派遣法施行から30年 (2) | 野良猫の目

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~本当は寝ていたい~

 雇均法は、派遣法と同じ昭和61年(1986年)に施行された。

 

 当時は、母性保護のために女性労働者の深夜労働の禁止、長時間残業の禁止など厳しい規制があった。雇均法の施行は理由のない男女差別を禁止する一方で、「男女平等」の下にこれらの規制を緩和しようという一面もあった。


 このころは、女子の四大の進学率が向上し始めた時期だった。職場にも四大の卒業生が採用され始めたがまだ珍しい存在で、その言動は良い意味でも悪い意味でも周囲の注目を浴びたものだ。職場では、四大卒の女子社員の「残業規制のために仕事の達成感が得られないことがある。男性並みに残業をさせろ。」と言う声が高らかに響く中で、短大卒の女子社員は黙ってうつむくばかりだった。


 当時はバブル経済前夜とも言える時期であり、どの職場も人手不足で猫の手も借りたい状況だった。当時の男どもはこのような四大卒女子社員の発言を内心歓迎していた面もあったのだ。この姿を見て、「今の男どもには期待できない。女性が男と同じところまで落ちて、そこから一緒に立ち上がらなければ、この問題は改善できない。」と確信した。


 その後女性労働者の労働規制は緩和の一途をたどり、今は妊産婦に関する規制だけになってしまった。母性は、妊娠したり乳児を育てる間だけに保護すれば良いものではないと思う。医学の知識は全くないので間違っているかもしれないが、母性は大人の女性に遍く備わっているものであり、未婚女性であっても将来の母として母性を保護すべき対象だと考えている。
 

 

 数ヶ月前のテレビ番組で、男性が家庭の仕事に費やす時間を外国のデータと比較するなどして、いかに日本の男性が家事に時間を注いでいないかを強調する論調を展開していた。しかし、そこには、労働時間の国際比較は全くなかった。その後、ウェブサイトを閲覧するなどして情報を拾ってみたら、どうも日本の男性はOECDの中では一番労働時間が長いらしい。これでは仕事に疲弊し家事を担える状態ではないのだろう。
 

  女性の労働時間の規制緩和、派遣法の改悪により、今は、男性も女性も“サービス残業”、“名ばかり管理職”、“派遣切り”、そして派遣法の改悪などにより、労働者としての権利はもとより人間としての生存権まで脅かされているドンゾコの状態だと思う。悪い意味で男性と女性が同じ状態になったのだ。


 いまこそ、女性と男性が一緒になって、雇用の安定、労働時間の緩和、夫を職場から家庭に引き戻すための運動=お父ちゃんを家に帰せ=を展開しなければならないときだと思う。