まず、下の二つの文を読み比べて欲しい。
A:日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組み
B:米国と日本の軍事力をより一体化するための枠組み
上の文は、外務省のサイトで公表されている安倍首相が4月29日に行った米国連邦議会上下両院合同会議で演説(英文)の一節を翻訳したもの、上のAは外務省のサイトで公表されている翻訳、下のBは野良猫が翻訳したものだ。
安倍首相の演説を「翻訳した」ということに違和感を感じる方がいるかもしれないが、安倍首相は米国議会で英語で演説したのだから、正文は英語とみるべきだろう。
正文の英語はこうなっている。
A framework to better put together the forces of the U.S. and Japan.
中高生が使う辞書でも「force」と引けば暴力、武力、軍事力……が出てくるし、「the forces」となれば、軍隊、軍、部隊…と出てくる。まして、この一文は、ケリー、カーター、岸田及び中谷が協議した結果として書かれていることを考えれば、「the forces」は軍隊あるいは軍事力・戦力以外の解釈は出てきようがない。
これを「日米がそのもてる力を…」としているところは、下種の勘ぐりだが、「日米の軍事力の一体化」を曖昧にしようとして意図的に誤訳したものではないだろうか。安倍首相は最近テレビで放映された国会中継でも、「日米のもてる力」ということばを使っていた。「一体化された日米の軍事力」と言わずにだ。
外務省のサイトで公表されているこの“翻訳文”には、随所に英語の内容と一致していないところがある。特に「地域における同盟のミッション(The Alliance:its Mission for the Region)」と題されたこの章での日本語と英語の乖離が多いように感じた。一度、この章だけでも自分で翻訳してみてほしい。同盟の内容がより具体的に把握できる。
全文は次のURLにアップされている。
英語:
http://www.mofa.go.jp/na/na1/us/page4e_000241.html
日本語:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001149.html