私は子供の頃、ルアー釣りの冊子でミッチェル408というリールを知り、その少し後にカーディナル33(3)を知り、ルアー釣りのスピニングリールといえばこの2種が代表的だと思っていた。

 

高校生になった頃、別の記事にも書いたトップウォーターバッシングの冊子のタックルレビューにおしゃれなデザインのスピニングリールが紹介されていた。

 

イタリアのコプテスというメーカーのペリカン75Aというペリカンのレリーフが刻まれたサイドカバーが印象的なモデルと、同じ形でワンサイズ小さなマスコットというリールだ。

 

それらのリールは同時期のスミスのカタログにも載っていて、バス釣り以外のトラウトとかやる人向けなんだと思ってたが、まさかのトップウォーターバス釣りの冊子で紹介されたのをきっかけに興味を持つようになった。

 

どちらもインスプールで、左ハンドル固定というミッチェル408に似た流線型ボデイであるが、ミッチェルよりも無駄のない(悪く言えば単純な)シェイプで、個人的にカーディナルよりも好み(デザインは)だ。

 

ちなみにスミス販売の同じコプテスにアルチェードミクロンというリールもあったが、こちらは妙に歪(いびつ)な形状であまり惹かれなかった。

 

私はルアー釣りを始めた時(小6)は、ミッチェル408に憧れてスピニングタックルからスタートしたわけだが、中学~高校になった頃にはバス釣り=ベイトリール至高という風潮だったので、フルーガーアンバサダーを買う事しか考えてなかったので、スピニングリールの事はほぼ頭にはなかった。

 

それからしばらくの時が経過して、社会人1年生の頃に、通勤経路の途中にあった老舗の釣具店のウインドウの中にあった オービス75A というリール に目が留まる。

 

サイドカバーにはORVIS-75Aの文字と共にブラントラウトっぽい鱒の絵のレリーフが刻まれていて、かなり洒落ている。

 

ちなみに、オービスというメーカーは子供の頃から知っていて(当時はオルビスとも言われてた)、あのABUやFenwickよりも高級なブランドであるイメージだった。

(オメガよりもロレックスみたいな感じ)

 

その高貴なブランドのスピニングリールが、その頃のツインパワーと同じくらいの値段だったので、つい衝動買いしてしまった。

 

買ってからいろいろ調べたら、オービス社独自の製造では無く、あのコプテスのOEM生産だったという事がわかった。

(オービスといえば、フライリールのハーディOEMのCFOが有名だがそれの話もいずれするかも、しないかも →こちらに書いた。)

 

なるほど、そういえば本やカタログでみたペリカン75Aにそっくりな(というか同じ)シェイプだ。

 

ペリカン75Aはボディ色が濃いグリーンでローターが白色のツートンカラー(カーディナル33が真似た?)なのだが、オービス75Aはマスコットと同じマットなダークグレー(チャコール?)。

 

そして何といっても、意味不明なペリカンの絵やmascotteという字だけのレリーフではなく、鱒のレリーフが釣具であるという主張をしてるし、そもそもデザインが美しい。


(その時に買ったオービス75A)

 

購入時期から考えると、その時期ティムコのカタログには載っておらず、おそらく売れ残りだったと思われる。

 

写真を見てハンドルに違和感を感じた方は鋭い。

 

実は、このリールを手に入れた頃にブローニングの332906というグラスのスピニングロッド(これも売れ残り)を購入していて、嬉しくてそれと合わせて初めてバス釣りに使った時に、めでたく小バスが1匹釣れた後に、喜んで調子に乗ってたら転んでリールを地面にぶつけてしまい、その衝撃でハンドルが折れてしまったのである。 

同行してた友人は爆笑してたが、個人的にはかなりショックだった。

 

この個体に装着されていたハンドルはよくあるメッキではなく、ボディと同色の同質っぽいマットなハンドルであった。もしかしたらメッキの物より強度が弱い(脆い)とかあるのだろうか?

(折れたハンドルは捨てずにどこかに保管してたはずだが行方不明)

 

なんにしろリールのフット部分から折れなかったのが救いで、ハンドルだけ何とかできないものかと思い、しかし、ティムコの扱いはすでに廃盤になっていてパーツ注文不可能であり、試しにカーディナル3のハンドルをはめてみると、なんとネジ径とピッチが同じだった。

ただ、そのまま装着するとネジが入り過ぎてベールがハンドルに接触するので、適当なサイズの六角ナットをスペーサー代わりにかますと良い感じに装着出来た。

それを知ると、あとはカーディナルのハンドルを入手出来れば良い話であり、運良くちょうどオリムピックがカーディナル33&44を復刻した頃でもあったのでハンドル単品で注文購入して私のオービス75は蘇った。

 

デザイン的に少し違和感あるものの、操作感はノーマルよりも良くなったと思う。

素材的にも衝撃で曲がることはあっても折れることは少ないであろう。

 

そういえば近年、カーディナルのカスタムが流行ってていろんなメーカーがカスタムハンドルを発売してるみたいなので好みの物をチョイス出来る事になる。

 

と言っても私はこれで満足してるので、もしオービス50A、75A、あるいはペリカン、マスコットをお持ちの方で、うっかりハンドルを折ってしまったり(それは私だけか)、またカスタムを考えてる方おられたら参考にしてもらえればと思う。

実は、この記事でこれが一番書きたかった。

そもそもブログを書きだしたきっかけというのは、持ってる道具自慢や今の釣具や業界を皮肉ったような内容ではなく(それもあるが)、知られてなさそうな発見や謎があれば公開して仮に1000人に1人の人にでも共感して頂ければ本望だと思っている。

 

さて、話をリールに戻して、このオービス75Aを入手したの皮切りに、ワンサイズ小さな50Aや、それと同サイズのコプテス純粋のマスコットを入手する事になる。

(ペリカンはペリカンのレリーフ色合いが好みではないので入手してない)

 

(ORVIS - 50A)

 

(MASCOTTE マスコット)

 

50A(マスコット)と75Aのサイズの違いは、ローターとスプールのみで本体およびハンドルは同じサイズである。

外観の違いとしてローターの形状が75Aの方は下部が角ばってて50A(マスコット)は丸い。

個人的には丸い方が好みだ。

 

このブログを書いてる時に発覚したのが、オービス50Aとマスコットはボディ右側プレートのレリーフだけ違うと思ってて、スプールは共通だと思いきや、オービスのスプールにはちゃんとORVIS 50Aという刻印があり、マスコットには何もない。

(ORVIS-50Aのスプール)

 

(マスコットのスプール)

 

OEMとはいえこういう部分の主張がさすがオービスだなと思った。

ちなみに私の75Aのスプールには刻印は無い。

あと、ドラグのクリックの構造が50A(マスコット)と75Aは違うようで、どういうわけか50A(マスコット)の方は時計回り(ラインが出ていく方向)しか動かない構造になっていて75Aは普通のリール同様にどっちも回るが、ラインが出ていく方向尾の方がクリックの力が弱くてスムーズな設計にはなっている。

(スプール裏側 左マスコット   右ORVIS-75A)

マスコット(50A)の方は片側にしか動かないクリッカーで75Aは樹脂製のピンになっている。

私の75Aが後年のコストダウンした物なのか、そもそもそういう仕様なのかは不明。

 

(左マスコット   右ORVIS-75A)

 

50A(マスコット)と75Aはスプール径も違えばスプール長も違う。

ただ、これも謎であるが、両機の内部のパーツと動作を確認した感じではストローク幅はおそらく同じである。
それを考えたら、75Aの方がプリン型に巻かれる傾向になると思うが、意外とそうならないのも謎。

 

あと、ベールの形状が時代で違うようで、古いものは2本のワイヤーを溶接(ロウ付け?)したようなものや、その次の年代になるのか不明だがワイヤー1本になってる個体も見た事がある。

私が持ってるモデルはすべて後期の円錐型(ロケットベール)である。

(ORVISの前期のモデルにはサイドカバー前部にシリアルNoがある?)

ちなみにカーディナルでは前期モデルがロケットベールとなっている。

 

(コプテスリール3種盛り)

 

参考にカーディナル33とマスコットを並べてみた。

見た目はほぼ同サイズだが、マスコット(ORVIS-50A)が185gほどで、カーディナルが220gくらいあるのでマスコットはなかなか軽量なリール。(ORVIS-70Aは210gくらい)

 

そういえば、このコプテスというリールメーカーは元はZangi(ザンギ)という会社が作ってた製法を引き継いだらしく、Zangi時代のペリカンやマスコットもほぼ同じ形で短期間製造販売され、それが希少価値があるとの事らしい。

それがコプテスの時代のよりも性能が良いのならちょっと欲しいが、単に希少というだけなら私は別に興味はない。

昭和64年刻印の500円硬貨や電電公社時代のテレカと同じで、人によってはとんでもない価値があるらしいが。

 

そんな事よりも、肝心なこれらのイタリアンリール、実際に釣りに使った感想はというと、、、、、

 

釣りのリールとして使えない事は無い。

 

こんな感じ。

 

75Aを初めて使った時は嬉しくて悪い部分を感じなかった(感じないようにしてた?)が、カーディナルと比較したら明らかな性能差を感じる。

 

その性能差を一番感じるのが、逆転ストッパーの遊びの大きさ。

ストッパーの機構を確認したら、カーディナルではローターのシャフトに歯があるのに対して、こちらはメインギアに歯がある。

その歯数は9枚でギア比(5.1:1)から計算すると、ローター部のストッパーの段階は204度単位という事になるので、ローター1回転(360度)でストッパーが効く箇所が2箇所もないという事になる。

とはいえ、この構造だからこそ心地良いタイミングのクリック音が奏でられるわけでもあり、

この感覚はフライリールのフルーガーメダリスト(1494以上)の音のリズムに似ている。

 

あと、ローターのバランサーのウェイトバランスが悪く回転時の振動が大きい。

(一応、バランサーっぽい粘土(?)のような物質が埋め込まれてはいるが・・・)

 

それからラインローラーがローラーっぽい構造になってるがローラーとしての機能をしていない。

ちなみに、この記事を書きながらラインローラーを確認したら、ORVIS-50Aは少し強めのテンションかけたら回るが、75Aとマスコットは完全にロックされていた。

どちらもナットを緩めたら回るようになるのでローラー内部の固着とかでは無さそうなのでパーツを分解して確認してみると、、、、、、、、

 

まずは75Aの場合。

(75Aのラインローラー)

 

(75Aのベールのローラーが装着される部分)

 

本来ならAの直径よりもBの隙間がわずかに大きい設計のはずなのだが、この個体はAよりもBが狭い。なのでナットを締めるとロックされる・・・。

これは完全に設計ミスだと思う。

ちなみに手持ちの50AのBは明らかに75AのBよりも広いのが目視でも確認出来る。

 

続いてマスコットの場合。

上の75Aの部分は大丈夫だが、反対側のパーツに問題が発覚した。

(マスコットのローター固定側のラインローラーが装着される部分)

 

穴の位置がずれていて、ラインローラーがせまい側に接触してしまう。

 

これは設計ミスではなく、製造ミスだと思う。

 

上記の75A、マスコット、いずれの場合も、ローラー内のシャフトをどんなに研磨しようが、ベアリングを入れようがこれでは回らないわけである。

 

改善策としては何プランが思いついてるが、今は面倒なのでやらないと思う。

 

あと(まだあるんかい)、機能とは関係無い部分として、リールフットが根元まで薄っぺらく(上のカーディナルと並んでる写真でわかると思う)、リングシートのロッドではしっかり固定出来ない場合がある。

私はビニールテープを巻いて厚みを持たせて装着していた。(おかげて傷防止にもなったが)

 

ドラグに関してはドラグを使うような釣りでは使った事ないので不明。

(カーディナルもドラグに関しては酷評のようだが)

 

などなど。

 

結局、そんな理由で実際の釣りではカーディナルばかり使ってたが、コンパクト性(重さ)とデザインに関してはかなり良いと思うので惜しい限りである。

 

これらのリールを今後「釣り」で使う事があるのかは不明だが、それほど遠くない老後に悠悠自適な生活を得ることが出来れば、「釣りに使える道具」として抜擢される可能性は高い。

そして、その頃の車は古いフィアットなんかに乗ってたりしてね。

 

ちなみに今は釣りが趣味だと言いながら、年に5~6回しか釣りに行けないような生活をしてるので、1釣行を大事にするためにも、「ストレス無く使える道具」(最新という意味では無い)しか使わないようにしている。

 

-追記-

 

上で、

今は1釣行を大事にするためにも、

ストレス無く使える道具しか使わないようにしている。

 

なんて事を書いておいて、実はその数日後にニジマスの管理釣り場で使ってみた。

 

そもそも管釣りの釣行を釣行数に含めるかどうかについては、生きてる魚を相手にしてる以上、私にとっては立派な釣行(魚釣り)である。

 

今回管釣りに行った理由というのが自作のバルサ製のハイフロートのディープミノー(いわゆるマジックジャーク用でこれについても追々記事書くかも)のバランステストと実釣検証がメインのだったのだが、幸いにもすぐに結果が出て、このまま機械的に数釣りしてもつまらないので、最初から使うもりで予備機として忍ばしてたORVIS-50Aと同年代のブローニングのグラスロッドを合わせて使ってみた。

75Aは前述したようにバス釣りで使った事はあったが、50Aを使うのはは実は今回が初めてだったりする。

ラインは間に合わせのナイロン4ポンド。ルアーは無難に3gくらいのスプーン。

 

巻き取りテンションが軽いせいか何回かトラブったが、ラインを切らないとだめなような致命的なトラブルは無かった。ヒット時のドラグも意外と良い動きをした。

こう書くと意外と使えるリールだったのかと思うが、今回発覚した事が1つああった。

 

スピニングリールでキャストする前に人差し指でラインつかんでベールを返すと思うが、その動作を無意識に行った時のベールの回転位置って、だいたいラインローラー部が大体ロッドの真下か少し右にあると思うのだが、その位置だとこのリールは、ベールが自動で戻る突起がある位置になっててベースが返らない(ロックがかからない)事が多々あり、これはストレスっだった。上に書いているローターのブレや逆転ストッパーの段階の少なさよりも気になってしまった。

まあ、慣れたらそれを意識してラインをつまむ時の角度を少し手前にするとかすれば済む事でもあるが、帰宅してからカーディナルを確認したらそんな事はなかったので、カーディナルとの点差がまた1つひろがった。

今回使用したORVIS-50A(今回はフット裏にコルクシート挟んでる) + Browning 33290J(4.5ft 2ピースのジャパン仕様。こちらは20年以上前に入手したものでこのロッドも今回初入魂した)