須賀の後を追い、隣の車両に移った。

真後ろに居る俺には全く須賀は気付いていない。

ポケットの中には、また手紙が有るのだろうか?


カーブで揺れる電車の中、微かにポケットの中で握られた拳から何か見えた。

明らかに手紙には見えなかったが、それが何かかはハッキリしなかった。

須賀と依頼人の距離がどんどん縮まって行く。

依頼人は吊り革に掴まり外を見ていて、須賀の行動には気付いていない。

隣に居る調査員は万が一の事があったら、依頼人をかばい盾になる様に伝えてある。
その為、防刃ベストを着させナイフや刃物から腕や手を守る様にケプラー素材の長い手袋もさせてある。

須賀の行動も隣の車両に居る別の調査員から無線で伝えられている。

須賀は依頼人の真後ろについた。

その瞬間、須賀はポケットから出した手を高く掲げた。
須賀はアパートから徒歩で駅に向かい電車に乗った。

依頼人がいつも使う駅に行き、改札口付近で立ち止まり依頼人が来るのを待ち構えている様子だ。

須賀の目は異様にギラついている。
時折、口をモゴモゴさせ独り言を言っている。

改札口から入る依頼人を発見した須賀は、彼女が並ぶ列の隣に並んだ。

須賀の目線は依頼人一点のみを見続けている。

電車が到着し降りる人と乗る人がごった返す中、須賀が居る車両に乗る事が出来た。

須賀は電車の連結部分まで進み、彼女を見ている。
そしてポケットの中に手を入れたまま少しずつ彼女に近づいて行った。

この先はカーブが多く揺れるのを計算しての行動かも知れない。
駅に着くとホームのベンチで震える依頼人を見つけた。

俺「加藤さん大丈夫ですか?」

加藤「これ・・・。」

一枚のメモらしき紙を渡された。

〈いつもあなたを見てます。〉

依頼人の上着のポケットの中に入っていたのだ。
家を出る時にはポケットには何も入れていない。
たぶん通勤中に入れられた物と思われる。

依頼人を家に連れて行きまずは落ち着くまで待ち、今までストーカー被害に関して重点を置き過ぎていた為違う角度から調べる事にした。

被害に関する事以外に手掛かりが無いか、色々と依頼人から聞き出す事にした。
依頼人の話から犯人に繋がる糸口が見えた。

依頼人は不要になった外付けのハードディスクやメモリースティックなどを、オークションサイトに出品した事があった。
またメールや書き込みの分析結果ともに、その落札者と一致した。

出品の際にはデータをフォーマットしていたと依頼人は言っていたが、犯人は復元ソフトを使いデータを全て復元。

そのデータの中には就職活動に使った履歴書、仕事で使用していた書類や顧客データ、年賀状用データなどまたデジカメで撮った写真などの画像データも眠っていた。

落札した際の発送先の住所は判明している。

翌朝犯人の家を張り込みした。
朝方犯人と思われる男性、須賀(仮名)がアパートから出て来た。
見た目は20代前半、スーツを来ているが手ぶらで階段を降りてきた。

依頼人には平常心を保ち、いつも通りに通勤する様にお願いした。
万が一の事を考え、女性の調査員を依頼人に張りつかせてある。