フンメルの遺作 Op.posth.2 をめぐって ~空想・憶測・妄想~ | クラシック音楽とお散歩写真のブログ

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フンメルの遺作 Op.posth.2 をめぐって ~空想・憶測・妄想~


フンメルの死から2年後、彼の手元に残されていた完成された手稿譜のうち9曲が、1939年に出版されました。出版番号「Op.Posth.」の「Posth」は“posthumous”(遺作)を意味し、「Op.」は“Opus”(作品)の略で、主に出版された作品番号を表しています。

以下が、その遺作群です:YouTubeリンクは私が制作したDTM音源です。

 

  • Op.posth.1 ピアノ協奏曲 ヘ長調(※1825年作曲)
  • Op.posth.2 ヴァイオリン(またはフルート)とピアノのための序奏とドイツ民謡による変奏曲 ヘ長調(※詳細不明)
  • Op.posth.3 3つのスコットランド舞曲によるロンド ト長調(※詳細不明)▶︎YouTubeリンク
  • Op.posth.4(WoO.6) ピアノ四重奏のための序奏とアレグロ ト長調(※1811年作曲)
  • Op.posth.5 ピアノ連弾のための序奏とロンド 変ホ長調(※詳細不明)▶︎YouTubeリンク
  • Op.posth.6 カプリッチョ 変ホ短調(※詳細不明)▶︎YouTubeリンク
  • Op.posth.7 オルガンのための2つの前奏曲とフーガ(※詳細不明)▶︎YouTubeリンク
  • Op.posth.8 オルガンのためのリチェルカーレ ト長調(※詳細不明)
  • Op.posth.9 6つのピアノ小品(2つのロンド、2つのカプリース、2つの即興曲)(※1825年頃作曲)▶︎YouTubeリンク

 


 

 今回はその中から Op.posth.2「ヴァイオリン(またはフルート)とピアノのための序奏とドイツ民謡による変奏曲 ヘ長調」 を取り上げ、いつものように Dorico にて譜面を打ち込み、音源には GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA 5 のヴァイオリンとピアノを使用しました。リバーブやミックスもすべてDorico内で完結しています。

【DTM】J.N.フンメル/ヴァイオリンとピアノのための序奏とドイツ民謡による変奏曲 ヘ長調,Op.posth.2

 


この曲はいつ書かれたのか?

実はこの作品、作曲された時期や背景が一切不明なのです。近年の研究で言及があるのかもしれませんが、今回は私の得意(?)とする 「空想」「憶測」「妄想」 を交えて、個人的な作曲年代推定を述べてみようと思います。
もしこのような妄想にお付き合いいただける方は、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。


ヴァイオリンとピアノ、それぞれの観点から見ると…

この曲のヴァイオリンパートは、変奏の前半では比較的平易ですが、第3変奏や第5変奏では スピッカート などの技巧も見られます。フィナーレとなる第10変奏も動きは多いものの、フンメルが未完のヴァイオリン協奏曲で見せたような名人芸的な技巧性までは感じられません。
一方でピアノパートには、フンメルの初期作品にはあまり見られない技巧的なパッセージや運指、音形が多く登場します。これにより、この曲は中期以降の作品と推測できます。


どこで、誰のために?

ドイツ民謡を主題としていることから、ロンドンやパリといった演奏旅行中に書かれたものではなく、ヴァイマル、ドレスデン、ライプツィヒなどのドイツ圏出版社の依頼で書かれた可能性も考えられます。
ですが、私の妄想では……
「フンメルがウィーンを再訪した際に、私的な目的で書かれた作品ではないか?」
と考えています。
その理由は以下のとおり:

  • ピアノ書法が中後期の特徴を持っている

  • ドイツ民謡が主題(ロンドンなど外遊中の意図とは考えにくい)

  • 生前未出版で、死後も自宅に保管されていた


作曲された時期:妄想による3つの候補

①1816年:ウィーンを離れる時期

この年、フンメルはウィーンを去り、シュトゥットガルトへ移ります。ベートーヴェンが友人帳に書いた言葉が印象的です。
「芸術は長く、人生は短い」
「良い旅を、親愛なるフンメル。ときどき、あなたの友人ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを思い出してください。」

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ベートーヴェンがフンメル送った別れの言葉(1816年4月4日 ウィーン)

②1827年:ベートーヴェンとの別れ

この年、フンメルは弟子のヒラーと妻を連れてウィーンを訪問。病床のベートーヴェンを3度訪ね、3月23日には臨終の3日前に面会。葬儀にも参列しています。

③1834年:ウィーンでの最後の演奏会

晩年にウィーンで演奏会を行った年。この時期もまた候補に挙げられます。


妄想の決定稿(笑)

私の中では、②1827年「ベートーヴェンとの別れの年」が最もふさわしいと感じています。というか そうであったらいいな、です。
なぜなら、この変奏曲を聴いたとき、全体にウィーンの香りを感じたこと、そして第9変奏がどこか「葬送行進曲」のように響いたからです。

若き日に競い合ったベートーヴェンとの思い出、そして彼の葬儀に立ち会った時の情景。それらがこの音楽に滲んでいるように感じたのです。
 


 ここまで「空想」「憶測」「妄想」にお付き合いいただきありがとうございました。曲の方は素敵な曲ですので是非聞いていただけたらと思います。

 

 

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