「流通雑感 臨時号NO.1」2024年4月20日 | 流通雑感のブログ

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 3月で東洋大学経営学部を定年退職しました。4月からは年金生活者です。必ずやらなくてはいけないこともなくなり、気楽な生活になりました。3月にすっかり体調を崩し、多くの方にご迷惑をおかけしました。その体調も徐々に回復してきています。

 退職して、新聞や雑誌を読まないかというというとやはり読んでいます。読むと気になる記事に出会います。そして自分なりの感想や意見を持ちます。それをなるべく文章にするようにしています。そのため、一定量がたまったら、「流通雑感 臨時号」として、ブログに掲載し、千葉商科大学と東洋大学の住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうかと思うようになりました。

 臨時号とするのは、毎月掲載するわけでもなく、一定量が溜まったらなので、月に1回かもしれませんし、2~3か月に一度くらいかもしれません。その点はご容赦のほどお願いします。住谷ゼミのOBOGの皆さんに、少しでもお役に立てたら幸いですし、私の近況もお知らせしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

1.社会・消費者について

(1)日本人83万人減少、2050年1世帯平均1.92人

(2)共働き世帯と専業主婦世帯

(3)「経済的ゆとりがない」が63.2%

2,小売業について

(1)イトーヨーカ堂は生き残れるのか?

(2)イオンの野望「ドラッグストアについて」

(3)オーケーストアの創業者、飯田勧氏が死去

3,消費財メーカーについて

(1)資生堂とワコールの共通点

(2)ハイチュウからHI-CHEWへ

4,その他

(1)   千葉商科大学、キャンパスを自然エネルギー100%に

 

 

1、社会・消費者について

(1)日本人83万人減少、2050年1世帯平均1.92人

総務省が4月12日に発表した人工推計によると、23年10月1日時点で外国人を含む日本の総人口は前年比59万5000人少ない1億2435万人でした。日本人は83万人減少、日本に住む外国人は前年比24万3000人増の315万人でした。また、65歳以上の高齢者は人口の29.1%で、75歳以上は2007万人でした。

国立社会保障・人口問題研究所が4月12日発表した世帯数の将来推計によると、1世帯当たりの平均人数は20年の2.21人から減少し、50年には1.92人となるそうです。50年には65歳以上の一人暮しが1083万人と30年比47%増加するそうです。一人暮しの世帯の割合は20年の38%から増加を続け、50年には44%となるそうです。高齢化が進み、50年には65歳以上の一人暮しが全世帯の21%となる予想です。一人暮しの高齢者が増える主な要因は未婚率の上昇だそうです。50歳時点で一度も結婚したことがない割合は男性で28%、女性で18%といずれも過去最高です。

人口がゆるやかに減少していくのは、なんとなく許容範囲なのですが、75歳以上が2000万人を超えたとか、将来高齢者の一人暮しが2割を超えるというは、厳しい現実ですね。一人暮しとか二人暮しの高齢者が、助けあって生活できる場所とか、仕組みとかができないものでしょうか?お金の問題、健康の問題などがあって、難しいのでしょうけど、だれかそんなことを考える人が出てこないものでしょうか?

(2)   共働き世帯と専業主婦世帯

 1990年の時は、専業主婦世帯が897万世帯、共働き世帯が823万世帯でした。ところが、2023年になると専業主婦世帯が517万世帯、共働き世帯が1278万世帯です。共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上になったのです。その上、データは知りませんが2世帯で生活している家族は減少しています。

そこで問題になるのは、幼稚園児とか小学校低学年の子供たちです。朝は、なんとかなるかもしれませんが、幼稚園や小学校が終ってから、親が帰宅するまでの時間が問題になります。

そこで「学童保育」とか学童のための「アフタースクール」がそれぞれの地域で充実しているかどうかが問題になるようです。私立小学校によっては、学校直結の学童「アフタースクール」を設けて、午後7時まで児童の面倒をみてくれるところもあるそうです。そのような私立小学校(例:東京農業大学稲花小学校)は入試倍率が12倍を超えたりしているようです。

幼稚園や小学校が終ってから、親が帰宅するまでの時間を保育園に任せるのか、私立小学校の一部が始めた学童のための「アフタースクール」に任せるのか、今一度、祖父や祖母との同居を考えるのか、とても難しい問題です。

共働き世帯、夫婦とも働いていて、家事も協力し合って行う・・・・でも「男なんだから・・・・」「女なんだから・・・・」という固定観念もまだまだあるようで、ますます難しいようです。

地域社会として、幼稚園や小学校が終ってから、親が帰宅するまでの時間、児童を預かるサービスが行われるのが望ましいのかもしれません。それぞれの地域のターミナル駅の近くに、朝6時から夜9時まで児童を預かる保育園(公立で、もちろん有料)があって、専門のスタッフが常駐するが、ボランティア(専業主婦で時間がある人、定年退職した人、自営業で時間の調整がつく人など一定の研修を受けた後でボランティアとして参加)の方々も協力するという形式はどうでしょうか?地域で児童を守るという姿勢と仕組みができることが望まれているのではないでしょうか。

(3)「経済的ゆとりがない」が63.2%

 内閣府が3月22日発表した「社会意識に関する世論調査」(2023年11月~12月、18歳以上の3千人を対象に郵送調査、回収率57.1%)によると、現在の社会で満足していない点(複数回答)の中で1位は、「経済的なゆとりと見通しが持てない」でした。前回(22年3月公表)より0.7%増加して、63.2%と今までで最多でした。物価高の影響が反映しているという解説があります。

2位は「子育てがしにくい」(28.6%)、3位は「若者が社会での自立を目指しにくい」(28.2%)、4位は「「女性が社会での活躍を目指しにくい」(26.2%)、5位は「働きやすい環境が整っていない」(25.8%)でした。

日本で悪い方向に向かっている分野(複数回答)は、「物価」(69.4%)、「国の財政」(58.4%)、「景気」(58.1%)、「経済力」(46.7%)と続いています。その一方、良い方向に向かっている分野は、「特にない」(25.5%)、「医療・福祉」(25.5%)、「防災」(24.1%)、「治安」(18.6%)の順になっています。

日本は給料が安いと言われています。給料の大幅アップが先か?物価の上昇が先か?現在はどうやら物価が上昇し始め、政府も給料を上げようと声を出し、企業が一斉に給料を上げ始めたという感じになっています。

給料が上がるという事は、労働生産性をそれだけ上げるか、あるいは製品価格を値上げるかのどちらかだと思うのです。なんとなく後者なのかな~と思ったりしています。後者の場合、さらにインフレになり、その後、給料が上がり、というサイクルになっていくのでしょうか?そして、マイナス金利の解除です。プラス金利が普通なのですが、借金がしにくくなります。でも間違いなくゆるやかなインフレ傾向が続くのではないでしょうか?

その上、所得格差はますます拡大しています。「経済的ゆとり」が持てない層は増えていくような気がします。そうなると結婚しない人は減らないかもしれませんし、子供も増えないかもしれません。

所得格差をこれ以上拡大させない政策も必要なのですが、株高の影響で、所得格差・資産格差は拡大傾向です。

会社員の皆さんは、自社株の購入を続けている人もいると思うのですが、それは資産形成上とても大切なことのひとつだと思いますので、是非続けていただきたいと思います。会社員の皆様の防衛策としては、自社株の継続的購入(社員持ち株会など)が一番やりやすいのではないでしょうか?

 

2,小売業について

(1)   イトーヨーカ堂は生き残れるのか?

 周知のようにアメリカの株主(バリューアクト・キャピタル)からセブン&アイHDに対して、セブンイレブンに事業を集中し、それ以外の百貨店やスーパー事業は売却すべきだという意見が出ていました。

それに対応するように、昨年、セブン&アイHDは百貨店事業を売却しました。残るスーパー事業ですが、それについては概ね以下のように対応するようです。

➀イトーヨーカ堂はアパレル事業から全面撤退する。

➁イトーヨーカ堂とヨーク(ヨークベニマルとヨークマート)を23年9月1日に合併しました。存続会社はイトーヨーカ堂です。企業としてのイトーヨーカ堂には、「イトーヨーカ堂」という店舗、「ヨークベニマル」という店舗、「ヨークマート」という店舗があります。

➂イトーヨーカ堂という店舗は、23年2月末で126店舗あったのですが、それを26年2月期には首都圏中心に93店舗にする予定です。同時に、アパレルから撤退したので、実質は食品スーパーになるわけです。「イトーヨーカ堂」、「ヨークベニマル」、「ヨークマート」という3つの食品スーパーの企業としてイトーヨーカ堂は構成されているわけです。

④ヨークベニマルは、福島県、宮城県、栃木県、群馬県、茨城県の5県に集中出店しているので、ヨークマートとイトーヨーカ堂で首都圏に集中させようとしているようです。

➄そのためでしょうか、24年2月9日の報道によると、イトーヨーカ堂(店舗)は北海道・東北・信越の全店舗を閉鎖する方針との発表がありました。

 このようにイトーヨーカ堂は、3社を統合することによって、コスト削減と効率化が実現できると考えているようです。なんといってもヨークベニマルは優良企業ですから、ヨークベニマルのPB開発や製造のノウハウをイトーヨーカ堂やヨークマートに伝える研修なども行っているようです。

 ある程度出店地域をまとめて効率的物流を実現させようとしていることはよく理解できます。ただ以下の2点について不安があります。

➀地域ごとに有力な食品スーパーがあるので、それらと競合して勝てる武器があるのだろうか?たとえば埼玉県には、ヤオコーとベルクという強力な食品スーパーがあります。そこと競合して勝てるのだろうか?

➁ヨークベニマルは、優良企業でした。それを実現したのは、「個店経営」の元祖だったからです。果たして、イトーヨーカ堂やヨークマートは、ヨークベニマルの個店経営を導入し、定着させることができるのでしょうか?この点にも大いなる疑問を持っています。

 企業としてのイトーヨーカ堂は、食品スーパーの広域チェーンに生まれ変わろうとしています。ただ、食品スーパーは地域ごとに有力チェーンがあるので、そことの対抗は厳しいものがあると想定しています。ましてや、26年2月期には黒字にして550億円の利益を出す計画なのですが、これは実現できないと個人的には予想しています。

 さらに4月11日の日経の記事によると、26年2月期までに利益が改善されたら、イトーヨーカ堂の新規株式公開(IPO)を行って、一部株式を売却し、外部企業からの出資を募る予定だそうです。その上で、井坂社長は「連結子会社にはこだわらない。どのくらいの比率を持つのがシナジー創出に必要か検討している」と答えています。イトーヨーカ堂をセブン&アイHDグループからはずすことも考えているようです。あと2年は面倒見るけど、その後は自立していきなさいと言っているようにも聞こえます。結局は、アメリカの大手株主の意見にしたがって、セブンイレブンに事業を集中し、企業価値を上げる方針なのでしょうか?日経の編集委員の中村直文氏は「これはヨーカ堂を事実上、解体することを意味する」(日経:4月12日号)と述べています。その上、伊藤家次男である伊藤順朗氏を代表権を持つ副社長に昇格させ、その伊藤副社長に、イトーヨーカ堂の再生や株式上場の責任者にしたのです。セブンアンドアイの深謀遠慮が伺えます。

 全く違う視点の事を一つ申し上げます。企業は利益追求だけで良いのかどうかという視点もあります。特に小売企業は大手になると社会的責任・役割があります。突然、総合スーパーという大型店を閉鎖するので良いのかどうか。地方で暮らしている人にとってはショックな出来事だと思います。各地域の雇用問題、買い物問題もあります。街のにぎわいの問題もあります。私はいつもセブン&アイとイオンは対照的だと思っています。イオンは、基本的に店を閉鎖しません。だからあまり利益が出ないのかもしれません。そのかわり、地域にとってはなくてはならない存在になってきているように思います。このセブン&アイの意思決定は、10年後、20年後にならないと正しかったのかどうかはわからないと思います。

(2)   ドラッグストア業界の再編成

 2023年12月、私はドラッグストアの再編について、次のような私見をメモにしておきました。

「今後5年間くらいは、ウエルシアとマツキヨココカラ&カンパニーが再編の中心になっていく。ウエルシアは業界1位であって、経営ビジョンが高齢化社会にぴったりと適合している医薬品と介護中心なので、多くの中堅・中小ドラッグの共感を得られるのではないだろうか。ただ、イオングループの一員なので、イオンの傘下には入りたくないという企業は営業利益率が6%台と高いマツキヨココカラ&カンパニーが魅力的に映ると考えられる。ツルハは、株式の非上場化の噂があったり、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントの動きがあったり、不透明感が増しているため再編の主役には当分なれないと判断する。また、独自に直営店網(小商圏メガドラッグストア・ストア)を築いてきているコスモス薬品が出店地域を拡大していけば(現在、九州から北上し関東まできている)、食品の品揃えを拡充している地域ドラッグストアと激突するようになり、販管費比率が16%台と低いコスモスが競争に勝つ可能性が高く、ある時期からそのような地域ドラッグを買収・統合する可能性が高い。長期的には、コスモスもひとつの大きな勢力になる可能性がある。」

その後、2024年1月30日に次のような報道が出ました。

「イオンが香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントからツルハHDの株式を取得する交渉に入ると発表。交渉がまとまればイオンはツルハHDの株式を26%強取得することになり、ツルハHDはイオンの持ち分法適用会社となる可能性がある。『日本経済新聞』2024年1月30日号より」

 やはりという感じであった。この機会をイオンは狙っていたかもしれない。なぜなら、ウエルシアの松本社長は、「東南アジアを含めて頭一つ抜けるには3兆円の売上が必要になる」(9月19日:日本経済新聞:ニュース一言)と発言していたからです。3兆円という数字は簡単に実現できるものではありません。しかし、ツルハHDと経営統合出来たら2兆円企業になれますので、3兆円という数字もあながち無理とはいえなくなってくるかもしれないのです。

 そして、2024年2月28日、「ウエルシアHDとツルハHD 経営統合へ協議開始合意 イオンが発表」という報道がされたのです。3社は2027年末までに、最終的な契約を結ぶことを目指すそうです。なお、ウエルシアとツルハが経営統合して、ツルハHDが存続会社になり、ツルハHDはイオンの傘下に入る予定だそうです。残るツルハHDは単純合計すると売上高2兆円の小売企業となります。なぜ、ウエルシアが存続会社にならないのかという疑問もありますが、そこはイオンがツルハを立てたのかもしれませんね。

まだまだ2社の経営統合が実現するのかわかりませんが、もしも実現すると、ウエルシアの売上高1兆1442億円、ツルハの売上高9700億円なので、単純合計すると2兆1142億円になります。これはドラッグストアでもちろん日本1位ですが、同時に世界第5位になるそうです。また店舗数も、現在は、マツキヨココカラ&カンパニーが3400店舗と業界で一位ですが、ウエルシアとツルハが経営統合すると店舗数は合計で5400(ウエルシア2800店舗、ツルハ2600店舗)店舗となり、売上高も店舗数も業界第一位となります。

また、ドラッグストア業界の売上高は、約8兆円と推定されますので、この2社が経営統合した場合、ドラッグストア業界の25%のシェアを得ることになります。

もしも、ウエルシアとツルハが経営統合した場合、それだけではおさまらない可能性があります。なぜなら、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントは、クスリのアオキの株式を5.5%所有しています。イオンは9.98%所有し、ツルハが5.13%所有しています。ツルハHDがイオンの子会社になった場合、イオンはクスリのアオキの株式の15.11%を所有することになります。そして、オアシス・マネジメントからクスリのアオキの所有株式を購入した場合、イオンはクスリのアオキの20.61%の株式を所有することになります。連鎖的に何か起こりそうな予感がします。

アメリカの大手ドラッグストアのCVSヘルスは売上高約3200億ドル(約46兆円)です。これぐらいの規模にならないと世界大手の製薬会社との価格交渉を有利に進めることはできないといわれています。日本のドラッグストアは,ようやく売上高1兆円になってきたわけですが、これが最終目標ではありせんから、これからもM&Aは進展すると思われます。

 ツルハHD(ウエルシアとツルハが経営統合したあとの存続会社)とマツキヨココカラ&カンパニーそしてコスモス薬品は残るでしょうから、サンドラッグとスギHDがどのような動きを見せるかが今後の大きな関心ごとになるように思います。特に、スギHDがマツキヨココカラ&カンパニーと経営統合するのか?あるいは自分が中心になって第4のグループを作るのか?その点が特に注目される動きとなると思います。地方に根を張っているドラッグストア(たとえば、北海道のサッポロドラッグとか九州のサンキュウドラッグなど)は当分存続すると思いますが、それ以外はイオングループかマツキヨココカラ&カンパニーかコスモス薬品のどれかにいずれ統合されるように予想しています。それだけに第4のグループが誕生するのかどうかが今後の関心の的になるでしょう。

(3)   オーケーストアの創業者、飯田勧氏が死去

 創業120年を超える日本橋の酒卸問屋「岡永商店(現・岡永)」の経営者飯田紋治郎氏には、4人の子どもがいました。長兄飯田博氏は「岡永」会長兼「日本名門酒会」最高顧問。

次兄飯田保氏は居酒屋チェーン「天狗」を創業し、その会社であるテンアライド最高顧問。

三男の飯田勧氏は、1958年(株)岡永商店の小売部門として創業していた小売店を、1967年オーケー(株)として岡永商店より分離独立して、今日のオーケーストアを作り上げました。24年4月2日、96歳で逝去。四男の飯田亮氏はセコムを創業しました。現在、セコムの最高顧問。

岡永は、47都道府県の銘酒を品揃えし、それを日本名門酒会と称して、酒屋に卸売りしていたのです。いわゆる地酒ブームを作った会社です。その会社の、子供たちは4人の内3人がそれぞれ起業し、成功させています。

どのような教育をすれば、そうなるのかいつも不思議に思っていました。新聞記事によると、父親からは「しゃがむな」といわれ、母親からは「ため息をついてはいけません」と教え込まれたとか。毎年、オーケーストアのことを講義で説明するときに、この飯田4兄弟のことを少し話していたのですが、本当に興味のつきない凄いご家族だと思います。

 

3,消費財メーカーについて

(1)   資生堂とワコールの共通点

 資生堂とワコール、どちらも老舗メーカーでかつはそのブランド力の強さを誇っていた両社です。

そのワコールが、23年11月に希望退職者の募集を発表し、24年2月に想定を上回る200人以上が応じました。資生堂も24年2月、国内事業に関わる従業員約1500人の早期退職者を募集すると発表しました。名門ブランドの両社が業績不振で希望退職者や早期退職者を募集しているのです。ワコールは24年3月期の連結最終利益で2期連続の赤字を見込んでいて、資生堂は23年12月期の連結決算で減収減益なのです。

「両社とも国内市場で『若者離れ』を起こし、ブランドビジネスの活力が失われている事は見逃せない」と解説されています。ワコールは、ユニクロの「ブラトップ」(締め付けの緩いノンワイヤータイプのブラジャー)にやられ、資生堂は、もしかしたらコンビニやドラッグの「プチプラコスメ」や「韓国コスメ」にやられたのかもしれません。

どちらも若い世代のニーズに対応できなかったといえますが、チャネル戦略の視点からは、どちらも百貨店、専門店に強く、スーパーまではチャネルを構築したが、それらのチャネルが強かったため、かえってネット通販への取り組みが遅れたり、新たな成長チャネル(例えば、化粧品ならドラッグストア)への対応も後手を踏んでいるという実態があります。

両社とも高級ブランドに力をいれていますので、高級ブランドに集中して、合理化すれば、再び企業として輝きを取り戻すことは十分に可能だと思います。若者対応をどうするのか?低所得者の増加という実態にどの様に対応するのか?その点の企業の考えがしっかりしていれば集中戦略で乗り越えられるように思いますが、業界のリーダーだからといって、全方位戦略を行おうとすると危ないのではないかと推測しています。でも両社とももしかしたら全方位で行くのかもしれません。読者がその点に関心を持って、両社の推移をみてくれると私の意見も多少は役に立つかもしれません。

(2)   ハイチュウからHI-CHEWへ

2月、人気の森永のソフトキャンディの「ハイチュウ」が「HI-CHEW」へとパッケージ表記が変わりました。

ハイチュウは1975年に登場し、約20種類の味があり、来年に生誕50年を迎えます。そのハイチュウも、今や30カ国・地域以上で販売されています。アメリカでは、2008年に販売会社を設立し、メジャーリーガーに試合中に食べてもらう販促が成果を上げて、すでにアメリカ市場での販売額は、日本市場での販売額を上回っています。

お菓子のグローバル化に伴って、パッケージ表記を変えたのだそうですが、パッケージを変えたら、日本市場でも前年同期と比べて2ケタ増になったそうです。消費者行動を分析した結果、「日本のZ世代の需要が伸びた」のだそうです。今回の英語表記で大人向けのイメージが強まり、消費年齢層が上がったのだそうです。

日本のお菓子が、東京オリンピックとインバウンド需要をきっかけにグローバル商品になったものが結構多いですよね。

 

4,その他

(1)   千葉商科大学、キャンパスを自然エネルギー100%に

 千葉商科大学(千葉県市川市)が学外発電所を建設しています。まず2014年に総工費7億円を費やし、野田市のグラウンド跡地に太陽光パネル約1万枚を使った発電所を建設しました。また、今年4月に竣工式を行ったのは2か所目の学外発電所です。千葉市緑区の大木戸ソーラー発電所です。約4000㎡の土地で年間11万キロワット時を発電するそうです。大学においても太陽光パネルを増やしたり、照明をLEDにしたりしています。

そして、キャンパスで使うエネルギーと太陽光での発電量を同等にする「自然エネルギー100%大学」を目指して、取り組みを加速しているのです。原科学長は「教育機関こそ温暖化対策に率先して取り組むべき」だと述べています。

ガスなどを電気に換算した分も含めた総消費エネルギーと発電量を同等にするという目標を持っていたのですが、今回の新たな学外発電所の建設によって、100%を上回るそうです。キャンパスを自然エネルギー100%にする千葉商科大学、この動きが全国に広がるといいですね!