奇跡的な再起を遂げた彼でしたが、
コンサータ27ミリを服用し、
昼間の食欲がなくなり、
5年生のときはガリガリでした。
お母様も担任も食の細さを心配しました。
それでも、何よりも学校に楽しく通いたかったから、服薬は止めませんでした。
一度だけ、
「みんなに合わせることが疲れる」
と呟いたことがあります。
でも、本当に一度だけ。
それ以上に
休み時間に友達とボール遊びができること、
体育で広い校庭を思い切り走れること
(しかもかなり速いから褒められる)
放課後に友達と誘い合って遊べること
バスケットボールチームの練習に打ち込めること
は、何事にも代え難い幸せだったようです。
そんな生活に満足し、
中学校もこのまま友達と一緒に公立に進学してくれればいい
と、大人は皆思っていました。
そんな5年生の秋、
彼の調子が少し乱れました。
担任が聞き出してみたら、「受験する」と言い出したとのこと。
せっかく小康状態を手に入れたのに、
受験なんかに手を出したら、
また今の生活が壊れてしまうのでは…💦
私も保護者もそう思っていましたが、
担任は「今の彼ならできる」と
疑いもなく信じてくれました。
彼の学力相応の…
というより受験勉強の開始時期が遅すぎるから
少し難易度の控えめの学校を選ぶのかと思っていたら、
なんと御三家が第一志望だというのです😳
それはちょっと…という周囲の困惑をよそに
彼の突き進む力と集中力を発揮して、
算数、理科、社会はあっという間に飛躍しました。
問題は彼の大嫌いな国語。
彼の志望校は、必ず入試に小論文があり、
この勉強が苦痛でならなかったようです。
やりたいことしかやらなかった彼が
文章を書く勉強を投げ出すことはありませんでした。
特別支援教室では、
相手目線をもって、わかりやすく話すこと、書くこと
自分の希望と友達の希望をすり合わせて、やりたい活動を決めること
が学習のめあてでした。
やがて、夜遅くまで塾にいる生活になると
お母様は、塾に迷惑をかけてはいけないという思いで、コンサータの増量を医師にお願いしました。
飲み過ぎなのでは??
と心配しましたが、
体重は歳相応に増加し、
学校はますます順調でした。
彼がやりたいと言っているから…と
応援したいご両親ではありますが、
薬の切れた時間の反動は凄まじく、
「家では以前とちっとも変わっていない」
と、涙を流されながら、対応のしんどさを語られていました。
担任は、今の立派な彼の印象しかないので、
お母様のおっしゃることが通じませんでした。
3年、4年と共に時間を過ごした私は
家での様子がありありと浮かぶ、と伝えました。
お母様は、
辛い…と何度も泣かれました。
表向きには大躍進。
しかし、家に帰れば何も変わっていない。
外で頑張っている
お友達に迷惑をかけていない
それだけで満足すべきなのに…
と仰っていましたが、
それでも薬の切れた状態の彼と家で過ごすのは、生半可なことではなかったと、私も思うのでした。
続く…