パイジェッロ:弦楽四重奏曲変ホ長調(ボネリ版第3番) | 室内楽の聴譜奏ノート

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室内楽の歴史の中で忘れられた曲、埋もれた曲を見つけるのが趣味で、聴いて、楽譜を探して、できれば奏く機会を持ちたいと思いつつメモしています。

Giovanni Paisiello : String Quartet in E-flat major (No.3 of Bonelli Edition)


今年(2016年)はパイジェッロの没後200周年だった。 ジョヴァンニ・パイジェッロ(Giovanni Paisiello, 1740-1816)はナポリ派のオペラ作曲家で、18世紀後半で最も成功した音楽家の一人とされている。ロシアのエカテリーナ2世の宮廷に招かれて8年間過ごしたり、フランスの皇帝ナポレオンにも重用された。モーツァルトにも影響を与えた、明快で流麗な旋律を作る人で、協奏曲や室内楽作品も多い。

ごく最近、YouTubeで見つけたのがこの曲で、往年の名Vn奏者ピーナ・カルミレッリ(Pina Carmirelli )が3人の仲間とカルミレッリ四重奏団(Carmirelli Quartet) として録音した1956年のLPレコードからUPしたものだった。音質が劣化しているのは仕方がないとしても、彼女の旋律を歌い上げる見事な表現力に思わず聞き惚れてしまう。

 

 

引用譜例は、エットーレ・ボネリ(E.Bonelli)校訂によるザニボン社版(Guglielmo Zanibon)のスコア譜から作譜ソフト「ミューズ・スコア」(MuseScore)に転写した楽譜を使用。下記URLの「KMSA室内楽譜面倉庫」でパート譜とスコアを参照できる。
https://onedrive.live.com/?authkey=%21ACN8DNizjzp5md4&id=2C898DB920FC5C30%218318&cid=2C898DB920FC5C30

 

 

第1楽章:ラルゴ・カンタービレ


 文句の付けどころのない、ゆったりした美しい旋律を第1ヴァイオリンが歌う。最初の楽章が序奏のような緩徐楽章なのは、当時音楽先進国だったイタリアの弦楽四重奏曲の伝統の一つらしい。(アレグロなどの速度用語は今でもイタリア語である。)少年モーツァルトが音楽修行のためイタリアを訪れた時に作曲した最初の弦楽四重奏曲(K.80)「ロディ」(Lodi)もこうした先達の作品に影響を受けたものと思われる。
 

 

第2楽章:アレグロ

 明朗快活ながらもアンサンブルが引き締まった楽章。第1と第2のヴァイオリン同士がテーマの掛けあいをしながら進んでいく。曲想としてはディヴェルティメント(喜遊曲)である。

 

 

第3楽章:グラーヴェ・マエストーソ

 表意記号の通り、松明に照らし出された夜のイタリア庭園の彫刻群のような、重厚な雰囲気がユニゾンで奏される。バロックの残り香の響きである。上記譜例の16番からの第1ヴァイオリンの旋律もしっとりとして美しい。

 

 

第4楽章:アレグロ

快活なフィナーレ楽章。第1ヴァイオリンの目まぐるしいパッセージを負けじと第2ヴァイオリンが応答する。

 

 

 

自分ではまだ合奏が実現しないが、近日中に持ち出したいところである。