リンパ節転移が1〜3個の閉経後乳がんの方にもオンコタイプDXが有用です! | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

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こんにちは。広島大学病院乳腺外科の角舎です。

広島は憂鬱な曇り空ですくもり

GWも終わり、仕事モードに戻るまでなかなかしんどいですねショボーン

 

さて、今日は少し乳がんの最新データのご紹介をする前に、用語の解説を。

オンコタイプDXとは、患者さんの乳がん組織の中の21個の遺伝子を調べ、その発現状況(量が多いとか少ないとか)によって再発のしやすさ(再発スコア:0〜100で表します)を予測するものです。

RxPONDER試験とは、リンパ節転移1-3個のホルモン陽性HER2陰性乳がんにおいて、オコンコタイプDXによる化学療法の効果を検討する無作為化第3相試験です。つまり、オンコタイプDXの再発スコアによって化学療法をしたら良いのか?しなくても良いのか?ということを検証する大規模な臨床試験です。

 

NCCNガイドラインではこれまで腫瘍径が0.5cmを超えるリンパ節転移陰性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん患者に対し

オコンコタイプDXを強く考慮すると記載されておりましたが、今回より「閉経後のリンパ節転移1-3個の患者」に対しても強く考慮するとの記載が追加されました。

この臨床試験では、リンパ節転移が1〜3個までのホルモン陽性HER2陰性にゅうがんでオンコタイプDXの再発スコアが25以下の症例( スコアが低めの症例)をホルモン療法のみのグループとホルモン療法+化学療法の二つのグループに無作為に分け、再発率を比較したものです。再発スコアが26以上の人は化学療法を受けることになります。再発率は、5年間の無浸潤疾患生存率をみています。

上の図では、左側が閉経後の症例、右側が閉経前の症例に分けて再発率をみていますが、

・リンパ節転移1-3個のホルモン陽性HER2陰性の閉経後患者にとって、再発スコアが25以下であれば化学療法のメリットは無かった

・一方、閉経前患者にとって5年間の無浸潤疾患生存率は「化学療法あり」が94.2%、「なし」が89.0%で、統計学的に有意な差があった

ということです。閉経状況によって結果が違いますね

 

その結果、NCCNガイドラインでは、

腫瘍径が0.5cmを超えるリンパ節転移陰性患者および閉経後のリンパ節転移1-3個の患者に対して、オンコタイプDXを「強く考慮する」と記載

閉経前のリンパ節転移1-3個の患者にも、オコンコタイプDXの使用は考慮されうる

と変更されました。

 

表現はなかなか微妙なところがありますが、平たく言えば「ホルモン陽性HER2陰性乳がんでリンパ節転移1-3個あってもすぐに化学療法しようかと決めるのではなくて、オンコタイプDXに提出してスコアが25以下であれば化学療法をやらなくても良いですよ」ということです。一方、閉経前の人にとっては、5年間の再発率が5%違うので、「5%しか違わないのであれば化学療法をやらない」と考える人も「化学療法をやる」という人もいるでしょう。それぞれの価値観の違いもありますしね

 

これまで、乳がんの歴史では化学療法をどんどんやっていた時期もありますし、逆に控えていた時期もあります。現在は、するべき人にはしっかりと、しなくて良い人には無理にしないように、と皆さん、気をつけていると思いますが、

「じゃあ、どんな人だったらやらなくても良いの?リンパ節転移があったらやらなくてはだめだよね?」

という概念が、依然として治療をする方にも治療を受ける方にもあると思います

 

これまではリンパ節転移のない人にだけオンコタイプDXを勧めて来ましたが、これからはリンパ節転移が3個までの人にも勧めることができます。

「乳がんいつでもなんでも相談室」にも「化学療法をするべきでしょうか?しないでも良いでしょうか?」というご質問をいただきますが、より多くの人に「オンコタイプDXを調べてみたら良いですよ」と答えることができますね