ユビキタス社会とは「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がパソコン、ケータイ、スマートフォン等でネットワークにつなげることにより、様々なサービスが提供され、人々の生活をより豊かにする社会ことです。「いつでも、どこでも」とはパソコンによってネットワークにつながるだけでなく、携帯情報端末をはじめ屋外や電車・自動車等、あらゆる時間・場所でネットワークにつながる事であり、「何でも、誰でも」とはパソコン同士だけでなく家電等のあらゆる物を含めて、物と物、人と物、人と人がつながることです。このユビキタスとは、コンピュータが実世界中にあまねく存在するというユビキタスコンピューティングの概念で、アメリカ合衆国のマーク・ワイザーによって1991年に提唱されました。この当時は、タブ、パッド、ボードという大きさの異なるデバイスを組み合わせて用いるというアイディアだったわけです。ケータイやPDAのようなワイアレスネットワークを利用して、「いつでも、どこでも、何でも」につなげる社会を想定していた。たとえば、日本の坂村健(東京大学)が1980年代にTRONを開発し、家電に情報端末を備えることにより、ケータイ等で操作できる社会のことなのです。

 1990年後半からワールド・ワイド・ウェブが登場し、このユビキタスコンピューティングの概念とあらゆるところで利用可能なネットワークとがミックスして、ユビキタスネットワークという言語ができて、1999年に野村総合研究所が「ユビキタスネットワーク社会」を提唱した。現在、インフラ面については、光、DSL、ケーブルテレビ等の有線網、3G、WiMAX、LTE、無線LAN、フェムトセル等無線網等、ネットワークの多様化、シームレス化が進み、全国どこでもブロードバンドサービスを利用可能な環境が整備されてきている。

  デバイスについては、パソコン、携帯電話、テレビ等家電、ゲーム機器、タブレット型端末、デジタルサイネージ等ネットワーク接続端末の多様化が進み1、スマートフォンの急速な普及2に象徴されるように、多様化・高機能化が進んでいる。

 このような環境の中で、ICTサービスも大きく進化し、人々はその恩恵を特段意識せず豊かな生活を享受できるようになっている。たとえば、個人の購買行動において、購買行動の前にICTを用いて検索、比較、検討をする等ICTを用いて得た情報を意思決定に活用し、購買行動の後に、ICTを用いて自らの評価を他人と共有する3等の動きが浸透してきている。また、あらかじめ登録した年齢、性別、趣味・関心、居住地、通勤経路といった情報、GPS等による現在の位置情報、行動履歴、行動パターン等に基づき、各種の最新情報が提供され、その時、その場所、その人に向けたおすすめが表示される等のサービスが提供され、より進化した位置情報技術、インターフェース技術、センサー技術等により、社会の幅広い分野でICTサービスの介在を特段意識せずその恩恵を享受できる環境が整備されつつあります。また、SNSをはじめとするソーシャルメディアの利用により、人々は、お互いに気軽に知人・友人の日常を知り、経験や感情を共有することができ、企業活動においても、ICTは、製造・流通過程、金融、交通、エネルギー等の社会インフラ、医療、教育、行政等の公的サービスに深く組み込まれ、社会・経済活動の効率性の向上や新たな価値の創造に大きく貢献している。

 このように、ICT は社会に深く浸透し、国民生活や企業活動を支える社会的基盤となっているところであり、「ユビキタスネットワーク社会」は、今やビジョンではなく現実のものになりつつあるといえましょう。