今回制作したのは、W.A.モーツァルトのオラトリオ「救われたベトゥーリア」K.118 より『序曲』 です。
クラシック音楽の中でも少しマニアックな部類に入るかもしれませんが、若き日のモーツァルトの天才ぶりが遺憾なく発揮された、非常にドラマティックでかっこいい楽曲です。
編成はオーボエ2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、弦楽5部。わずか15歳の少年が書いたとは思えないほどの緊張感と、オーケストレーションの妙を味わうことができます。4つのホルンがオーケストラに厚みを与え、トランペットが悲劇的なアクセントとなっています。制作する上では弦楽合奏がやや小規模の編成となるように調整しています。
【Credits】
🎻 オラトリオ「救われたベトゥーリア」とは?
「救われたベトゥーリア(Betulia liberata)」は、モーツァルトが15歳の時(1771年)に作曲した、彼にとって唯一のイタリア語のオラトリオです。
当時のモーツァルトは父レオポルトと共にイタリア旅行をしており、パドヴァで依頼を受けてこの曲を作曲したと言われています(実際に当時演奏されたという記録はなく、幻の初演となってしまったようです)。
物語のベースになっているのは、旧約聖書外典の「ユディト記」。
アッシリアの強大な軍勢に包囲され、絶体絶命の危機に陥ったイスラエルの町ベトゥーリア。そこへ美しく勇敢な未亡人ユディトが現れ、敵の将軍ホロフェルネスの寝首を掻いて町を救う、という非常に劇的なストーリーです。
台本は当時最も権威のあった詩人ピエトロ・メタスタージオによるもので、モーツァルトはこの緊迫感あふれる物語を見事な音楽で彩りました。
🎵 序曲の聴きどころ:劇的な「モーツァルトの短調」
今回公開した「序曲」は、これから始まるドラマの不穏な空気と、最終的な勝利を見事に表現しています。
曲は、モーツァルトが悲劇性や深い感情を表現する際によく用いた「ニ短調(D minor)」で幕を開けます。(のちの交響曲第25番や、オペラ『ドン・ジョヴァンニ』、そして『レクイエム』と同じ調性です!)
全体は、当時のイタリア風序曲の定石である「急ー緩ー急」の3つの部分で構成されています。
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アレグロ(急・ニ短調):
激しく叩きつけるような和音と、吹き荒れるような弦楽器のパッセージ。アッシリア軍に包囲され、恐怖と飢えに苦しむベトゥーリアの町の悲痛な状況が迫ってきます。 -
アンダンテ(緩・ヘ長調):
一転して、穏やかで美しい音楽になります。絶望の中で神に祈る人々の姿や、町を救う決意を固めるユディトの静かなる強さを思わせます。 -
プレスト(急・ニ短調):
元のテンポに戻り悲劇的シーンから最後は輝かしいニ長調へと転じ、駆け抜けるように力強く終わります。これは物語の結末である「ベトゥーリアの解放(救済)」を力強く予見させるものです。
