【DTMクラシック】モーツァルト/祝典劇『羊飼いの王様』,K.208ー序曲 | クラシック音楽とお散歩写真のブログ

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19歳のモーツァルトが描く愛と葛藤。オペラ『羊飼いの王様』K.208 序曲を打ち込みました!
実はこの曲、単独で演奏される機会が少ないけれどワクワクする大好きな曲です。今回はこの知られていないオペラの話を少しだけさせてください。

👑 「祝典劇・セレナータ」とは?

『羊飼いの王様』は、モーツァルトが19歳の時(1775年)に作曲した2幕のオペラ(祝典劇・セレナータ)です。

ではそもそも「祝典劇・セレナータ」って何ぞや って話から。

1. セレナータ(Serenata)/劇的カンタータ

現代で「セレナーデ(夜曲)」というと、恋人の窓辺で歌う愛の歌や、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジキト』のような軽い器楽合奏曲を指すことが多いですが、バロック時代には異なる意味を持っていました。
当時のセレナータは、声楽を含む、大規模な劇的演目でした。

【特徴】

  • 目的: 皇帝や王侯貴族の誕生日、結婚式、即位記念、重要人物の訪問などを祝うために作られます。

  • 内容: 形式はオペラと似ており、アリア(独唱)やレチタティーヴォ(語り)、合唱で構成されます。しかし、内容は一般的にオペラよりも短く、登場人物も少なめです。プロットはギリシャ神話や寓話に基づき、最終的には主役である貴族(主賓)を讃える内容になるのがお決まりでした。

  • 上演形態: 本格的なオペラ劇場ではなく、宮殿の大広間や庭園などで、簡易的な舞台装置や衣装(あるいは舞台セットなしの演奏会形式)で上演されることが多かったようです。「セレナータ(sereno=晴天、の意)」という名が示す通り、もともとは夕暮れ時に屋外で演奏されることを想定していました。

モーツァルトの『羊飼いの王様』の場合: 1775年、ザルツブルクを訪問したマクシミリアン・フランツ大公(マリア・テレジアの末息子)を歓迎するために作曲・上演されました。まさに「特定の慶事のためのセレナータ」です。

2. 祝典劇(Feierliches Spiel / Festa teatrale)

「祝典劇」は、より広い意味で「お祝いのための演劇作品」を指しますが、音楽史においては、セレナータとほぼ同義、あるいはさらに大規模で儀式的な作品(Festa teatrale、またはFeste teatrale)を指すことが多いです。

【特徴】

  • 目的: セレナータと同じく、王室の重大な慶事(特に大規模な結婚式や即位)を祝います。

  • 規模: セレナータが宮廷内の内輪の集まりで演奏されることもあるのに対し、祝典劇(Festa teatrale)は、国家的なイベントとして、豪華絢爛な舞台装置、バレエ(ダンス)、大規模なオーケストラを駆使して、莫大な予算を投じて上演されました。

  • 内容: 寓意的な神話劇が多く、時の統治者の「正義」や「慈愛」を称え、その治世を祝福する政治的なメッセージも含まれていました。

3.オペラとの違いは?

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AIで図面化しました

つまり、『羊飼いの王様』は、オペラのような形をしてはいますが、「大公の訪問をお祝いし、彼を歓迎(賛美)する」という明確な目的のために作られた、プライベートな要素の強い舞台作品であったと言えます。

 

『羊飼いの王様』について

【基本情報】

  • 初演: 1775年4月23日(ザルツブルク)

  • 台本: ピエトロ・メタスタージオ

  • 形式: 2幕14曲(序曲を含む)のセレナータ

  • 主題: 義務と愛の葛藤、そして権力者の寛大さ

この作品は、マリア・テレジア女帝の末子であるマクシミリアン・フランツ大公がザルツブルクを訪問した際の、宮廷での祝賀行事のために作曲されました。大規模なオペラ劇場ではなく、宮廷の一室を劇場に見立てて上演される「セレナータ(演奏会形式のオペラ)」として書かれたため、とてもコンパクトで優雅な作りになっているのが特徴です。

📖 あらすじ:王位か、愛か。

物語の舞台はマケドニア。アレクサンドロス大王(アレッサンドロ)がシドンを占領し、本当の王位継承者である羊飼いの青年・アミンタを見つけ出して王に据えようとします。
大王はアミンタを前王の娘と結婚させようとしますが、アミンタにはすでに「エリーザ」という心に決めた恋人がいました。
王位という「義務」と、エリーザへの「愛」の狭間で深く葛藤するアミンタ。最終的に彼は、すべてを捨ててでもエリーザを選ぼうとします。
そのアミンタの誠実な愛を知ったアレッサンドロ王は深く感動し、寛大な処置を下して本来の恋人同士が結ばれる……という、大団円のストーリーです。

🎻 19歳の天才。その聴きどころと他作品への影響

19歳とはいえ、当時のモーツァルトはすでにヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲の名作を生み出していた時期。大作曲家としての充実した筆致が随所に光っています。
オペラの作曲経験もこの歳にしてたくさん積んでおり、この作品や『偽りの女庭師』K.196あたりになると、登場人物の感情表現や個性が音楽に色濃く反映されるようになります。後期モーツァルトの傑作群にも引けを取らない、素晴らしいアリアが散りばめられています。

有名なアリアと転用
中でも第2幕でアミンタが歌う「あの人を愛するのだ(L'amero, saro costante)」は、ヴァイオリンの独奏(オブリガート)が声楽と美しく絡み合う至高の抒情曲。現在でもソプラノ歌手のコンサートピースとして頻繁に歌われます。
また、第1幕の第3曲のアリアの主題は、同じ1775年の秋に作曲された有名な『ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216』の第1楽章の主題へとそのまま転用されています。モーツァルト自身もこのメロディをとても気に入っていたのでしょうね。

🎵 序曲とその終結部について

さて、今回私がYouTubeにアップした「序曲」についてです。
演奏時間は3分弱と短いですが、ハ長調の溌剌とした、祝典にふさわしい華やかな音楽です。
実はこの序曲、終わりで切れ目なく第1幕の最初のアリア(アミンタのアリア「Intendo, amico rio」)へと続いていくように書かれているため、序曲単体で演奏される機会は滅多にありません。

 

【DTM】モーツァルト/祝典劇・セレナータ『羊飼いの王様』K.208-序曲
Programed by Hummel Note
Daw&Sequencer:DoricoPro
Sounds:NotePerformer
 

序曲を単独で演奏会で取り上げるには?
モーツァルト自身は、これを演奏会で取り上げられるよう、序曲を第1楽章とし、第1幕のアリアを器楽版にして第2楽章とし、終楽章を新たに書き下ろして『交響曲第52番 ハ長調 K.102(K.213c)』として仕立て直しています。

既存の演奏会用結尾版
後世の編集者たちも、この序曲を単独で演奏できるように、末尾に20小節程を書き足して全楽合奏で終わるバージョンを作りました(IMSLPなどの旧モーツァルト全集のスコアで確認できます)。
しかし!この編集された終息部は、原曲の最後のアリアに入る直前の序曲の華やかさがいったん落ち着かせる方向へ導いてくれるホルンとオーボエによる「これから物語が始まるよ~」という予告のフレーズがカットされてしまっているのです。

私の終結部
「あの印象的な予告フレーズをどうしても残したい!」と考えた私は、既存のConcert Endingは使わず、原曲のエンディングの直後に3小節だけの終止和音を付け足し、弱音(ピアノ)のまま静かに終わらせるという可能な限り原曲をいじらない方法にしました。

序曲の最後に現れるホルンとオーボエかけあいの部分を削除したくなかった理由に共感頂ける方はいるかな?  (笑)

 

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