教室を破壊するのは勝手だが、同時に賃金までむしりとろうとするのはいかがなものか。
暇人、仕事ができない故の忙しいアピールは、ただでさえ周りの人間を疲弊させるが、
それを顧客側に誇示するとは、接客業の常識からあまりに乖離していて理解に苦しむ。
あいつも、藤原先生も、鼻で笑う始末。
自分のためだけに働く人間を軽蔑する、ごく一般的な感覚を持っているのだろう。
またできない奴はできないなりに、仕事のできる、正確には”やる”人間に嫉妬の情を向け続けるばかり。
威圧的とまでは言わないにしろ、それに負けて泣いてしまう女の子が出てもおかしくない。
藤原先生を守る。
それが私のすべき仕事だと認識した。
「お疲れ様。今日的外れなこと言われなかった?」
「え、あの子にですか。」
「いや。社員スタッフもろもろから。」
「だい、じょうぶでしたけど。」
ただ知っている。
彼女の指導力の高さと大学受験生を担当しているという事実。
中1の数学さえままならない人間からしたら、どうやら羨ましいらしい。
本来は社員の怠惰、未確認故に起こったミス。
また規定通りに行動した講師に責任をなすりつける。
裏でやるならまだしも、生徒さんに、お客様に聞こえるように”藤原”の名前を出し、いない所で糾弾する。そんなにも彼女を下げてでしか自己の価値を保てないのか?
接客業として失格だ。
彼女の教え子はどう思う?
そんな考えるまでもないことさえ考えられない人間は、即刻賃金を頂いている自己を否定し、消えるべきである。
そもそも、ミスの原因が社員にあることさえ認識できていない。
思考力と洞察力に疑いを持ってしまう。
使えない上司に恵まれた故に使えないスタッフが稼働している。
使えない人間は、使えない部下しか使えない。
薬学部に合格した生徒さんがいらっしゃった。
「こんにちは。」
「おおー、こんにちは。元気だった。」
「はい。私、今日最後なんです。」
「あら、寂しいわ。」
「先生本当にお世話になりました。」
「いやいや、夏期講習の短い期間だったけど。」
「先生と一番英語勉強したんで。」
と言っても、夏の4コマのみ。
「添削とか本当に助かりました。」
「一人じゃなかなか難しいよね。あれ、仮定法でif使わない場合のやつとかわかってもらえたとき、
すごい嬉しかったよ。」
「ほんと先生他の子のこととかいっつも気にしてて、あの人と違って。」
目線の先には言うまでもなく、一番顧客から料金を搾取している人間。
これは自慢に響くかもしれないが、事実である。
生徒さんから頂いた言葉だ。
お金を頂き生活を保証して頂いている故にやった、私ができることによるものらしい。
生徒さんとは、お客様とは、教室の実情を映す鏡である。
それに対し、自分の虚栄心を満たすためにお客様を利用するが故盲目になる。
残念ながら、社会には、会社には、そんな類いの恥ずかしい人間がはびこっているらしい。