トリプルネガティブ乳がんの話題 | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

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広島大学病院乳腺外科スタッフが、乳がんのこと、日常のこと、感じたことなどを交代で綴っていきます。ぜひ、気軽にコメントもいただければうれしいです!
注:このブログは広島大学公式ブログではありません。発言内容は個人の見解であり、広島大学とは一切関係ありません。

 

 

皆さんこんにちは。

広島大学病院 乳腺外科 舛本です。

いかがお過ごしでしょうか。

私は、朝一番に我が家の愛犬、さくらと散歩に行ってきました。

朝6時、こんなに早く散歩に行ったのは初めてです。

さくらも、『今日はどうしたの!』の顔です。

 

 

 

 

今日はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療薬の話題です。

TNBCは、ホルモン陰性・HER2陰性の乳がん。

乳がんの10~15%ぐらい、ホルモン治療やハーセプチンなどの抗HER2治療の効かないタイプです。

 

治療薬の名前はペムブロリズマブ、商品名キイトルーダ。

この薬は先週、アメリカでは、

転移再発なさっているTNBC患者さんの一部(PDL1が発現している方)に迅速承認されました。

迅速承認されたのはKEYNOTE-355試験という名前の臨床試験の結果によります。

この試験では

治療歴のない転移再発なさっているTNBC患者さんを対象に

キイトルーダ+抗がん剤 vs プラセボ+抗がん剤を比較しています。

結果は無増悪生存期間(PFS)を見ています。

PFSとは、治療中にがんが進行せず安定している期間をいいます。

PDL1が発現しているかどうかも見ています。

PDL1はがん細胞の表面にあり、体の中のリンパ球が攻撃できなくする役割があります。

 

PFSはPDL1がたくさん発現している場合、PFSの中央値はキイトルーダ群9.7カ月 vs プラセボ群5.6カ月。統計的に明らかにキイトルーダを使っているほうが良かったのです。

 

一方で、PDL1の発現が少ない場合の患者さんを含めて解析すると、キイトルーダ群7.6カ月 vs プラセボ群 5.6カ月。良い傾向はありますが有意差なし。

 

TNBCに対するキイトルーダの話題は下記の日にも紹介していますのでよろしければご参考ください。

2020-03-05 手術前にキイトルーダを併用した術前治療の話 KEYNOTE522 論文紹介

2020-02-16  木村優里先生がわかりやすく3つの臨床試験を解説 KEYNOTE522・I-SPY2試験・KEYNOTE-355試験

2019-12-31 サンアントニオ乳がん学会での発表 KEYNOTE522  

 

 

日本でもTNBC患者さんに対して先月、キイトルーダの申請が行われました。

早く承認されることを願っています。

 

 

患者さん、患者さんを支えている周りの方々、本当によく頑張っておられます。今日も明るく前向きに楽しく一日過ごしましょう。

 

広島大学病院乳腺外科 舛本法生