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最近、全くペダルを漕ぐことなく走っている“自転車様の物”を見ました。いわゆる電動アシストのママチャリよりもがっちりした車体でタイヤも太く、ペダルは付いているものの全くペダルを踏むことなくゆっくりと加速しながら右折していきました。原付自転車や自動二輪に乗っていた者からみれば、その動きから動力付きのものであることは容易に分かりましたが、ナンバープレートは付いていませんでした。
1.原動機付自転車が電動アシスト自転車と一緒に通販で売られている。
思い立ってアマゾンで「電動自転車」で検索すると、バラバラと文字通りの「電動の自転車」が出て来ました。輸入品のようです。しかし、電動アシスト自転車と並んで販売されていて、それが日本の道路交通法の「原動機付自転車」にあたることは説明されていません。まして、登録(ナーバープレート)が必要、自賠責保険の付保義務、ヘルメット着用義務、保安基準などについての説明はまったくなく、利用時の快適さが強調されているのみでした。
辛うじて質問覧に「免許証がいらないのですか」という趣旨の質問のあるページがあり、それに対して免許がいることが回答されていましたが、まさに野放し状態と言えるでしょう。
2.警察庁・警視庁は何をしているんだろう。
……と思って警察庁のサイトを覗いてみました。
「自転車の安全利用の促進」というページに次の三点の記事がありましたが、最新のものが2017年(平成29年)のもので、その後の警察庁の動きについての記事は見当たりませんでした。
○「ペダル付きの原動機付自転車」の取扱いについて(平成17年3月付 警察庁交通局)
○道路交通法の基準に適合しない「電動アシスト自転車」と称する製品について(平成28年10月27日付 交通局交通企画課広報資料)
○道路交通法の基準に適合しない「電動アシスト自転車」と称する製品について(平成29年6月29日 交通局交通企画課広報資料)
更に警視庁のサイトを見て次のようなチラシを見付けました。
「平成4年春」の制作という事ですので、マンションの掲示板にでも貼らせて貰おうかと思って警視庁に電話で問い合わせたところ、配布用の印刷物としては用意をしていないとのことです。各署で必要に応じてA4でプリントアウトして使用する想定のようです。そこで所轄の警察署に電話したところ、A3に拡大印刷したものを送ってもらえることになりました。どんな立派なチラシを作っても、住民に届かなければ意味がないので、それぞれの警察署で町会やマンションの掲示板に貼ることをお願いするなど住民に周知するための努力をして欲しいと思うのです。
3.早急な対策が必要ではないか。
警視庁のチラシを見て、このチラシが“購入者向け”に作られていることが気になりました。現在、オートバイや原動機付自転車は、その専門店で売られているようですが、原動機付自転車にあたる電動自転車も、同じように販売店から購入者に引き渡す時点で、少なくともナンバープレートが付けられ、自賠責保険も付保され、保安基準を満たす状態であるべきだと思いますが、アマゾンのサイトを見る限り、アマゾンによっても販売業者によってもそのような対応はされていないようです。製品によっては米国の会社から購入者宛に直送されるものもありました。
そればかりか、アマゾンのサイトでは他の電動アシスト自転車と同列に防犯登録や自転車のための賠償責任保険が勧められており、運転免許をもっていない普通の人はまったく自転車と同じ扱いでよいと思い込むのではないかと思います。やがてこのような「電動の原動機付自転車」が違法な状態なまま歩道を我が物顔で走るのではないかと思うと……憂鬱になります。
まして、これから電動キックボード、無人の配送ロボットなどは歩道を走るようになります。まさに歩道が乱戦状態になるのでしょう。他方で自動車の快適な走行ばかりが優先されているように感じます。
歩道が歩行者のものであるという原点が忘れられています。この政府、何処まで弱者にしわ寄せすれば済むのでしょう。
道路交通法
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
十 原動機付自転車 内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、軽車両、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のものをいう。
道路交通法施行規則
(原動機付自転車の総排気量等の大きさ)
第1条の2 法第2条第1項第10号の内閣府令で定める大きさは、二輪のもの及び内閣総理大臣が指定する三輪以上のものにあつては、総排気量については0.050リットル、定格出力については0.60キロワットとし、その他のものにあつては、総排気量については0.020リットル、定格出力について0.25キロワットとする。
道路運送車両法施行規則
(原動機付自転車の範囲及び種別)
第1条 道路運送車両法(昭和26年法律第185号。以下「法」という。)第2条第3項の総排気量又は定格出力は、左のとおりとする。
一 内燃機関を原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その総排気量は0.0125リツトル以下、その他のものにあつては0.050リツトル以下
二 内燃機関以外のものを原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その定格出力は1.00キロワツト以下、その他のものにあつては0.60キロワツト以下
2 前項に規定する総排気量又は定格出力を有する原動機付自転車のうち、総排気量が0.050リツトル以下又は定格出力が0.60キロワツト以下のものを第一種原動機付自転車とし、その他のものを第二種原動機付自転車とする。