「月刊 流通雑感」NO.231、2023年 12月号
《目次》
1、 社会・消費者動向
(1) 世界の都市力、東京は3位
(2) オンライン内見だけで賃貸物件を決める人が増加中
2、 小売業・卸売業の動向
(1)滞在型SCをアジアで展開するイオン
(3)イオン、DCM株を取得し、出資比率約7%に
(4)CGCジャパン、創立50周年
(5)人口100人の福島・双葉町にファミマ出店
(6)北陸3県で、ドラッグの売上高が食品スーパーの売上高を抜く
(7)中国発EC、アメリカで急伸
(8)ユニクロ、ライブコマース拡充へ
(9)セルフレジでの万引き
(10)高島屋、「わざわざ行きたい」というビジネスへ
(11)イトーヨーカドー上板橋店撤退
(12)ドンキの「偏愛めし」
3、メーカーのチャネル戦略、
(1)ビール系飲料のPBシェが14.4%に
4、その他
*特になし
12月になりました。今年ももうすぐ終わりです。
どうやら関東地域は暖冬のようですね。
あと3週間講義をすると、しばしの休息です。残りの講義を頑張りたいと思っています。
1、 社会・消費者動向
(1)世界の都市力、東京は3位
森記念財団都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング2023」で東京は8年連続の3位でした。
ランキングは世界の主要都市48都市を経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野・計70の指標で評価したものです。
その結果、1位:ロンドン、2位:ニューヨーク、3位:東京、4位:パリ、5位:シンガポールでした。上海が10位までに入っていないのはどうしてなのだろうかとふと疑問に思いました。
(2)オンライン内見だけで賃貸物件を決める人が増加中
SUUMOのリサーチセンターの調査(2023年6月実施:22年に首都圏の賃貸住宅に入居した人を対象にネット調査:1208人から回答を得た)によると、動画で物件を見学するオンライン内見が定着してきたそうです。ネット調査によるとオンライン内見を利用した人は32.5%で、2年連続で増えています。
30代男性の3分の1は対面での内見なしに賃貸物件を決めていました。今後もオンライン内見だけで物件を決める人が増えそうです。
2、小売業・卸売業の動向
(1)滞在型SCをアジアで展開するイオン
11月1日、「イオンモール武漢江夏」がオープンしました。中国で22か所目のSCです。新店の延べ床面積は約28万8000㎡とアジア最大規模です。専門店は約260店が入居しています。最大の特徴は、約1万2000㎡あるエンターティンメントのフロアです。ゴーカート、アーチェリー、仮想現実(VR)を体験できる大型設備、射撃、その上アルパカや子豚などの動物と触れ合えるテナントもあります。単なる体験型SCではなく、長く滞在できるSCになっています。体験型SCの経験から進歩して、今、イオンはアジアで滞在型SCを展開推していると言えるでしょう。
カンボジアでは、3ヵ所の滞在型SCを展開しています。たとえば「イオンモール センソックシティ」は地上4階建て、延べ床面積約18万㎡、店舗数は約210です。
4階には屋内遊園地があります。バイキング、空中ブランコ、お化け屋敷などがあります。その他に、本格的なコンサートホールがあり、またテレビスタジオもあります。来場者数は、年間1200万人にのぼります。このような滞在型のSCはカンボジアの商業施設の概念を変えたと言われています。3ヵ所のSCはいずれも滞在型SCでカンボジアの方々の支持を集めています。
このようなアジアでの滞在型SCのノウハウは、いずれ日本のSCにも応用されるのではないでしょうか。人気歌手のコンサートを聴くためにイオンのSCに行くという日が日本でも訪れるのでしょうか?
(2)「入れたて紅茶」を店頭で展開、セブンイレブン
セブンイレブンは入れたて紅茶の「セブンティー」の実験を始めています。都内の数店舗で実験中です。24年以降の全国展開を検討しています。3年後をめどに全体の5%に当たる1000店規模まで広げたい計画です。価格はコーヒーと同じです。果実や野菜から作る「スムージー」の提供店舗も順次増やしているそうです。店内提供の飲料の品揃えを増やすことによって来店動機を増やして、来店客の増加を図ろうとしています。
(3)イオン、DCM株を取得し、出資比率約7%に
イオンは、取得していたケーヨー株を売却し、その資金でDCM株を購入することにしました。その結果、すでに保有していたDCM株4.23%に2.7%が加えられ、DCM株は約7%となり、第3位の株主になります。イオンは、ホームセンター業界大手のDCMの第3位の株主です。将来、ホームセンター業界にも参入していくのでしょうか。
(4)CGCジャパン、創立50周年
全国の食品スーパーで構成する共同仕入れ機構のシージーシージャパン(CGC)が10月27日に、創立50年を迎えました。
2023年7月1日時点で加盟企業数208社、総店舗数は4433店舗となり、加盟企業の総売上高が4月に初めて5兆円を超えました。CGCのPB供給高は、非公開なのですが、セブン&アイ(1兆3800億円)、イオン(9025億円)についで第3位であると推定されています。ボランタリー・チェーンでこれだけ成功している例は珍しいと思います。
(5)人口100人の福島・双葉町にファミマ出店
人口わずか100人の福島県双葉町に8月3日ファミリーマートが出店しました。双葉町と渡辺店長、そしてファミリーマートが協力して実現したようです。町から打診を受けた渡辺店長は、2月、双葉町の北隣の浪江町で国道6号沿いのファミマの店舗の経営を県外業者から引き継ぎました。その上で、双葉町のファミマは浪江町のファミマのサテライト店と位置づけ、2店合算での採算確保を狙っています。
それにしても人口100人の町にコンビニを開業した渡辺店長は福島県川内村の出身のようですが、郷土愛が凄いですね。こんな利益度外視の出店もあるんだな~と感心しています。双葉町のファミマが早く採算が合うようになることを祈っています。
(6)北陸3県で、ドラッグの売上高が食品スーパーの売上高を抜く
北陸3県の1~8月の累計の全店売上高で、食品スーパーの売上高よりもドラッグストアの売上高が多いという現象が起きました。非常に珍しい事です。それだけ北陸地盤のクスリのアオキHDや福井県を地盤とするゲンキードラッグストアーズが食品の取り扱いに力をいれているという事でありますが、食品スーパーよりも売上高が多くなった理由はどこにあるのでしょうか?
➀光熱費や人件費の高騰のため、資本力の小さい地場スーパーの運営が厳しくなってきている事。・・・そのため、2014年から生鮮食品の販売を始めたクスリのアオキHDは21年5月からこれまでに8社の食品スーパーを合併・買収しています。このように地場の中小食品スーパーをドラッグストアが買収していることもドラッグとスーパーの逆転劇の要因のひとつです。
➁新型コロナの影響で、「一度で食品から医薬品まで購入したい」という消費行動が広がった事。・・・その一方で、ドラッグの新店が次々と誕生し、競争が激化し、ドラグストアの小商圏化が進んでいますので、この状況を打破する道が「フード&ドラッグ」だという認識が広がったようです。
➂ドラッグストアが生鮮・惣菜食品を取り扱うようになった事。・・・生鮮を取り扱うためには冷蔵ケースや冷凍ケースが必要で光熱費や設備の導入費負担が増します。その上、鮮度管理が必要となり人手がかかります。つまり人件費が高まります。このように生鮮を取り扱うという事は投資も必要でコストアップも覚悟する必要があります。それにもかかわらず生鮮を扱うドラッグが増えています。これは日々の買い物でドラッグを選んでもらえれば、粗利率の高い医薬品も買ってもらえるという考えがあるからです。実際、クスリのアオキHDの23年5月期の販管費比率は24%になっており、17年5月期と比べると2%アップしています。ドラッグストアが生鮮まで取り扱うとこのように販管費増という問題も抱えるようになります。
このようにドラッグストアが生鮮・惣菜まで品揃えし、食品スーパーと同じような品揃えをし、それにプラスして医薬品・化粧品を充実させると方向性をとる企業が増えてきているようです。日本チェーンドラッグストア協会の調査によると、2022年度のドラッグストアにおける食品販売金額は前年比2%増の2兆4064億円で、総売上高に占める食品の割合は28%になっています。化粧品の割合は18%ですから、化粧品よりも構成比でいえば10%も高くなっています。
(7)中国発EC、アメリカで急伸
Temu(ティームー)、SHEIN(シーイン)などの中国発のECの利用がアメリカで急増しています。10月の両アプリの利用者はのべ約1億1000万人と1年で4倍に増え、アメリカのアマゾンの9割に迫っています。世界に占めるアメリカの利用者の割合はティームーが41%、シーインが18%とアマゾンの15%を上回っています。ティームーは日用雑貨、シーインは衣料品を中心に幅広い商品を取り扱っています。
アメリカでのアマゾンの10月の利用者は1年前から8%減、2年前から15%減となっています。アプリ総利用時間は1年前よりも2割短くなっています。一方で中国系2社のアプリ利用時間は1年前の12倍となっていて、アマゾンから顧客を奪っています。
このような状況にアメリカ政府はいらだっているようです。アメリカの連邦議会の超党派委員会は、6月ウィグル自治区での強制労働に関わる可能性があるとしてティームーとシーインを名指しで批判する報告書をまとめています。
しかし、越境ECを制限する方法はなく、当分の間、中国系ECのアメリカでの成長は続くものと予想されます。
(8)ユニクロ、ライブコマース拡充へ
ユニクロがライブコマースを始めたのが2020年12月です。毎週、月曜日と金曜日の午後8時から1時間の番組を流しています。このほど全国47都道府県の49店舗を拠点としたライブ配信を始めました。各店舗の販売員が地域の特性に合わせた季節の商品や着こなしなどを紹介しています。より地域密着性を高めようとしています。8月末までの1年間の累計視聴者数が1000万人を超えたそうですので、より充実させようとしているのでしょう。海外での配信回数も増やす方針です。10月にはオーストラリアで配信を始め、11月時点で17か国・地域で、言語でライブ配信しています。顧客とのコミュニケーションが増えることが見込まれるので、ライブ配信が日本でも増えていく傾向にあるのではないでしょうか。
(9)セルフレジでの万引き
セルフレジでの万引きが日本でも話題になってきています。「スキャンしたふり(未スキャン)」での万引きが多いようです。ただし、客がバーコードをスキャンする動作に不慣れなために悪意なく精算ミスをしてしまうこともあり、その区別が難しいようです。
トライアルカンパニー(福岡市)では、今年5月に判明した万引き被害の内8割超がセルフレジで発生したそうです。また、21年3~5月に行った調査によると、セルフレジを導入した小売業100社の内12社は万引きによる被害が増えたと回答しています。
日本ではまだ、組織的な万引き行為は出ていないようですが、組織的犯行がでるとアメリカのようにそのような地域から店舗を撤退させるなどという事も起こるかもしれません。
日本流のスキャンは店の人が行って、清算だけ客がするというのは理にかなっているのかもしれません。人材難のため、セルフレジを普及させたいところなのですが、万引きという行為がそれを妨げています。私見ですが、物価高の中、低所得者が増加しているので、万引きは増えるのではないでしょうか。
(10)高島屋、「わざわざ行きたい」というビジネスへ
高島屋の宇都宮優子常務は、「これまでの百貨店はアパレルを中心に、過去のデータ本位の売場作りが多かった。しかし、コロナで存在理由が問われた」と反省し、「ワクワクと共感を高め『わざわざ行きたい』というビジネスへの転換が急務だ」と述べています。
新宿高島屋は5月、週末の日中に「DDTプロレスリング」のイベントを実施しました。百貨店をリングにした初のプロレスです。10月には一転して夜の世界に。東京銀座に誕生したシンガポール初のナイトクラブ「zouk Tokyo」でSDGsをテーマにしたファッションショーやトークイベントを開きました。このように高島屋は「わざわざ行きたい」百貨店に生まれ変わろうと努力しているようです。
(11)イトーヨーカドー上板橋店撤退
イトーヨーカドー上板橋店(4階建て総合スーパー)が撤退することになりました。不動産会社との裁判(立ち退きを巡る訴訟)で、不動産会社が一審・二審とも勝訴したため、イトーヨーカドーは撤退する事を決めました。
撤退した後には、イオンリテールが入るようです。イトーヨーカドーの苦境は続きそうですね。
(12)ドンキの「偏愛めし」
ドン・キホーテの新しいPBとして「偏愛めし」というおにぎりが登場しました。なんと主役は「タレ」です。たとえば「焼き肉のタレ おにぎり」です。「万人受けは狙わない」というドンキですが、おにぎりの具材がタレとは驚きました。
3、メーカーのチャネル戦略
(1)ビール系飲料のPBシェが14.4%に
インテージの調査によると、ビール、発砲酒、第三のビールを合わせたビール系飲料で小売各社のPBが2023年1~10月の合計で、14.4%のシェアをとっている事がわかりました。割安なPBに需要が流れていることがわかります。この原因の一つは、キリンがイオンやローソンの発砲酒のPBを生産し、ファミリーマートの第三のビールも生産していることが指摘されます。キリンが生産しているのですから、その発砲酒や第三のビールの品質は良いはずです。そのため、余計にPBが売れるのです。メーカー自身の責任もあるということです。
4、その他
*特になし。
以上