Startin' over… -99ページ目
※いつもご覧頂きまして誠にありがとうございます。この先には若干の性的描写が含まれますので、18歳未満の方及び不快に思われる方は、読み飛ばして頂きますようお願い申し上げます。












奴の下半身にしがみつく。
私の頭を撫でる。
見上げたら、見たこともないような笑顔。
奴が私の顔の高さに合わしてしゃがんでくる、両肩のワンピースのストラップがゆっくりとずり下ろされる。


「キスする前に、見られちゃうの?」

顔にかかった傷んだ髪を奴が撫で、ゆっくりと顔を近づけてきた。


唇から全身へと流れゆく弱電流。
わたしを解放していく。
唇を押し付けたまま、徐々に身を奴の方へ預けていく。
腰に触れていた奴の手が、上の方に伸びていく。

ブラのホックを外すことはなく、肩紐がずらされ、乳首をあらわにされた。

塞がれてた唇が離れ、奴の頭が下の方へ下りていく。デコルテに奴の髪がちくちくあたる。
愛おしかった。
しゃがんだままの状態で、ベランダの壁に背中を押し付けられた。

反り返る隙間もなく、奴のやさしい唇になされるがままだった。
〈慎吾、ごめんね。私もう無理だよ…〉

ワンピースが捲りあげられ、内股にも手が伸びる。
そういえば、奴はたくさん自分のことを話してくれた。話を聞くのは好きだし、楽しい。
他人のすべてを理解することは不可能だし、私が知っているのは奴という人間の数少ない断片。
しかし日に日に、いろんなその断片が降り積もっている。

今私にできることはなんだろう。
奴は望んでいるような気がした。
その前に私がすべきことは?


ベランダの手摺りに肘をかけ、奴は煙を宙に吐く。
少しだけ、しかめっ面。

〈もし、さらけだしたら奴はどう思うだろう〉


「あのね、…」

この前バーで話さなかったこと。
地元には慎吾という男がいる。私より7つ年上。4年間一緒にいた。最初は私が彼に甘えるような形ではあったが、しだいに彼も精神的な拠り所としても私を求めてくれるようになったこと。
慎吾にはずっと付き合っている彼女がいるが、そんなの関係無しに私は好きになったこと。彼氏彼女の関係を全く求めなかったこと。だけど、いつも寂しくてたまらなかったこと。

一通り話した。


「どう思う?」

奴の語り口は平坦になってきた。
会話が頭に入ってこない。言葉なんて意味を為さない。
でも、奴の中に見える。
奴が求めているもの。

ぼんやりした思考の中で、奴が、自分のしたことに自信を持て、というようなことを言ってたのはわかった。

奴は相変わらず、ベランダの手摺りに肘をついている。



もう距離なんか、いらない。
それからお互いどうしていいのかわからず、またたった缶ビール2本じゃ満足できるわけもなく、コンビニを3件はしごした。

割り勘主義の私と、男が多く払う主義の奴、それに加えて奴は年下しかし先輩。レジに並ぶたびにおごられるのを躊躇しあった。
結局私が買わせてもらえたのは、ブラックNIKKAのポケットサイズとアイスが二つ。


そのせいだけではないが、会話が少なくなってきた。この前までは、電波並の速さとリズムで、会話のキャッチボールをしていたのに、こんなにも話題を探すことって、難しかったっけ?
つまらない話題と思いながら、そのネタをふると、奴が困ってると思い、私から話をやめてしまう。そしてまた次の話題を探す。でも同じことになって、の繰り返し。
それが段々と嫌になっていき、完璧な沈黙に近づいた。


とりあえず家についた。
買ってきたビールをすぐにつぐ。

考えてみたら、この前飲み誘ってくれた日は、慎吾の誕生日の前日だったな。