ちなみに、アリスティド・ファランクは、女流ピアニスト兼作曲家のルイーズ・ファランクの夫である。ルイーズ・ファランクの旧姓はジャンヌ・ルイーズ・デュモン(Jeanne Louise Dumont)といい、両親ともにフランドル系美術家(彫刻家)の家庭に生まれる。幼少からピアニストのセシル・ソリアにピアノを師事。15歳のときパリ音楽院でアントニーン・レイハに作曲と音楽理論、楽器法を師事。その後フンメルにピアノの薫陶を受け、後年助言を仰いだりもしていた。1821年にフルート奏者で楽譜出版業のアリスティド・ファランクと出会って結婚。1826年に一人娘のヴィクトリーヌを出産。彼女もまた母親同様に職業ピアニストの道を歩んだ。
第2楽章(Adagio con gran espressione)変ロ長調 2/4。表現豊かなアダージョという意味ですが、そのタイトル通り冒頭のアルペジオの4つの和音が幻想的な雰囲気を打ち出していきます。このアルペジオが繰り返されながら転調していき、経過部が短調繋がれているため、聴く者を不安な気持ちにさせていきます。そしてこの楽章のメインの性格ともいえる「ドン・ジョヴァンニ」の序曲のイントロにも出てくる決闘のシーンの音楽にも似た、不安感が上昇していくパッセージが非常に感情に訴えかけてきます。これ、長調と短調を行き来するモーツァルトの音楽とロマン派の情熱が交差した新しい(当時)音楽ですよね。