がん細胞の遺伝子変化と治療戦略 | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

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広島大学病院乳腺外科スタッフが、乳がんのこと、日常のこと、感じたことなどを交代で綴っていきます。ぜひ、気軽にコメントもいただければうれしいです!
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こんばんは

広島大学病院乳腺外科 恵美です。

 

今日はとても暑い一日でした。

本来なら、学校も終業式を迎える時期ですが、コロナ休校の影響で夏休みは短縮し2週間弱の予定です。

もともと、夏休みというものは暑さ厳しい折には勉強にならないからということで設けられているはずですが、暑い時期に学校が継続されるためにはいろいろ環境を整える必要があります。

 

県によっては、公立学校のエアコン設置率が低いため通常通り8月末までお休みとなる地域もあるようです。

エアコンのない学校でも職員室にはエアコンがついていたり・・・

経済の活性化は国の存亡にかかわるのだとは思いますし、GO TO政策もよいですが、亜熱帯化しつつある日本では学校へのエアコン設置にも予算を使っていただけないものでしょうかショボーン

 

この数日は、がんゲノム医療における「エキスパートパネル」の準備をしています。

昨年からは、がん細胞の遺伝子変異を調べて可能な治療法を探る「がんゲノム医療」が転移再発がんの方で標準的な治療がなくなる見込みである場合に保険診療で可能となりました。

 

そもそも、がん細胞は正常な細胞遺伝子にタバコや放射線、炎症といった刺激により傷がつくことで変化が起こり、それが少しずつ蓄積された結果発生することがわかっています。

このスライドは2019年の「ひろしま乳がんアカデミア」で当院遺伝子診療科教授の檜井先生からがんゲノム医療についてお話しいただいたときに使われたものです。

大腸がんなどではこのように良性の腫瘍からがん細胞が発生する「多段階的ながん細胞の発生」がわかっています。

乳がんでは良性腫瘍からがんが出るケースは非常に少ないのですが、がん細胞の発生にはたくさんの遺伝子変化の積み重ねが関係していることは同じです。

 

異常な遺伝子変化はがんの原因となる異常なたんぱく質を作り出すことにつながります。

正常細胞とは違うこのたんぱく質を標的とした「分子標的薬」ががんゲノムの発展とともにどんどん開発されています。

分子標的治療薬としてハーセプチンやパージェタなどが代表的な「抗ハーツー治療薬」があります。

保険適応になっているがんゲノム検査の1つである「FoundationOne®CDx」は、このハーツー療法の適応を判断するための『ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)』を調べる目的で検査を受けることができます。

 

 

がんゲノムでは、採取されたがん細胞の遺伝子解析結果が『がんゲノム情報管理センター(C-CAT)』で調査され患者さんの治療につながる遺伝子の変化があったのかどうか解釈されたレポートが返ってきます。

 

その調査結果をさらに、例えば乳がん治療として本当に有効なのか、エビデンスに基づいた治療を提供できるのかを調査判断する場として各領域の専門家による会議が、がんゲノム中核拠点病院や広島大学病院などのがんゲノム拠点病院では行われるのですが

これが「エキスパートパネル」です。

がんゲノムの依頼は院内だけでなく、たくさんの連携病院から寄せられます。

がん細胞ですから、いろいろな遺伝子の異常な変化が起こっているのですが、現在の医療で治療薬に結びつくものであるのかどうか

様々なツールや論文を読んで検証し判断するのです。

 

遺伝子の変化がわかると、そのがんの性格も色々見えてきます。

がん細胞は顕微鏡だけで診断するしかなかった時代から、もっと深い性格を知ることができるようになったのですびっくり

 

ああ、この子は体を動かすことが好きなのだなあ

 


ああ、この子は空想を巡らせることが好きなのだなあ

 


など、観察していれば誰でもわかることですが、観察する前からその子の好みや嗜好が遺伝子レベルで傾向としてわかってしまう時代です。

 

今、みんなで調べているこの結果を待っておられる方がいます。

 

そのかたのお顔を何度も思い出しながら、自分も勉強を積み重ねていきます。