Run away from today. | Startin' over…
雨が降っている。
目を覚ましても辺りが暗いため、何時なのかよくわからない。
久しぶりの2連休。
家にこもったまま。
専ら食料品の買い物には出かけたが、取り立てて積極的に休暇を楽しむことはしていないだろう。

仕事のことは考えないように。

一昨日の夜、たまっていた宿題の丸付けを終えて心に決めたことだ。

先週一週間、最低限しかあいつをかまうことができなかった。
トータルして30分も話せただろうか?
to doリストのチェックや宿題の進行状況の確認のみで、
それは事務的な会話のみであった。
私には他にもたくさん生徒さんがいる、後輩講師と飲みに行くこともできる、
それに加え学生という守られた身分かつ自由な環境がある。
一方のあいつはどうであろう。
毎日塾に来ては目の前にあるのが勉強のみで、特に友達と会えるわけでもない。
あいつに話しかけるのは担当講師くらいしかいなく、伊藤先生も藤原先生も出勤するのは週一回。
だからこそ、雑談でもいいからあいつの精神安定をはかることが私に課せられた役目なのだろう。
だけど、他の生徒さんからの質問対応・全員分の宿題用意・添削、そんなことに空き時間はすべて取られ、どんなに早く出勤しても片付かない。

懐かしい。
まだあいつが担当になる前だったこと。

「先生、質問いいですか?」
「はい、もちろん!どれさ。」

一浪目の冬であった。
志望校過去問の読解問題。

「これ正解bなんですけど、なんでdじゃだめなんですか?」

うん、読むべき文を間違えている。
また構文がわかってない故訳がぐちゃぐちゃ。
今と大して変わっていない。

でも唯一違ったのは、合格へ向けて突き進むバイタリティがあったこと。
「受かるぞ。」
キラキラした目からはそんな意思が感じられた。

その後も2~3回、藤原先生が不在の時に質問対応をすることがあった。

人懐っこい子、と認識していた。
その当時それ以上関わることはしなかったが、他の講師や前の教室長と楽しそうに話していたのは覚えている。

今の室長になって、あいつへのフォローは皆無だ。
スタンダードを知らない新しい生徒のみに、的外れなアドバイスと自習フォローをする。
講師の指導方針とずれているどころか、真逆であることも常である。
混乱するのには、一番の迷惑を被るのは生徒だ。
お客様へのサービスどころかクレームの種を提供している。

その点あいつは鋭い目を持っている。
はっきり意見したこともある。
それを恐れてか、室長があいつに関わることはない。
業務放棄と捉えて当然のものと考えている。
むしろ関わってくれない方がこちらも安全、そう考えている。
私だけでなく、あいつもそうであろう。

しかし、時間が食われている。

生活態度、自習状況について管理をした。
家庭連絡もした。
気にかけて対策したつもりにだったが、あいつからしたら束縛、もしくは子供扱いされたと感じていたのだろう。

わかってる。
ケアする方向を間違えていたと。
欲しいものを与えていなかったと。
あいつにとっては

塾へ行ったって誰とも関われれるわけではない。
そりゃ勉強の時間も短くなるは、質も落ちるは当然だ。

明確な答えは出てこないけど、
先週よりは幾分ましになりそうな予感。