皆さんこんにちは!
先日に引き続き、連続投稿の平岡です!!
ASCO2024には全世界から4万5千人が参加したと前回のブログで書きましたが、参加するだけではなく、ASCOで発表できるのは採択率からいって最難関
といってもおかしくありません。
4万5千人全員が発表のために演題を提出しているわけではないですが、今年は約5800演題が採択され、約半数が現地で口演 or ポスター発表、残りの半数がオンライン上の発表でした(抄録のみの誌上発表)。採択される演題は主に、国際共同 or 各国で行われている代表的な前向き多施設臨床試験の結果となります。(ポスターやオンラインでは後ろ向き研究も採択されるチャンスあり)
ASCO2024には日本人の先生方の演題もいくつか採択されておりましたが、その中でもOral Abstract Session(口演)に採択される事は、世界の癌治療に影響を与えるという意味で、最も採択が難しく(採択された中でも10%以下)・最も影響力のある発表と言っても過言ではないでしょう。
そのOral Abstract Sessionに、日本の多施設臨床試験であるJBCRG-M06/EMERALD試験が採択され、神奈川県立がんセンターの山下年成先生が現地で発表されました
その歴史的瞬間に立ち会う事ができ、平岡も会場で精いっぱい拍手を送りました
山下先生が口演される様子。とにかく大きな会場なので、演者の先生方が遠くて見えないくらいです。
さて、JBCRG-M06/EMERALD試験とは、HER2陽性転移再発乳癌の再発一次治療として、標準治療であるトラツヅマブ(HER;ハーセプチン)+ペルツズマブ(PER;パージェタ)+タキサン系抗がん剤療法に対し、PER+HER+エリブリン(ハラヴェン)療法の非劣性を示した試験です。
非劣性試験とは何か、とても説明が難しいのですが、標準治療と比べて治療薬の効果が劣っていないが、標準治療と比べてメリットもある事を示す、という事が目的の試験と言えます。
つまり、今後の標準治療の選択肢として、PER+HER+タキサン系抗がん剤療法がCLEOPATRA試験(国際共同第Ⅲ相臨床試験)以降、不動の第一選択であったのが、PER+HER+エリブリンも選択肢になる可能性があるという事です。
実臨床において、タキサン系抗がん剤はアレルギーで使用できない患者が多かったり、発熱性好中球減少症や末梢神経障害、浮腫など副作用で長期で使用できない事もあり、エリブリンが一次治療で使用できる事でメリットを受ける患者も多いのではないでしょうか
。
エリブリンも好中球減少や末梢神経障害は出ますので、副作用はあります。しかし、タキサン系抗がん剤の投与時間が60分に対し、エリブリンの投与時間は2-5分なので、時間毒性の軽減というメリットは非常に大きいのではないでしょうか
さらに、フェスゴ(PER+HERの皮下注製剤)もありますので、抗がん剤にかかる時間の大幅な短縮が見込めるのではないでしょうか!(ハラヴェンにもフェスゴにもCOIはありません
)
山下年成先生、素晴らしい発表ありがとうございました
また、今回の発表について本ブログでの掲載を快諾下さり、この場を借りてお礼申し上げます。