「それは、女の愛と芸術上の創造でなければならなかった 」   モラヴィア |   心のサプリ (絵のある生活) 

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画家KIYOTOの病的記録・備忘録ブログ
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梶井基次郎。檸檬。城のある町にて。どうしてこんなに頭の良い人が不吉な魂という言葉に達するのか。文学の不幸は、扱うものが危険であればあるほど、爆発解体のスリルと技能が、高まるという点がポイントなのであり、道徳を扱うのが文学ではないからだろう。犯罪を犯す人の90%はテレビを見ていても「無職」の人であることは皆気がついている。どんなに辛い職場であろうが、眠たい目をこすりながら、満員電車にゆられるということは、幸福なる犯罪防止のひとつの鍵かもしれない。檸檬のヒロインはかくして、不吉な魂と暇のなせるわざにて、檸檬を丸善に置き、それが爆発したらどんなにおもしかろう、という革マル派かなにかが、喜びそうな無責任なる結末で短編は終わる。文体はやはり好きな部類にはいる。

モラビィアの「夫婦の愛」、自殺の救済手段を私はしょっちゅう考え、そしてすぐに悟ったのは、私を救いうるものは二つしかないものだと、
それは、女の愛と芸術上の創造でなければならなかった、と。

私は、頁をひきさき、女に合わない口実をみつけだそうとした。そういう企ての中で、私の青春は過ぎさった。

「僕はその間、じっと口を閉ざし、何も語らなかった。そんなふうにして、僕は20代最後の年を迎えた」
村上春樹 「風の歌を聴け」