「月刊 流通雑感」NO.232、2024年 正月号 | 流通雑感のブログ

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月刊 流通雑感」NO.232、2024年 正月号

 《目次》           

1、 社会・消費者動向

(1)  大学「再編に関心」25%

(2)  26歳以下の転職、5年で2倍

(3)  EU、売れ残り服や靴の廃棄禁止へ

(4)  20歳代交際未経験者、男性46%、女性29%

2、 小売業・卸売業の動向

(1)  セブン&アイ、オーストラリアのセブンイレブンの運営会社を買収

(2)  イオン、いなげやに対するTOB終了

(3)  サンドラッグ、キリン堂株33.4%取得

(4)  イオン九州とトライアルが、トラック共用

(5)  ウエルシア、在宅調剤対応店を1200店に

(6)  キラキラドンキ

3、メーカーのチャネル戦略、

(1)大塚製薬、アメリカの健康食品会社を買収

(2)食肉大手4社、トラック運転手の作業負担軽減策を発表

(3)コカ・コーラ、自販機 夜10円安く

(4)日本ケロッグ、オートミールBar発売

4、その他

(1)2023年ヒット商品番付

(2)ロボットの活用が盛んに

(3)ゼンショー、時価総額1兆円超え

(4)「急がない配送」の利用意向87%

 

皆様、新年明けましておめでとうございます。

皆様にとって今年がより良い年になりますことを祈っております。

この「月刊 流通雑感」を執筆し始めたのは、2005年の事でした。学生が新聞を読まないのが普通になり、日々変わって行く消費者・社会のことも小売業の事も講義で話していても反応が薄いのです。それで、せめてこのくらいの事は知っておいて欲しいと思って、流通雑感を「流通論」や「現代の流通」などの受講生やゼミ生のために書き始めました。

毎日、新聞の切り抜きはやっていたのですが、その情報の整理の仕方については迷いもありました。そのため、1か月に一度、切り抜いた情報を整理し、学生にこの程度のことは知っておいて欲しいと思った情報を書き始めました。早くも19年がたちました。そして、大学での講義はこの1月で終わります。そのため、「月刊 流通雑感」も今月でその役割を終えますので、「月刊 流通雑感」は今月の232号をもって、当分の間、休刊とします。今まで、読者になってくださった皆様ありがとうございました。

 

1、社会・消費者動向

(1)大学「再編に関心」25%

 日経新聞が9~10月に実施した520大学の学長へのアンケート調査の結果が発表されました。それによると、25%の大学が再編参加に関心を示しました。他校と協議を始めた大学は14校でした。

 2022年に63万人だった大学入学者数が40年以降は49万人~51万人に減ると予想されています。約2割入学者数が減るのですから、800校まで増えた大学の淘汰は避けられないと言われています。その割には、危機意識は強くないというのが現状のようです。しかし、これからの10~15年間で大学は大きく変化する可能性が高いと思います。 

(2)26歳以下の転職、5年で2倍

 リクルートの調査によると26歳以下の転職数は直近5年間でほぼ倍増しているそうです。2019年~21年に就職した社会人に対して「現在在籍する会社でどれだけ働きたいか」と質問したところ、「すぐ辞めたい」(16.2%)、「2~3年」(28.3%)、「5年」(15.6%)、「10年」(13.7%)、「20年」(5.4%)、「定年まで」(20.8%)という結果が出ました。3年以内に辞めたい人が合計で44.5%になります。若年層の働き方に対する考え方は大きく変化しているようです。

(3)EU、売れ残り服や靴の廃棄禁止へ

 EUの主要機関(欧州議会と閣僚理事会)は域内で事業展開するアパレル事業者に売れ残った服や靴などの衣料品を廃棄するのを禁じる法案で大筋合意したそうです。今後、正式な承認手続きに入り、2年後から施行する予定です。流行品を低価格で大量消費する「ファストファッション」による衣料品の廃棄拡大に歯止めをかけたいようです。

 この法案では、売れ残りの衣料品の廃棄を禁止し、再利用や別商品へのリサイクル、修繕、寄付などを促します。また、衣料品ごとに原料の産地・加工場所、ライフサイクル全体での温暖化ガス排出量、再生原料の利用率などの情報をデータとして管理・開示させるようです。

 ZARAやユニクロにはなどの大手アパレルには2年後から同規制が適用されますが、中小事業者には6年間の移行期間が設けられる予定です。EUの試算では、毎年廃棄される服は1人平均で、12㎏で、全体では1260万トンに上るそうです。このうち、再利用やリサイクルに回すのは22%だそうです。衣料品関連の温暖化ガス排出は約21億トンで世界全体の4%を占めているそうです。

 この動きは世界全体に影響を及ぼしそうです。服のリサイクル、古着の販売、服の修繕ビジネスなど新たな動きが出てくるでしょうし、消費者の価値観やファッションへの認識にも変化が出てくるのではないでしょうか。大きな変化になりそうです。

(4)20歳代交際未経験者、男性46%、女性29%

 リクルートブライダル総研が23年9月に全国の20~49歳の未婚男女1200人を対象にしたネット調査の結果です。

 「恋人がいない」という回答は、全体の70.3%、「交際経験がない」という回答は全体の34.1%で2012年の調査開始以来最高になりました。

 気になるのは「交際経験がない」という20歳代の男性が46.0%もいることです。女性は29.8%でした。

 解説には、「結婚を意識する相手としか付き合わない」という回答が増えているとか、「恋愛は時間とお金の無駄」と考える人が増加しているとしています。

 誰かを好きになって、交際してみないと結婚したいと思うかどうかもわかりませんから、できたら20歳代の男性にも、女性にももっと恋愛に積極的になっていただきたいと思います。交際を断られるとかっこ悪いからという男性も多いようですが、そんなことは気にしないで積極的にいって欲しいですね。

 

2、小売業・卸売業の動向

(1)セブン&アイ、オーストラリアのセブンイレブンの運営会社を買収

 セブン&アイHDは、11月30日に、オーストラリアで「セブンイレブン」を運営する「コンビニエンスグループHD」を買収すると発表しました。買収額は、約1700億円。

 オーストラリアのセブンイレブンは、6月末時点で751店舗あります。オーストラリアではコンビニで酒類を販売できないため、ガソリンスタンド併設型の店舗が多いので、売上全体に占めるたばこやガソリンの売上高比率が高いのが特徴です。

 オーストラリでのセブンイレブンを30年頃には1000店舗以上にする計画です。今後は、商品開発や店舗運営での協業を強める方針です。セブン&アイは、現在、日本や北米、アジアを中心に20の国・地域でコンビニ8万店を持っていますが、直接運営しているのは日本、アメリカのハワイ、中国の北京などで、大半は展開するための「ライセンス」を現地企業に提供する形をとっています。今後は、オーストラリアのように現地の運営会社に出資する事例が増える見込みです。

(2)イオン、いなげやに対するTOB終了

 イオンは、11月30日に、いなげやに対するTOBで出資比率を17.01%から50.79%に高めて連結子会社にしたと発表しました。イオンは、2024年11月までにイオン傘下でマルエツなどをかかえるUSMHといなげやを経営統合する方針です。

(3)サンドラッグ、キリン堂株33.4%取得

 サンドラッグは、キリン堂HDの株式33.4%を取得し、持ち分法適用会社にすると発表しました。サンドラッグはキリン堂が関西地域を中心に展開する約300店舗を取り込みます。サンドラッグは、22年にも四国地盤の大屋を買収しています。

(4)イオン九州とトライアルが、トラック共用

 北部九州で事業を展開する小売・運送計13社でつくる「九州物流研究会」の取り組みの一環として始まった小売同士での共同物流のひとつが、イオン九州とトライアルとのトラック共用です。

 トライアルの物流倉庫からトライアルの店舗に配送したトラックが、イオン九州の配送センターに行き、そこで荷物を積んでイオンの店舗に商品を配送し、その後、トライアルの倉庫にいくというルートを開発しています。このイオン九州の商品を配送する新ルートの走行距離は、従来とくらべて2割近く短い140キロ。荷物を積んでいない空車回送の距離は、従来85キロだったのが新ルートでは37キロと6割近く短くなりました。このようにして物流コストを削減しようとしています。

 イオン九州の柴田社長は「店舗に商品が入るまでは競争せずに協業できる」と発言しています。この研究会を発案したムロオ(全国規模で食品輸送を手掛ける会社で本社は広島県呉市)の山下社長は「運送業も小売業も、1社での物流効率化は限界に近づいている」と発言しています。小売企業同士の共同物流は珍しいと思ったのですが、今後、増えていくのかもしれません。

(5)ウエルシア、在宅調剤対応店を1200店に

 在宅調剤とは、患者の自宅に自宅などに薬剤師が出向くことです。飲み残しているクスリの数を確認したり、生活習慣を把握したりするなど、店舗よりもきめ細かいサービスが可能となります。

 ウエルシアは、昨年10月時点で在宅調剤の店舗数は977店だったのですが、24年3月までに約200店増やして、約1200店にする予定です。現在、ウエルシアで働く薬剤師は8150人いますので、在宅調剤ができるわけです。ウエルシアは、売上高に占める調剤事業の割合を、26年2月期に23年2月期比5%増の25%に高める計画です。これが実現できれば、他のドラッグストアとの差別化にもなります。

(6)キラキラドンキ

 ドン・キホーテの新業態の「キラキラドンキ」(現在3店舗、例えば東京には「キラキラドンキ ダイバーシティ東京プラザ店」があります)が注目されています。

 ターゲットは、10代後半から20代のZ世代と、10代前半のα世代に軸を置いているそうです。彼らの特徴は「超高速型の消費」。それにいかに対応するか?スタッフは10代後半から20代で構成し、仕入れ権限も持っています。そして、「とにかくSNSの影響力が大きく、買い物客の知識量が多い。なので、情報収集に余念がない」と店長は話しています。例えば、他のドンキではトップ10にも入らない砂糖菓子の琥珀糖がやたらと売れたり、綿菓子が大人気だったりで、目立つ場所に集めて陳列しています。1か月でコスメの棚のすべてが入れ替わるケースも珍しくなく、常に最新の韓国や台湾のコスメがお目見えするそうです。

 大丸松坂屋によると「かつてのような季節型や自主編纂売り場は少なくなり、、毎回来るたびに変化が楽しいポップアップ型の仕掛けが欠かせない」といっています。SNSの情報によって需要がどんどん変化する若い人に対応している「キラキラドンキ」はターゲット以外の人にとっては、その品揃えの意味さえわからないかもしれませんが、一度、のぞいてみたい店ですね。

 

3、メーカーのチャネル戦略

(1)  大塚製薬、アメリカの健康食品会社を買収

 大塚製薬傘下で健康サプリメント「ネイチャーメイド」などを手掛けるアメリカのファーマバイトが、アメリカのボナファイドヘルスを約630億円で買収し、100%子会社にしました。ボナファイドヘルスは、女性向けの健康サプリメントのほか、肌や髪などのケア製品を手掛けています。

(2)食肉大手4社、トラック運転手の作業負担軽減策を発表

 ハム・ソーセージ業界では、長年の商慣習として運転手がスーパーで商品を指定された棚に運んだり、店頭で陳列したりといった付帯業務がいまでも発生しているそうです。配送と営業を同時に行うかつての「ルート営業」の名残りだそうです。

 「2024年問題」に対応するためには、トラック運転手の作業負担の軽減を行う必要があり、➀商品の棚入れや値付け作業など運転以外の業務を見直し、配送の生産性を高める、➁定番商品の「納品リードタイムを2日以上」への変更などで配送の生産性を高める、➂メーカーや物流業者が連携した共同配送を進める、といった軽減策を食肉大手4社が発表しました。そして、これから小売業と協議をしていくそうです。

(3)コカ・コーラ、自販機 夜10円安く

 コカ・コーラボトラーズジャパンは、自販機に変動価格制(ダイナミックプライシング)を導入しようとしています。今後、立地で価格を変えたり、需要期に値上げしたりすることも視野に入れているようです。現在、全国に70万台の自販機があるそうです。かつては90万台以上あったので、自販機は減っているようです。

 年内に数千台で変動価格制を導入するそうです。夜から朝にかけて飲料水「い・ろ・は・す」540ml入りペットボトルを130円から120円に引き下げるそうです。その実験をしてから本格的に展開するかどうかを判断するのでしょう。値下げは、消費者は歓迎するかもしれませんが、値上げはどうでしょうか?

(4)日本ケロッグ、オートミールBar発売

 ゼミの学生(3年生)が今年度、オートミールの市場拡大について研究しました。そこでは「オートミールのカップご飯」を提案していました。今、オートミールのメーカーが相次いで、そのような視点から新商品を出しています。

 日本ケロッグは、「オートミールBar」を発売しました。確かに、これならすぐに食べる事が出来ますね。少し感心しました。日清シスコは、「新パン」を出しました。バゲットタイプのパンの食感・形ににせたものです。オートミールがダイエットに有効だとか、簡単に栄養を摂取できるとかで注目されているのですが、なかなか食べてもらえないという問題に突き当たっています。そこで、各社も学生も新商品を提案しているわけです。

4、その他

(1)2023年ヒット商品番付

 日経MJ名物のヒット商品番付が発表されました。

横綱:生成AI(東):大谷翔平&WBC(西)

大関:藤井八冠(東):アレのアレ(阪神38年ぶり日本一)(西)

関脇:YOASOBI「アイドル」(東):ゼルダの伝説 ティアーズ オブ キングダム(西)

小結:チョコザップ(東):日本バスケ旋風(西)

前頭:VIVANT(東):円安リッチ訪日客(西)

 個人的には、春のWBCは久々に興奮しました。野球を見て興奮したのは久々でした。阪神ファンの方々も今年は野球を堪能したでしょう。巨人ファンの私としては、ようやく原が辞めたので阿部監督に期待したいところです。生成AIも衝撃的でしたね。なんか世の中を変えそうです。

(2)ロボットの活用が盛んに

 外食チェーンに行くと配膳ロボットが活躍しています。ロボットが徐々に身近になってきていますが、メーカーも小売業もロボットの活用を一層進めているようです。

 キリンビバレッジは、24年12月より海老名物流センターに自動化システムを導入し、稼働を始めます。この物流センターでは、無人フォークリフト、無人搬送車を使って製品を倉庫から運び、ロボットを使ってパレット上に積み上げます。既に実証施設で効果を検証しています。生産性が42%向上するそうです。

 カインズは、24年春に、商品を乗せる滑車付きの「カゴ車」を運ぶロボットを埼玉県内の5店舗に導入します。従業員が退勤した夜間に稼働し、日中の作業時間を毎月100時間ほど削減できるそうです。具体的には、カゴ車に専用のタグを貼り付けておくと、ロボットが自動で認識します。そして、バックヤードから目的の陳列棚までカゴ車を運びます。このようにして品出しの作業を補助するわけです。

 現在、小売業でもメーカーでも人の作業をロボットに代替させようとする動きが盛んです。それをどのように具体化するかで知恵比べをしているように思えます。

(3)ゼンショー、時価総額1兆円超え

 ゼンショーの時価総額が昨年7月に、外食産業で初めて1兆円を超えました。海外展開及び海外企業の買収が今後のさらなる成長を期待させるからです。

 「すき家」「ココス」「なか卯」「ロッテリア」これらがゼンショーの傘下にあります。昨年3月時点で国内4524店、海外5759店とすでに海外の店舗の方が多いのです。その上、昨年5月にはドイツの持ち帰りずし店「スシ・サークル・ガストロノミー」、昨年9月には北米・英国中心に約3000店の持ち帰りずし店を手掛ける「スノーフォックス・トップコ」を買収しました。

 弁当店を興した小川社長は30年あまりで外食の国内最大手になったわけです。総資産がこの10年で1.8倍、売上高は9割増、純利益は2.6倍になっています。今までは、直営店のみの経営でしたが、「スシ・サークル・ガストロノミー」や「スノーフォックス・トップコ」はFCです。今後は、直営店のみではなくフランチャイズ・チェーンも活用していくのではないでしょうか。そうなるとさらなる急速な成長の可能性もあります。

(4)「急がない配送」の利用意向87%

 MMD研究所が23年9月~10月にかけて、15~69歳の男女5000人にネット調査しました。配送を急がない人向けオプションを利用したいかをたずねたところ、「利用したい」「やや利用したい」と回答した人の割合は87.1%でした。オプションは「ポイント還元」か「一定金額以上の商品購入で送料無料」のようです。

 確かにネット通販でもすぐに欲しい商品だけではないので、そのようなオプションがあれば利用するかもしれませんね。

以上