短編恋愛小説「告白」 | 春風ヒロの短編小説劇場

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春風ヒロが執筆した短編小説を掲載しています。

 オレはね、ちょっとしたイメージというか、「こういうシチュエーションのとき、自分は実は○○で……」っていうのを、よく考えるんよ。
 お前も考えたことない?
 たとえばそう、学校で授業を受けている最中、テロリストが教室に入ってくる。乱射される銃。飛び交う悲鳴。そんな中、オレは冷静に床に伏せ、教室を脱出する。オレは普段こそ、ただの学生のフリをしてるんだけど、実は対テロ特殊部隊で秘密の訓練を受けたエリート戦士。で、友達や好きな人を守るために一人でテロリストとの戦いを始める。
 ほかにもさ、たとえば自分が超能力者で、異世界と交信することができるとかさ、誰かがテレパシーで自分の思考を盗み読みしていると思って「おい、お前だよお前。勝手に人の脳内覗き見してんじゃねーよ」なんて、唐突に思い浮かべてみたり……。
 ま、そんな風に、人に聞かれると恥ずかしいことこの上ない妄想なんだけど、あれこれ考えちゃったりするわけさ。
 で、どうしてこんなことを唐突に言い出したかって言うと、今のオレたちみたいなシチュエーションで、実は……っていうことを、ずっと妄想してたことがあるんだわ。
 ほら、この夏から秋へと季節が移り変わって、縁側で日向ぼっこする猫の横で、二人で並んでお笑い番組を見ながら……っていう、このシチュエーションね。
 なんて言うか、さっき話したみたいな恥ずかしい妄想、そう、あくまで妄想の話だから、あんまりマジに受け止められても困るんだけどさ。
 ……オレさ、ずっとお前のことが好きだったんよ。
 こんな風に、猫と一緒に暮らしながら、バカなお笑い番組を見て、ずっと笑っていられるような暮らしがしたくて、それをお前と一緒に、やっていけたらいいなぁ、なんて。
 だっはっは、やっぱりなんか照れくさいなぁ。つか、恥ずかしいったらありゃしねぇ。中学生の妄想みたいなモンだから、あんまりマジに聞かんでね、いやマジでマジで。
 でもオレさ、お前とだったら、ずっとやっていけそうな気がするんだわ。
 なんつーか、こう……線香花火? 打ち上げ花火みたいに、パッと上がってドーンと咲いてハイおしまい、じゃなくて、パチパチ火花を散らしながら、ゆっくりノンビリ世界を彩ってく、みたいな……。
 付き合うなんて言うのも、ちょっと大げさかもしれない。もっと気楽なんだけど、でもずっと一緒にいたいって感じ、分かってもらえっかな?
 な、なんだよー、泣くなよもう。あ、ほらほら、夏休みに買って、ずっとしまい込んだままにしてた線香花火があるんよ。一緒にやらね? 地味かもしんないけど、お前と一緒なら、ぜってー楽しいって思ってさ。あー恥ずかしっ。


本作は某コミュニティサイトで投稿されたお題を元に執筆したものです。

本作のお題は「縁側で日向ぼっこする猫、お笑い番組、線香花火」でした。