今回は、19世紀初頭のウィーンで話題となった、とっても贅沢な“ヒット曲メドレー”をご紹介します。
宮殿で行われた伝説の室内楽コンサート
1811年ごろから数年間、ウィーンのシェーンブルン宮殿の植物園では、名だたる演奏家たちによる特別な室内楽コンサートが開催されていました。ピアノのフンメル、ギターのジュリアーニ、ヴァイオリンのマイゼーダーやシュポア、チェロのメルクなど、当代一流の名手たちが集結。入場料が「1ドゥカート」だったことから、このコンサートは「ドゥカーテン・コンツェルト」と呼ばれていました。

その中で大きな話題を呼んだ曲の一つが、フンメルの《グランド・セレナーデ 第1番 ト長調 Op.63》です。
ヒット曲満載の“ポプリ形式”
このセレナーデは、1814年に作曲された2つの作品のうちのひとつで、もう一つは《第2番 変ホ長調 Op.66》として知られています。演奏される編成は柔軟で、ヴァイオリン・ギター・ピアノのほか、フルートまたはクラリネット、ファゴットまたはチェロなど、さまざまな組み合わせが可能です。
曲の内容は、当時大人気だったオペラや民謡のメロディを織り交ぜた「ポプリ形式」。いわば“ヒット曲メドレー”で、それを超絶技巧の演奏家たちが披露するという、まさに耳のごちそう。
第1番で取り上げられている収録曲一覧
このOp.63では、以下の11曲が取り上げられています:
1.ヨーゼフ・ヴァイグル:オペラ《皇帝ハドリアヌス》
2.モーツァルト:オペラ《魔笛》
3. ケルビーニ:オペラ《二つの旅》
4.ケルビーニ:オペラ《アバンセラージュ》
5.フンメル:3つの変奏曲(ジュリアーニ&マイゼーダーのために)
6.スポンティーニ:オペラ《ヴェスタの巫女》
7.民謡《家に帰ってそこに居なさい》
8.モーツァルト:オペラ《フィガロの結婚》
9.モーツァルト:オペラ《ドン・ジョヴァンニ》
10.フンメル:マズルカと2つの変奏曲
11.モーツァルト:《フィガロの結婚》序曲
現代にも蘇る魅力
今でも知られる名旋律が並んでいますが、当時はまさに“最新ヒット”ばかり。しかもプロの演奏家向けの高度な技術がふんだんに盛り込まれ、各楽器が代わる代わる主役になるような工夫も光ります。
19世紀後半には「サロン・ミュージック」として軽んじられた時期もありましたが、現在では多くの録音が存在し、演奏会でも頻繁に取り上げられるようになりました。理由はシンプル──聴いていて、そして演奏していて、とにかく楽しい!
今回の制作環境(DTM)
この作品は、以下の環境でDTM化しました:
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楽譜作成:MuseScore4(フリーソフト)
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音源:
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クラシックギター:MuseSounds
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クラリネット、ファゴット、ヴァイオリン:GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA
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ピアノ:HALion Sonic 7(Yamaha Piano)
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フンメルの音楽と、名曲の魅力を、現代の音源でお楽しみいただけたら嬉しいです。
クラシック音楽に馴染みがない方も、「名曲を味わう贅沢なひととき」として、ぜひ気軽に聴いてみてくださいね!
※サムネイル画像はChatGPTで描かせたこの曲の演奏風景