所が木と木の間にできる。
ここもよくおこられた。
蝉の泣き声。
放し飼いの黒犬。
ふと匂う便所の匂い。
空からふってくる光の束。
靴をはきかえる時のみんなとの会話やざわめきや遊び声や泣き声。
走ると気持ちよくすべる靴下と廊下と教室のフロア。
ただひたすら夢中で遊んだ時間の記憶。