この午後 その午後この午後、 私は何一つすることがない、 ただはるか彼方から聞こえてくる微かな音楽の様なものに耳を澄ますほかに。 突然早く夜になってほしいと思った。 その午後、 私は自分ではない私になりたいと夢想していた。 人間社会は本当にこのままいつまでも、嘘と暴力にまみれながら続いていくのだろうか。 生まれてから長い時が過ぎて、 いつか私も人間として生きてきたけれど、 歳を取るにつれて、人間ではないただの生き物としての私が、 ずっと自分を生かしていたのだと気づくようになる。